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16  ソーシャルワーカーの存在   シェアハウス物語 第3シーズン-4

「和田さん。お邪魔じゃましていいですか? 相談員のタシマです」

そう言って、30代前後の女性のソーシャルワーカーが部屋に

来てくれた。


「和田さん。調子はいいですか?」

「まあ、相変わらずだね。あなたの方はどうだい?」

「私は、下痢げりが続いて大変ですけど、なんとかやってます」

「大変そうな感じには見えないけどね」

「皆さんの前では、笑顔ですから。笑顔ひとつ入りますって、

心の中で、お部屋に入る前に言ってるんですよ」


医者や看護師とは違って、キツさやつらさを何とかしてくれという

気持ちを、この人たちに出すことはないし、患者としての自分を意識

する必要もなかった。

こちらと同じ目線で、いろいろと考えてくれる、いわば入院の間だけ

の『世話好きの友人』のような感じが、このソーシャルワーカーだ。


「看護師から和田さんがおうちに帰るには、どうすればいいの

かを相談してみたいって聞いたので、今日はお話に来ました」

ボクが『ハウス』に帰ることが出来るのか、そのためには何を手配し

てもらうことになるのかを、教えてもらった。


「和田さんが帰りたいと希望されて、受け入れの体制も整えていける

準備さえ出来れば、あとは和田さんのご状態を先生が診て、大丈夫と

太鼓判を押してくれれば帰れますからね」

彼女は、今入院しているような医療面や介護面のケアを続けていくの

に、こんな所と連携して協力体制を作っていくのがいいのではないか

というのと、一度、関係者を全部ここに集めることになると説明をし

てくれた。


詳しいことまでは頭に入ってこなかったが、ここを退院しても安心し

て治療を続けてもらえる協力体制を作ってもらえるのだということは

理解できたし、『病院離れ』が出来ないのではないのだと思えた。


「ありがとう。とても丁寧ていねいに教えてくれて。あなたの話を早く聞けて

心配することもあまりないなって思えたよ。ありがとう」

「そうですか。そう言っていただくと、私もお話に来た甲斐かいがあります」

彼女は、それからもう少し、事務的でなく事務的な話をしてくれた。


「それじゃあ、協力体制を作っていってもらう関係者の人たちに、

ここに来てもらって、いろいろと細かい点も確認していくための話し

をさせてもらう日程を調整していきますね。もちろん、病棟の看護師

や先生にも、その方向で進めることの了解をもらっておきますからね」


病院の中では、看護師の数が一番多くて、看護師にやってもらうことや

話す機会が一番多いのは当たり前のことなのだろうが、個人の意見を言

ったり聞いたりして、話し合えるという感じには思えなかった。先生に

聞いておきましょうねとか、誰もが同じような答えをするのには、人間

味が薄い言葉のやりとりのようにも感じていたが、ソーシャルワーカー

の数は看護師の何十分の一しか病院にはいないのに、一番普通の世界に

近い人、病院と世の中がつながっていることを、思い出させてくれる人

だと思った。


彼女は、治療も処置もしてはくれないが、ボクがここに入院して、一番

満足を与えてくれたような感じがした。


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