万象の龍④
結局、退屈な一日は図書館に引きこもって過ごした。あそこはあそこで静かで寂しいのだが、そこしか思い付かなかった。語彙よりも行動範囲を広げたい今日この頃だ。
そんな帰路の途中、俺は奇妙な幼女を前方に見た。全体的に印象の薄い彼女はまるで陽炎のようで、近づけば近づくほど遠く離れて行く蜃気楼にも思え、その儚さゆえか、俺は彼女のことを美しいと思った。時代の新陳代謝から取り残されたような、この田園風景に相応しくも感じられる。なんと言うか、絵にでもしたい。
瞬きの間に消え去ってしまいそうな幼女も俺の存在に気が付いたようで、こちらを見てゆっくりと微笑んだ気がした。表情と言う物が一切ない、かと言って能面のような無機質さもない幼女の顔から、俺はどうして感情を読み取ったつもりになったのだろうか。
「またあったなしょうねん」
いつの間にか。そんな風に表現するしかないほど唐突に俺の横にいた幼女が、何かを口にする。特別早口だったわけでも、外国の言葉だった訳でもなかったが、彼女が何を言ったのかが俺の頭には微塵も残らなかった。理解できなかったわけではなく、『覚えていない』としか言いようがない現象に、俺は僅かながらの既視感を覚える。
「ああ。おぼえていないのか。あのまがんのぼうずはとくいちゅうのとくい、か」
再び、彼女が何かを呟く。しかし鳴り終えた鐘の音を数えるような漠然とした印象しかない。『ああ、確かに喋っていたな』と思い返すのが精一杯だ。
そんな俺の混乱を知る由もない幼女は、勝手に俺の自転車のかごを漁り、大量の漫画本を見つけると、
「頂きます」
と確かに言った。俺が初めて彼女の言葉を理解できた瞬間だった。
しかし何を頂いたのだろうか? 鞄を持ち歩かない俺の自転車の買い物かごには何も入っておらず、飴玉を上げることすら不可能なのに。
「これで会話になるな。お前、暇だろう? 私の話し相手にでもなってくれないか?」
儚い外観とは裏腹に、落ち着いた地に足付いた声が俺の鼓膜を揺らす。ギャップに面喰いながら、俺は言葉を返す。
「良いけど……君、ご両親は?」
「もう私の親に挨拶をする気か? まだ私達は出会ったばかりじゃあないか」
かけらも笑わずに、幼女が俺の服の裾を引っ張る。
「そんなことよりも、そうだな、駅までで良い。私の話し相手をしてくれないか?」
駅まで。そこに両親がいるのか? そもそもこの子はどうしてここにいるのだろうか? 疑問は尽きないが、
「分かった。いいよ」
俺は彼女の提案を受け入れた。こんな何もない所に幼女一人を置き去りにすることに抵抗もあったし、『妹が元気だったら』なんて言う幸せのIFを夢想もしていた。何より、今の俺は退屈だ。
「おお。話がわかるな。褒美に『一つ』だけ、お前の望む物を、お前の不要な物と交換してやろう」
自転車から降りながら、俺は彼女の話に適当に頷く。「そりゃあ有難い」
「む、信じていないな? 私はこう見えても有名な『プレイヤー』なんだぞ?」
そう言うアニメか何かが流行っているのだろうか? それにしても、表情の変化も一切なしに、よくもまあ感情を台詞に込められる物だ。
「その話も面白そうだが、まずさ、お姫様、君の名前は?」
自転車の方向を変えて、今来た道を辿るように歩き始める。その横を、幼女が短い手足を動かしながら付いて来た。歩くペース、もっと落とした方が良いのかな?
「姫ではない。私は竜だった、神だった、天だった、帝でもあった。昔の話でもあるし、今の話でもあるし、これからの話でもあるがな。人は私のことをそのまま竜神天帝と呼ぶ。お前には『りゅーちゃん』と呼ぶ権利をやろう」
な、なんて痛い子なんだ……。まあ、この位の年齢なら、許されるんだろうけど。もっとも、幼女幼女と先ほどから表現こそしているが、彼女の儚い雰囲気は十代にも二十代にも、七十にも死体のようにも感じられる。
違うか、そうじゃあないんだ。まるで『人』じゃあないような雰囲気があるんだ。竜と言う程に恐ろしくはないが、神と言う程に厳かでもないが、天と言う程に深くもないが、帝と言うほど絶対でもないが、人と言う程に生きているようにも思えないのだ。
「さて、私は名乗ったが」
あれを名乗ったと言うのだろうか? 本当の名前を教えろよ! と突っ込みたい所だが、もし本当の名前を聴いて、彼女が人でなかったとしたら? そんな冗談みたいなことを考えると、俺の口は自然と閉じてしまった。
「お前の名前は何と言う」
「七咲英悟。『七つの花が咲く』に『英雄を悟る』で七咲英悟」
律義に漢字まで教えて見る俺。この歳の子が漢字まで必要とする理由はないのだが、どうしても伝えておかなければならない気がした。
「英雄を悟る? 英雄になるのではなくてか?」
思った通りに、幼女らしからぬ箇所に彼女は喰いつき、話を広げようとして来た。
「ああ。偉大な人間になれなくても、偉大な人の気持ちを考えることが人間になれってさ」
何とも、良いことを言っているようでいて、よくよく考えてみればそこまで大したことを言っていない名前だ。名前負けする心配がないことだけが救いだろうか。
「なるほど。良い名前じゃあないか。『皆は俺が守るから、誰か俺を守ってくれ』と嘆いていた主人公がいたな」
こいつ、こんな浮世離れした雰囲気を出しておいて、漫画を嗜むのか……。
「どんな偉大な一生だろうと、認められなければ意味のない物だしな」
どこか遠くを見るように顔を上げて空を眺める幼女。もうそろそろ、下り坂になるので、上ばかり見ていると危ないと注意をすると、予想に反して彼女は素直に頷いてくれた。俺も、自転車に引っ張られないように、腕に力を入れて坂道に備える。
「さて、互いの名前もわかった所で話を戻そうか」
戻すほど大した話をしていただろうか? 少なくとも俺にはそんな記憶がないのだが。
「幼稚園の話だったけ?」
「私がお前の望みをかなえてやると言う話だ。勿論、代償は頂くがな」
ああ、そんな話をしていたっけ。いや、してたと言うか、この幼女が一方的に言い出しただけだった気がする。重力によって下に下に行こうとする自転車を腕力で抑え込みながら、俺は言葉を探す。
どうやってやんわりと断るべきなのかと。
「代償。それは本来、失われた物の偉大さを表すものだと思わないか?」
……俺が言えたものではないが、この子はどんな家庭で育ったんだろう? いや、逆か。この子の精神が肉体に対して異常なのではなく、肉体の方が精神に対して異常と言った方がしっくりくる。どこぞの名探偵ではないが、身体の成長が止まっているだけで、心は既に老獪の域にまで達しているのかもしれない。
「って、んなわけねーか」
彼女に聴こえないように、俺は自分の思考を否定する。幾らこの幼女が人間離れしているからと言って、流石にそんな人間がいるとは思えない。この子は疑いようなく人間だ。
「ほお。私の意見を否定するか」
っと、しっかりと聴こえていたみたいだ。しかも面倒臭い方向に勘違いまでしてらっしゃる。
「ごめん、独り言だ」
「私の話を聞かずに上の空か……良い身分だな」どっちに転んでも面倒か。表情を全く変えずに不機嫌を表すという離れ業をやって見せる彼女。「まあいい。聴いていなかったのであれば、もう一度言おうか?」
「いいよ。聴いていたからさ。等価交換の話だろう?」
人気漫画で一躍有名になった単語を持ち出して、俺は彼女に話を合せる。
が、しかし、だ。
「全然違う」彼女は俺の言葉を一蹴する。「等価な交換など、紙の上の出来事でしかない。いや、私ですら不可能なのだから神の上の出来事でしかないのかもしれないな。私が言いたいのは、もっともっと単純なことだ。何かを得るには、何かを失わなければいけない。なんて話でもない。失った物よりも多くの物を得ることこそが、代償の真の意味であり、真の価値ではないかと言う話さ」
「つまり?」
意味がわからないと、俺は話の続きを促す。もう既に、俺は彼女のことを歳下だなんて思ってもいなかった。
「わからないか? 得ると言うのは、先に進むと言うことだ。余計な物を削ぎ落して、尖ることだ。より高くなろうと、より強くなろうと、より悪くなろうと言う意思のことだ。と、私は考えているのだ」
「つまり?」
「つまりだ、人間は停滞するべきではないと言うことだ。私はその強くなると言う意思を、世の中に蔓延らせたいんだ。その為に、資格のある者を見つけると気紛れにその助けをしているんだ」
欲しい物を得れば、人は幸せになれると言う話だろうか? それとも、人間は未だに進化の途中と言うことだろうか。
「まず、適当に不要な物を言って見ろ。お前の不要な物を削ぎ落して、お前に必要な物を用意してやろう」
坂道をジャンプで終わらせ、俺よりも半歩前に進んだ幼女が俺の顔を覗く。小さな黒眼が俺の心を見透かすように笑っている。
しかし、いらない物か。欲しい物ならいくらでもあるけど、理不尽にさらされ続けた俺に少しでも不要物があるのだろうか?
俺がそう訊ねると、彼女は初めて表情を顔に表した。その瞬間、横で自転車が倒れる派手な音が鼓膜を揺らし、それと前後して、臀部に衝撃が走る。
何故なら、彼女の笑顔は、
「あるさ」
全てを貪り喰らうような、獰猛な捕食者のそれだった。絶対者の笑みだった。
なるほど、確かにこの恐怖感は竜だ、この神々しさは神だ、この偉大さは天だ、この絶大さは帝だ。情けなく腰を抜かした俺は、彼女と言う存在を改めて理解した。
俺は、とんでもないモノに出会ってしまった。本能的な恐怖が警鐘と歯の音を鳴らし、俺は自分の意志で指一本動かすことができない。
「英悟、君は未だに無理で無駄でムラのある存在でしかないんだよ」
捕食者のように白い犬歯を剥き出しに笑いながら、彼女――《竜神天帝》――が高々に歌うように言う。
「この世界の『仙道』を知っているか? 彼等は厳しい修行にその身を置き、様々な余計な物をそぎ落とし、肉を離れ地を離れ、個人と言う概念すら消し去り、最終的に『世界』と融和することが目的なのだそうだ。それと比べれば、君はまだまだ贅肉の塊りだ」
細くて短い人差し指を俺に突き付けて、彼女が嬉しそうに口元を歪める。
「さあ、無駄な物は何だ? 不要な物を探せ。欲しい物を言え。欲望をぶちまけろ」
彼女の言葉に、俺は彼女が何もなのかを今更に理解する。
きっと、彼女はそうやって生き続けて来たのだろう。存在感が希薄なのも、恐らくそれすらも他の物を得る為に捧げて来たのだろう。最初、俺が彼女の言葉や姿すら曖昧だったのも、彼女がそう言った物を捧げたからなのかもしれない。
不要な物を捨て続けた結果、彼女は『人』であることすら捨ててしまったのだ。
何故だか、俺にはそれが理解できた。もしかしたら、彼女の方から言葉以外の何かで説明してくれているのかもしれない。
「そうだな? 手ごろな所から『影』なんてどうだ? 私も最初は影を捨てた。何の意味もないだろう? そんな現象には」
そう言って、彼女の身体はその場にしゃがみ込むと、俺の影の上に掌を置いた。今更ながら、彼女の下には影がないことに気が付いた。ある御伽噺では、金貨十枚と交換した『影』。その話のオチがいかなる物だったかは思い出せないが、ろくでもない結果だったのは間違いないだろう。
それを自ら捨てた彼女は、それを俺から奪おうとする彼女は、何なのだろうか?
「うわぁぁぁぁ!」
俺は咄嗟にその手を右足で蹴り飛ばす。シューズ越しに幼女の右手を蹴飛ばした感覚が伝わって来るが、それは人の身体と言うよりもビニールの浮き輪を蹴飛ばしたような小さな感覚だけが残るだけだった。
その感覚に、俺は今までで最大の危機感が背筋を這う。情けなくても良い。溺れたように手足をばたつかせて彼女から可能な限りの距離を取る。
俺の蹴りが強かったのか、彼女が大袈裟に転がったのか、彼我の間には五メートル程の間が出来ていた。
「影は嫌か? じゃあ何が良い? 『記憶』か? 『視力』や『味覚』でも良いぞ。『内臓』とかでも平気だ。『魂』でも全く問題はない。それ以上に素晴らしい物を得ることができる」
いつの間にか立ち上がった彼女が、いつの間にか俺の耳元でそんなことを囁いた。
「素晴らしい物?」反射的に、俺は震える口で言葉を返す。
「ああ。より強く、悪く、絶対的な何かだ。私を見ればわかるだろう? 『人間』であることよりも、『自分』であることを優先した『私』の素晴らしさが」
素晴らしい? 俺はその言葉に最初は違和を覚えたが、直ぐにそれを否定した。最初、俺は彼女を散々『美しい』と表現をしていた。
「な、何で俺なんだよ?」
しかしそれも数瞬前の話だ。今の俺には、彼女を美しいと思う余裕はない。
彼女から俺が受け取る印象は、ただ恐ろしいだけ。自然災害のような絶対さと、それに立ち向かう俺の矮小さから来るものだろう。
「ん? 理由なんてないよ。ただ単に、英悟が私のことを見つけることができたから、その褒美だ。この私を見つける為に、神知教がどれだけの労力を払っていると思う? もっとも、奴等に見つかった所で、褒美を取らせようとは思わないが」
神知教。この世界最大の科学技術集団の名前を出して、彼女の表情が少しだけ歪んだ。それは誤差のような唇の変形には、確かに悪意や敵意が感じられ、まだそんな物を持っているのかと、少しだけ哀れにも思った。
「奴らの向上心と脇目の振らなさと狂気は好ましいのだが、いかんせん目的がな」
「も、目的?」
「そう。あの目的だけは捨て置けんよ」
神知教の目的と言えば、その名の通り『神の知を超える教え』を世界中に広めることのはずだ。凡人たる俺には理解できないその名目を、凡夫ならざる彼女が嫌う理由とは一体。
……いや、もしかして、そう言うことなのか? さっきの彼女の説明、彼女の存在の希薄さ、俺が今感じている恐怖の意味、神知教の目的。そう考えれば、全てのつじつまが合う。しかしそんなバカな話が有りうるのだろうか? 凍りついていた心臓が、今度は急な鼓動を刻み始める。耳元で鳴っているような心音が、俺の思考ごと身体を熱くしていく。
「まさか、あんたの正体って……」
ぼき。
と、騒がしい聴覚に冗談のように軽い音と共に、右腕に熱が走る。涙で滲む目で痛みの発生場所を見ると、そこからは少なくない量の血が噴き出しており、その大元には今まで一度も日の光を浴びたことがないであろう純白の骨が見えた。
が、しかしそれも一瞬。……一瞬? 一瞬なんだったけ? わからない。
今、何かが変わったのは間違いがないのだが、何が変わったのかまでは分からない。間違い探しの二枚の絵を見比べるあの奇妙さに、喉の裏がむずかゆくなる。
「おっと、それ以上は言ってくれるな? そう呼ばれたら、また余計な物が増えてしまう」
言う? 俺は今何を言おうとしていたんだ? そもそも、目の前で腕を組んで偉そうに喋るこの幼女は誰だったっけ?
「やり過ぎてしまったか? 永い付き合いだが、未だに匙加減が分からないな……」
俺の様子を見て、幼女がその無機質な顔を乗せた首を疑問符の形に曲げる。
「英悟。私だ、竜神天帝だ」
っ! そうだった、思い出した。儚い印象の彼女は、人間であることを捨てたステージの存在であり、俺から何かを捨てさせ、同じステージに上らせようとしていたのだ。何故、こんな重大なことを、分水嶺とも言える状況を忘れていたんだ?
「思い出したか?」
思い出したとも。彼女を睨みつけるながら首を縦に振る。
「なら話を戻そう。英悟は私を見つけた。輝和や、木神、人生不敗でもなければ、困難を極めるであろうに。私は純粋に嬉しいんだ。この世界の人間に『そこまで』の人間が現れてくれたことがな。私の目標に近づいたことがな」
目標? 嬉しい? この世界? その言葉に、俺は何かを思い出しそうになる。しかしそこで思考は真っ黒に染まり尽くす。ぽっかりと、穴が開いてしまったようだ。彼女に在ってから多々感じるこの違和感は一体……いや? まさか?
「お前、俺から何を奪った?」
「ほう。気が付いたのか」俺の驚愕の表情に、彼女が手を叩いて喜びを告げる。「流石だ」
何が『流石』だ。自分の持ち物を奪われて気が付かないわけがないではないか。と言っても、何を奪われたかまでは俺にはわからないのが格好付かないけど。
しかし予測はできる。恐らくは記憶、もしくは自転車のかごに入っていた何かだろう。それを使って、自分に不都合な出来事を修正したのだ。良く理解できていないが、彼女はそうやって物事を自分の都合のいい方に交換して生きているのだ。厄介なのは、何を捧げたのか、何を変更したのかが、俺にはまったく理解できないことだ。
「しかし『捧げた』と言って欲しいな。ああ、安心してくれ。君の何かを変えたと言うことはない。単純に君と話す為の力に変えたり、私の力に変えて見たりしたりしだけさ」
「ふ、ふざけるな」あまりにも勝手な言い分に、強い言葉が飛び出る。「人の物を勝手に奪っておいて、その尊大さは何なんだよ!」
「でも、思い出せないんだろう?」
――っ。
「それは、その程度の物だったんだ。そんな物を大切だと勘違いしているから、人間は一向に前に進めない」
それに。と、彼女は続ける。
「盗むことの何処が悪いんだ? 法律によって自由が保障されているなんて言う考え方が私にはわからないよ。盗むのなら盗めば良い。欲しい物は奪えば良い。気に喰わないなら殺せば良い。混沌に、無秩序に、悪いことなど何もない。何故に強者が、弱者の顔色を窺う必要がある?」
瞬間、喉が万力のように静かな圧力に囚われる。勿論……と言うのも奇妙な話だが、彼女の身体は一切俺に触れてもいない。いや、そもそも彼女の手など、最初から形だけの物に過ぎない。誰かがいると、俺が思ったからこそ、彼女として竜神天帝は姿を現したのだ。
そして、その姿として俺は妹を想像した。絶対的な強者の姿として、俺は『妹』の姿を選んだのだ。親にいつも構って貰っている幸せな存在として、生きているのが不思議と言われながらも生き続けている妹を絶対の象徴として、俺の人生を理不尽その物にした恐怖として、俺は見たこともない妹の姿を想像し、この世界その物とも言える竜神天帝にそれを当て嵌めたのだ。
「そうだな、そうだよ。私も温い事を言ったもんだ。褒美を与えたいのなら、無理矢理にも与えてしまえばいい。倫理感など、英悟と話す為に取って付けた物に過ぎないしな」
気道を塞がれ、血の気が引いて来た俺の頭に、クリアな彼女の声が聴こえる。
「さて、君の人生には何が必要ないかな?」




