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2.カメリア、姑と会う

 私の名は、カメリア・ルスティカーナ。

 ルスティカーナ辺境伯の次女です。

 この度、陛下の後宮へ入る事になりました。


 この国の陛下の妃は、正妃(一名まで)・上級妃(四名まで)・中級妃・下級妃とランクがあります。

 下級妃は、子爵家・男爵家の令嬢。

 中級妃は、公爵家・侯爵家・辺境伯家・伯爵家の令嬢。

 上級妃は、国にとって特に重要な家の令嬢。

 正妃は、上級妃の内、後継ぎの男児を産んだ妃となっています。


 私は、本来なら上級妃でもおかしくないのですが、既に四名埋まっていますので、中級妃として入りました。

 上級妃は独立した宮殿(薔薇宮・百合宮・牡丹宮・ダリア宮)が与えられるのですが、他は廊下で繋がっています。

 ですが、お父様がどんな取引をしたのか、私に与えられたのは独立した宮殿(椿宮)でした。

 使われていなかった古い宮殿を改築したものだそうです。

 そして、後もう一つ、例外の独立宮が造られていると聞きました。


 現在、陛下には寵妃がおります。

 下級妃、チェリア・ケラスス。

 ケラスス男爵家の一人娘です。


 彼女の為の宮殿と言う訳です。


 さて、この国において、正妃になれるのは後継ぎを産んだ上級妃のみ。

 陛下がもし、寵妃様を正妃にしたいのであれば、何処か重要な家の養子にし、今の上級妃四人・私を含む上級妃になれる家柄の中級妃と離婚しなければなりません。

 陛下と妃の離婚は、手柄を立てた者への褒美として下げ渡す場合と、家若しくは本人が重罪を犯した場合になります。


 まあ、陛下が寵妃様を正妃にするつもりでいるのかは、判りませんが……。

 因みに、下級妃が産んだ男児でも、後継ぎになれます。上級妃・中級妃が男児を産まなかった場合・産んでも亡くなった場合に限りますが。



 私は客間に移動し、壁にかけられた椿の絵を眺めました。

 これは、お父様がパトロンをしていた画家の絵です。

 彼は、現在では天才と称えられて宮廷画家となっておりますが、十数年前までは無名の貧乏画家でした。


 侍女が入れてくれたお茶を飲んでいると、お茶会の招待状が届けられました。


「荷解きも済んでいないこの時に、一体、何方(どなた)から?」

「王太后様です」




 お父様の話によりますと、王太后様は陛下を溺愛なさっているとか。

 今の上級妃四名は、王太后様がお選びになったそうです。

 つまり、私は、『息子の嫁=正妃』に相応しくないと思われている可能性が高いのです。

 しかも、お茶会には彼女達も招待されているようです。

 憂鬱ですわ……。



「私は、秩序は守らなければならないと思うのよ」

「仰る通りですわ」


 お茶会の席で、王太后様の自論を拝聴致します。

 王太后様が紫・薔薇の方が赤・百合の方が白・牡丹の方がピンク・ダリアの方が黄色のドレスを身に着けています。

 私は、緑色のドレスです。

 被らなくて良かったですわ。


「カメリア。貴女も、秩序を乱す行いは慎む様にね。貴女の父親の様な行いは、後宮に相応しくありませんよ」

「はい。肝に銘じます」


 ああ。やはり、宮殿の件で調子に乗るなと釘を刺す為のお茶会でしたのね。

 私は、上級妃の皆様の顔を、改めて見回します。

 いずれ劣らぬ美姫です。

 寵妃様が絶世の美女だと言う噂は聞きませんでしたから、陛下は心根に惹かれたのでしょうか?

 茶会の短い間での印象ですが、皆様からは、王太后様のような殿方を押さえ付けそうな気の強さが感じられます。

 恐らく、寵妃様は、そうではないのでしょう。


「それにしても、あの子にも、困ったものだわ。早く目を覚ましてくれると良いのだけれど」


 あの子とは、陛下の事ですね。

 もしも、このまま陛下が他の誰にも目もくれず、寵妃様が懐妊したら、一体、このお方はどうするのでしょうか?

 嫌な想像が止まりません。

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