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3.カメリア、夫に会う

「今日は、雨になりそうですね」


 お茶会から数日後の朝、侍女頭が空を見上げて言いました。

 私も窓から外を見ますと、雨雲が見えました。


 天気が崩れたのは、昼過ぎです。


「カメリア様。陛下が雨宿りにいらっしゃいました」


 侍女達の演奏に乗せて歌を歌っている所に現れた侍女頭の言葉に、私は首を傾げました。


「まだお昼なのに、陛下が後宮に?」

「改築中の桜宮の進捗具合を確認にいらしたそうです」


 桜宮は、寵妃様の為の宮殿です。

 気になるのも、無理はありませんね。



其方(そなた)が、カメリアか」

「はい。お目にかかれて光栄です」

「この部屋は?」


 陛下は、通された部屋を見渡しました。

 ベッドがあり、青を基調とした落ち着いた雰囲気の内装です。


「陛下が万が一いらした場合に備えて、用意しておりました陛下の寝室です」


 侍女が暖炉に火を入れましたので、室内は暖まり始めています。


「着替えもございますので、どうぞご自由にお寛ぎくださいませ」


 私はそう言うと、一応の夫を放って居間へと戻りました。




 雨が止まなかった為、夕飯も寝室で取って頂きました。


「それでは、お休みなさいませ」


 寝る時間となり、私は陛下の寝室を訪れてお休みの挨拶をしました。


「ま、待て!」

「はい」


 私は、足を止めて振り返りました。


「其方は、余の種が要らぬのか?」


 求められても答えるつもりは無いけれど、求められないのはプライドが傷付くと言う事でしょうか?


「上級妃様方を差し置いてその様な事をすれば、王太后様のご不興を買ってしまいますので」

「母上はその様に狭量ではない」

「お言葉ですが、王太后様直々に釘を刺されましたから」

「……そうか」


 信じ難いようでしたが、陛下は引き下がりました。


「それでは、お休みなさいませ」



 翌朝。

 陛下は、折角だからと椿宮の中をご覧になられました。


「この絵は……ケラスス男爵領出身の宮廷画家クラウド・モネットの作か」


 居間の椿の絵を目にした陛下は、驚いたようにそう仰いました。


「はい」


 確かに、彼はケラスス男爵領の生まれです。

 一歳の時に、お父様の領地に引っ越して来て以来、一度も生地(せいち)を訪れた事は無いそうですけれど。


「チェリアにも見せてやりたいものだ」

「機会が御座いましたら、是非に……」


 そんな機会があるとは思えませんけれど。

 そう言えば、クラウド・モネットは、ケラスス男爵の為に絵を描いた事は一度も無い筈。

 これを見せたら、嫌味だと思われるのではないかしら?

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