8 日本人 シェアハウス物語 第2シーズン-2
私はバンコクの病院で、日本人専用窓口の受付スタッフと
して仕事をしている。日本語は大学時代に日本に短期滞在
した時と、好きな日本のアニメをネットで見て覚えた。
この仕事をしていく中で、もっと日本人と関わりを持ちた
いと思っていた時、病院の事務部長から、日本の大学との
医療ツーリズムの共同プロジェクト事業のために、この病
院の仕事とプロジェクトの仕事を半分づつやっていくこと
を希望する病院スタッフを募集していることを聞いた。
そして私は希望通り、午後からは毎日、共同プロジェクトの
日本人の患者とその家族の暮らすシェアハウスで仕事をする
ことになった。もちろん、患者は私の勤める病院を通院や往
診で利用しているが、入院とは違い、家族といっしょに暮ら
す場面での、私なりにできることを見つけたいという思いが
あった。
シェアハウスでの私の仕事は、シェアハウスから初めて病院
に来る患者と家族、逆に初めて病院からシェアハウスを紹介
された患者と家族に、不安や心配が少しでも減らせるように
コーディネートをすることだった。
ハウスでは、日本人の学生スタッフたちとも、いっしょに仕事
をすることが多く、特にハナという女の子とは仲良くなって、
週末に2人で遊びに出かけることも多かった。タイの友達も少
なくなかったが、ハナとは本当に気が合って、笑うツボが同じ
というか、お互いの国のことを話すのがとても刺激的だった。
私たちは、お互いの部屋に泊まって夜が明けるまで、よく語り
合った。
ハナも友達が多くて、とても活動的なのに、好きな人には話か
けることもできないようで、そんな二面性も日本人の不思議な
魅力に私には思えた。
だから、ハナが大学の夏休みが終わる9月には日本に帰ってしま
うのが、とてもさびしかった。
ハナのような友達はもう私にはできないと思うし、ハナのように
私に元気をくれる存在がいないなんて考えられないと思った。
だからこそ、ハナには感謝をしている。そして感謝の気持ちを
何かで伝えたかった。