1.チェリア
わたしには、お父様とお母様がいます。
二人は、とても仲が良いです。
愛し合って結婚したのだそうです。
わたしも、お父様とお母様のように愛する人と結婚したいです。
わたしのお父様は、男爵です。
うちは、他より貧乏なのだそうです。
そう、叔父様が、お父様を責めているのを聞いてしまいました。
うちが貧乏なのは、お父様とお母様の所為なのだと。
そして、わたしが生まれたのが悪いのだと。
わたしは悲しくなり、お母様に聞きました。
わたしは、生まれない方が良かったの?
お母様は答えました。
そんな事は無いわ。悪いのは、ルスティカーナ辺境伯よ。
それはだれ?
お母様は教えてくれました。
ルスティカーナ辺境伯は、お母様とお父様の仲を邪魔した悪い人なのだと。
お父様は、元々伯爵だったのだそうです。
でも、ルスティカーナ辺境伯が、王様にうそを吹き込んだ所為で、お父様は男爵になったのだそうです。
しかも、お金もいっぱい奪われたのだそうです。
だから、うちは貧乏で、ルスティカーナ辺境伯のうそを信じた叔父様達から嫌われているのだそうです。
なんて、ひどい人なのでしょう!
わたしは、ルスティカーナ辺境伯を許しません!
ある日、友達と公園で会いました。
彼女は、誕生日パーティーの為にドレスを作って貰ったと、はしゃいで言いました。
彼女のお父様は、伯爵です。
わたしのお父様が伯爵のままだったら、わたしも誕生日パーティーを開いて貰えて、ドレスも作って貰えたのでしょう。
わたしは、悲しくなりました。
そこへ、叔父様が現れて言いました。
そう言えば、お前の姉も今月生まれだな。
わたしの姉? わたしは一人っ子よ。
わたしがそう言うと、叔父様は答えました。
何も知らないのだな。お前の母親は再婚なのだ。お前には兄が二人と、姉が二人いる。
わたしは驚いて、家に帰るとお母様を問い詰めました。
お母様は、悲しげに教えてくれました。
なんと、お母様の前の結婚相手は、ルスティカーナ辺境伯だったのです!
お母様は、ルスティカーナ辺境伯と無理矢理結婚させられたのだそうです。
お父様とお母様の仲をそんな風に邪魔しただなんて! 女の敵です!
四人目の子を産んだ後、ルスティカーナ辺境伯はお母様を用済みとして離婚したのだそうです。
お父様は変わらぬ愛でお母様を受け入れ、私が生まれました。
お母様は、あちらの四人の子は、兄とも姉とも思わなくて良いと言いました。
もちろん、そんな事思いません。
お母様と無理矢理結婚したルスティカーナ辺境伯の子供なんて、半分血がつながっているのもおぞましいです。
しかも、お父様から奪ったお金でぜいたくしているのでしょう?
きれいなドレスを着て、誕生日にはパーティーをして……。
わたしは、絶対、彼女達より幸せになると誓いました。
でも、その為には、どうしたら良いのでしょう?
私が15歳になった年、新しい王様が即位しました。
良い事を思い付きました! 王様と結婚出来たら、ルスティカーナ辺境伯の娘より、幸せになれるに違いありません!
私はお父様とお母様に相談し、後宮に入りました。
そして、念願叶って、陛下の寵愛を得る事が出来たのです。
私は、幸せです!
でも、その幸せは長く続かなかったのです。
ルスティカーナ辺境伯の娘が、私の幸せを奪いに来たのです!