6.カメリア、毒殺未遂事件の容疑者になる
夏が過ぎ、寵妃様が懐妊したとの噂が耳に入りました。
何も悪い事が起きないと良いのですが……。
しかし、祈りは空しく事件は起きてしまいました。
寵妃様の毒見役が命を落としたのです。
幸いにも遅効性の毒では無かった為、寵妃様が毒を口にする事はありませんでした。
私が犯人だと疑われましたが、証拠も目撃者も無いのに逮捕は出来ません。
すると、今度は、メイドの一人が遺書を残して自殺しました。
遺書には、自分が毒を入れた事・それが私の指示だった事が記されていたそうです。
「罪をお認めになりますか?」
捜査を担当する役人に、私はそう確認されました。
「二つ聞きたい事が有ります」
「何でしょう?」
「一つ目。筆跡鑑定はしましたの? 二つ目。そのメイドは字が書けますの?」
役人達は、驚愕を露わにしました。
彼等は読み書き出来て当然なので他もそうだと思っていたのでしょうが、下働きのメイドは読み書き出来ない者が殆どです。
貴族にすら、読み書き出来ない者が居るぐらいですので。
「きちんと捜査して下さいませ」
「失礼致しました。直ぐに確認致します」
捜査の結果、やはり件のメイドは読み書きが出来ない事が判明し、自殺に見せかけた殺人である事が明らかになりました。
私の疑いは一先ず晴れましたが、真犯人は一向に見付かる気配が有りません。
更に、同一犯なのか便乗犯なのか、寵妃様を狙った事件が次々と起きています。
二人いた侍女の内のもう一人も毒見で命を落とし、新たな侍女達は、命は落とさなかったものの障害を負ったそうです。
因みに、侍女の数は、下級妃が二人まで・中級妃が五人まで・上級妃が二十人までとなっております。
寵妃様は下級妃なので二人なのに、私は二十人まで許されております。
お父様に言われて、二十人連れて参りましたわ。
「大小全ての事件の人間関係を辿って行きますと、上級妃様の何れかに繋がります。更に、王太后様にも」
私は、事件について調べさせていた侍女達の報告を聞きました。
「それだけでは、根拠に乏しいわね」
「はい。残念ながら……」
王太后様……。
やはり、秩序を正す為に? それとも、ただの偶然?
「ただ、最初の毒殺未遂事件ですが、これは、もしかしたら……」
私は、侍女の見解を聞いて目を見張りました。
そうです。その可能性も確かにあるのです。
ですが、まさか、其処までするなんて……。
寵妃様の自作自演。
私を陥れる為の。