9.カメリア、再婚する
私は、パタンとチェリアの日記を閉じました。
日記を読んで、彼女が、どれだけ私とお父様を敵視していたかが解りました。
彼女の中では、お父様がこの国を牛耳っている事になっていたようです。
私が上級妃では無く中級妃である訳を、何だと思っていたのでしょう?
他に、最初の毒殺未遂事件は、チェリアが私を陥れる為に起こした事。
そして、花見の宴の余興の件も、チェリアが私に恥をかかせようと起こした事が判りました。
やる事なす事、裏目に出ていますわね。
花見の宴では自分が恥をかいて・毒殺未遂事件の結果、我先にと命を狙われ・我が子の養育者に王太后様を望んで、子を殺されてしまった。
挙句、私を殺そうとして、寵妃の座を失った。
実は、チェリアは、異父妹ではなく同父妹の可能性もあるのです。
でも、何方なのか確かめる術はありません。
まあ、彼女は、お父様にも私達兄妹の誰にも似ておりませんから、恐らく異父妹で合っているのでしょうけれど。
ですが、母の浮気が発覚しなければ、上級妃になれたかもしれませんし、その後正妃になれた可能性もありました。
感情に任せて浅慮の元に行動する辺り、良く似た親子だと思います。
ですが、恋や愛と言うものは、理性を凌駕するものなのかもしれませんわね。
恋人や子を持たぬ私には、解らない感情です。
チェリアが陛下を殺害した事は伏せられ、陛下は公には病死した事になっております。
ですが、ケラスス男爵夫妻は、新国王となられる王弟殿下によって、縁座で秘密裏に処罰されました。
上手く行けば、重職に取り立てられる未来もあったでしょうに、お気の毒です。
尤も、チェリアに毒を与えたのはケラスス男爵なので、自業自得なのかもしれませんわね。
陛下が亡くなられたので、妃達は実家に帰る事になりました。
ですが、私は、王弟殿下が即位した後に上級妃となる事が決まっております。
王宮では、今回の件は、先代陛下の祟りだと言う噂が流れているそうです。
王子殿下が生まれて一月も経たない内に亡くなったのも、王太后殿下が牢に入れられて自害したのも、陛下が若くして亡くなった(寵妃に殺された)のも、全て、先代陛下の遺言を王太后殿下と陛下が無視した所為だと。
実際に祟りかどうかは判りませんが、仮に遺言に従っても、陛下のチェリアへの偏愛は変わらなかったでしょうし、チェリアが私達親子を敵視する事も変わらなかったでしょうから、同じ結末になる可能性は否めません。
桜宮は、縁起が悪いとかで取り壊されました。
一年後。
陛下の喪が明け、王弟殿下が即位しました。
私は新国王陛下の上級妃となり、更に一年後、正妃となりました。
もしも、この子が誰かに殺されたならば、私も乱心するのでしょうか?
半分同じ血が流れておりますから、心配ですわ。
気にしても、仕方ないですけれど。