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中年勇者とロリの旅  作者: どらねこ
3章 テタンドの街編
22/28

22話 再会

 魔王が確認された――その情報がテタンドの街に与えた衝撃は計り知れないものがあった。

 少し外に出れば、それは容易に感じ取れる。


「押さないでください! 皆さん落ち着いて!」


 そう声を出すのは警備隊の真新しい制服に身を包んだ男だ。


「魔王がいるとこなんていられるか!」

「そうだそうだ!」


 そんな男のいる町の出入り口となる門に、人々の波が押し寄せている真っただ中だった。

 男は人々にギュウギュウと押されるが、しかしその門が開くことはない。

 テタンドは周囲を断崖絶壁の崖に覆われており、門が唯一の出入り口となっている。

 警備隊としても、この門は死守しなければならないのだろう。


「魔王を確実に仕留めるために、街を封鎖しているんです! 魔王が人間に化けている可能性があります、出ることはできませんっ!」


 男が懸命に声を出す。

 人々を抑え込み続け、その制服はすでに酷く乱れている。

 しかし人々も納得しない。


「ふざけんな! 俺たちは切り捨てられたってことかよ!」

「ここからだせよ! おいっ!」


 自分たちの住む街に魔王がいると言われて、落ち着いていられる人間などほとんどいないだろう。

 勇者の俺ですら落ち着いていられないのだから。

 そんな中、町から出ることを禁止されれば、こんな事態に陥るのは当然とも思えた。

 警備隊の彼には気の毒ではあるけれど、誰だって結局は自分の命が一番大切なのだ。


 そんな街の様子を確認し、俺はリーベの待つ部屋へと帰る。


「おじさん!」

「おうリーベ、帰ったぞ」


 俺の帰りを待ちわびていたらしく、リーベは玄関で人形遊びをしながら俺を待っていた。

 俺はリーベと共に廊下を歩き、中の部屋へと入る。

 ソファに腰掛けたリーベは、背もたれに体重を預けて「はぁーっ」と上を向いた。


「なんだかすごいことになっちゃったねぇ。音だけでもすんごいよ、昨日までとは大違い」


 リーベの言う通り、部屋に居ても外の喧騒が聞こえてきていた。

 昨日までの落ち着いた街の雰囲気はどこへやら、今のこの町には恐怖と怒りが蠢いている。

 さすがにこんな状況でリーベを外に出す気にはなれずに部屋に残したのだが、それも正解だったようだ。

 平時とは程遠い状態の町の人々には、小さなリーベは目に入らないだろう。一緒に出掛けていたら、何かトラブルに巻き込まれることになっていた可能性もある。


「それで、誰か来たか?」

「うん、二回くらい」


 二回もか。

 俺たちの宿を訪ねてくるような人物に心当たりはないのだが……。

 だが、物取りをしようとするような人々がわざわざチャイムを鳴らすとも思えないしな。

 一体誰が来たのだろうか。

 俺は首を捻るが、考えても答えなど出るはずもない。


「その時に反応はしたか?」

「しなかったよ。おじさんに言われた通り!」


 リーベは胸をしゃんと張る。

 この年で言われたことがきちんと守れるのは立派なことだな。

 俺が子供の時なんて、チャイムが鳴る度にテンションが上がってお祭り騒ぎしていたぞ。

 ……考えなしの子供の代表だった俺と比べるのは、リーベに失礼かもしれないが。

 ともあれ、リーベはしっかりと俺の言いつけを守ってくれたのだ。

 褒めてやらねばならないだろう。


「リーベ、偉いぞ」

「えへへぇ」


 頭を撫でてやると、リーベは頬を緩めた。可愛い。

 どうしてこう、この子は可愛らしいのだろうか。

 やはり家に居てもらってよかった。この騒ぎの中に出して、リーベが怪我でもしたら俺は冷静でいられる自信が全くない。


「お?」


 自分の判断が正解だったことを確かめていると、玄関のチャイムが鳴らされた。


「あ、まただよおじさん! 三回目だ!」

「見てくる。リーベはここで待っててくれ。危ない人かもしれないからな」

「うん、わかった」


 俺が頭から手を離すと、リーベは上目遣いで俺を案じてくれる。


「気を付けてね、おじさん。刺されちゃ嫌だよ?」

「それは俺も同感だな……」


 できれば悲観的な想像を口に出すのは止めて欲しかった。

 リーベが言うと、何か本当にそうなりそうな気がしてきたぞ……。


 ただ、チャイムがなっているのにでない訳にもいかない。

 本当に俺に用事がある人間の可能性もあるし、もしヤバいヤツだったとしても、放っておけばその内家の前で出くわすことも考えられるからな。

 どんなヤツが来ているのか確認しておくのは必要事項だ。


 俺は扉に近づき、覗き穴から外を覗く。


「……!?」


 そこにいた予想外の人間の姿に、俺は考えるのも忘れて咄嗟に部屋の扉を開けた。

 開いた扉の先に見えるのは、二人の男女。

 一人は筋骨隆々な身体の厳つい男。もう一人はすらっとした華奢な身体の美しい女。

 二人は俺の姿を見ると、揃って懐かしそうに目を細めた。

 ……いや、二人だけじゃなくて、きっと俺も同じ顔をしているのだろう。

 なにせ、二十年ぶりの再会だ。


「おお、今度はいたか。久しぶりだな、ヴォン」

「会いに来ちゃったわ」

「久しぶりだな、ドモン、レネリー!」


 俺の部屋を訪ねてきていたのは、二十年前の魔王討伐の時にパーティーを組んでいた二人――ドモンとレネリーだった。


「なんで二人がここに?」

「教会から呼び出されて急遽この町に来たんだが、魔王がどこにいるかわかんねえんじゃ仕事もねえ。仕方ねえからぼちぼち情報を探ってたら、お前がいるっていうじゃねえか。だから来た」

「三人で揃うのももう二十年ぶりよね。懐かしいわ」


 レネリーは遠くを見つめる。

 二十年経ってもその色気は全く衰えておらず、それどころかむしろ二十年前よりも魅力的になっているのではないかという気さえした。


「まあ、立ち話もなんだ。中に入ってくれ」


 俺は二人を家の中へと招き入れる。


「突然押しかけて悪いな」

「迷惑じゃない?」

「いい、いい。そんな水臭いこと言うなよ、俺とお前らの仲じゃないか」


 俺は上機嫌で応え、部屋へと戻る。

 そこでは、俺の言いつけどおり部屋で待っていたリーベが首をかしげて俺を待っていた。


「おじさん、その人たち誰?」

「ああ、コイツラは――」

「お、おいヴォン! お前子供なんていたのか!?」


 説明しようとしたところで、ドモンが俺の言葉を遮る。

 驚く気持ちは分かるが、今リーベに説明してるところなんだから黙っててくれドモン。

 というか、俺に子供がいるのはそんなに驚くことなのか? 誰もかれも目を丸くして驚きやがって……いや、実際いないから言い返せないんだけどな。

 まあ、まずはリーベに説明をするのが筋だろう。

 ドモンとレネリーへの説明は後回しだ。子供と大人、どっちを優先するかなんて決まってる。


「ドモンは一旦待ってくれ。リーベ、コイツラは俺の二十年前のパーティー仲間だ」

「へぇぇー。お兄さんお姉さん、どうもこんにちは!」


 リーベはぺこりと頭を下げて二人に挨拶する。


「……どうでもいいけど、俺が『おじさん』でドモンが『お兄さん』なのはなんでだ?」


 いや、どうでもいいんだけどな。本当に。本当にどうでもいいんだが、まあ少し気になる。いや、実際どうでもいいんだぞ? でもまあ、気にならないと言ったら嘘になるよな。


「わたしにとって『おじさん』はおじさんだけの称号だから」


 若干混乱する俺に、リーベは言う。

 くそぅ、リーベのヤツ、嬉しいことを言ってくれるじゃないか。


「悪いなドモン、お前はお兄さんどまりらしいぞ」

「いや、なんで勝ち誇られてんのかさっぱりわからねえんだが……」


 この嬉しさがわからないのか。可愛そうなヤツめ。

 とまあ、戯れはそれくらいにして、今度はリーベを二人に紹介しないとな。

 リーベの背中に手を置き、俺は二人にリーベを紹介する。


「この子はリーベ。まあ本当の名前じゃないんだけどな。一応俺が身柄を預かってる子供――」

「子供じゃないよっ! わたしはおじさんの許嫁!」

「リーベっ!?」


 またそんな突拍子のないことを言わないでくれ!


「ヴォンって、こういう幼い子が好きだったんだ……」


 ほら、レネリーがドン引きしてしまったじゃないか。


「違うから! 引かないでくれレネリー! 違うんだ!」


 俺は必死に誤解を解こうと試みる。

 すると、服の裾がギュッと引っ張られた。

 見ると、リーベが泣きそうな顔をして俺を見ている。


「うぅ……おじさん、わたしのこと嫌いなの……?」

「い、いや、嫌いじゃない! もちろん大好きだ!」


 大好きなのは本当なんだ。

 だけどそれは恋愛感情とはまた別個のものだし、許嫁というのは否定しないと俺の社会的立場が終わるんだ。わかってくれリーベ。


「リーベのことは大好きだ。本当だぞ? だから泣かないでくれ、な?」

「……うん、わかった」

「……やっぱりヴォン、あなた……」


 ああ、リーベが泣き止んだ代わりにレネリーがさらに引いてしまった。

 ……なんだこれ、くっそ面倒くせえ。どうしてこうなった!


「ち、違う! 大好きだけど、それはそういう意味じゃなくて――」

「心配するな! お前がどんな女を好きであろうと、俺はお前を戦友だと思ってるからな!」


 ドモン、これ以上なく的外れな援護をありがとう。

 相変わらずの猪突猛進ぶりで何よりだよ。

 屈託なく笑うドモンに、俺は怒りを感じることも出来ない。

 ただ、身体中の力が抜けていくのを感じる。


「違う、違うんだって……」


 頼むからみんな俺の話を聞いてくれよ……頼むよ……。

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