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7  ムーン・フェスティバル   第2シーズン-1 

ここバンコクは、9月が1年中で一番雨が多い季節だ。

気温は日本の夏とさほど変わらないが、湿度が日本の

梅雨のような感じで90%位になっている。


僕は9月には、日本にもどる予定にしていたのだが、もう

少し、ここで今の活動を、今よりも本格的にやってみた

いと思って、両親や大学の指導教官にも相談をして、よ

くよく考えた末、大学を休学することにした。


これからの自分の長い将来を考えれば、1年か2年の

休学はムダにはならないと思っている。休学でも授業料

を払わないといけないのが、不経済のように思えるが、

それでもやりたいと思える程のことかどうかという問い

を僕自身につきつけてみて、はじめて本気になって考え

れたけ結論だった。


観光学科の先輩のハナさんは、すでに卒業に必要な単位

はほぼ取っていたので、あとは日本でバイト三昧ざんまい

コンサート三昧ざんまいと、ちょっぴりの就活しゅうかつをやると言っていた。

他の日本から来ていた学生たちも、多くは10月までには

日本へもどって行く。もちろん指導教官も日本に帰って

しまう。

さびしいのは事実だが、これまで出会えなかった人たち

との新たな出会いもあると思うと、これからが僕の人生

の本番だと思える。


教授の取り計らいで、ここでの仕事は、そのままだが、

これまでと同じように食費や滞在費の負担はしなくても

よく、その上、現地の大学に交渉してくれて、少しだが

政府からの特別手当もいただける予定だ。本当にありが

たいことだ。


ハナさんからメールが来た。

日本へ帰る前に2人で食事をしようと言ってくれていた。

ハナさんは僕のあこがれの女性の先輩だ。

先輩だからあこがれるのか

女性だからあこがれるのか

どちらが強いのか分からないが、どちらとも両方あるのは

間違いなかった。


しかし、日本から遠くにいるから余計よけい感じるのかも

しれないが、ご先祖様に守られ、みちびかれていること

を、ありがたいと何気ない時に思う。お彼岸ひがんにお墓参

りには帰れないけど、その分、月に祈り、感謝をささげ

よう。

太陽は活動のエネルギーをくれ、月は心のエネルギーを

僕にチャージしてくれているような気がする。


日本では9月は中秋の名月というイメージがある。

しかし、今年の旧暦の8月15日は10月4日らしく

中秋の名月、十五夜も10月のようだ。

バンコクでも、中華街だけではなくタイ全土で日本の

米粉のお団子をお供えするように、月餅げっぺい

というお菓子が準備されている。スターバックスで

もオリジナルの商品が販売されている。


明日も、ハウスに暮らすみんなと、そこで働くみんなに

良いことがありますように。


僕は、昨日までは、自分だけのことを考えて生きていた

ような気がした。

自分以外の人のことも、考えてはいただろうが、それは

自分の次にという意味だった。

人と比べることで、自分の立ち位置を自覚できていたの

かもしれない。

だが、人と比べなくて、自分のことを自分なりにやって

行くというのが、自分だけのことを考えることよりも、

自分のことが分かっているということなのだろう。


月夜が、昨日よりも神秘的に感じられた。


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