表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
逆さの月の恋  作者: Nesn


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/20

第十四話〜柏木side〜

認知症の人に思い入れの深い香りを嗅がせると、一時的に当時の記憶を取り戻すことがあるらしい。


香りは頭の中に残るんじゃなく

その人の心に残るから。


だから、例え脳が働かなくても

心が脳を動かすんだそうだ。


それほどまでに香りというのは人の心の奥深くに染み込む。


最愛の人の香りなら、尚のこと…


____________________



彼を見て一目で分かった。

なんでだろう…本能的な直感かな?


この男は自分の天敵だと

全身の毛が逆立ったのを覚えている。


____________________



初対面時__


柏木「初めまして、柏木陽介です」


朔「カメラマンの石川朔です」


鋭い目つきに低音の声、そして綺麗な金髪。


正直、動揺していた。

想像していたよりも良い男だったから。


そして、何よりも…


柏木「夏目君とは会ったことないけど、尊敬している先輩がお見舞いに来てくれたら喜ぶと思いますよ」


朔「俺、そういうことするタイプじゃないんで」


初対面の僕にも何一つ怯むことなく自分を貫いてこようとする。


その傲慢さが、好きじゃなかった。


____________________



エレベーターホール__



だから、あの時…



夏目「あ…この香りか…」


柏木「え?香り?」


夏目「あ、いや…朔先輩が言ってたんですよ。柏木さんから、たまにラムネのような甘い香りがするって」


柏木「へぇ、石川さんが?」


夏目「俺は全然気づかなかったんですけど、先輩鼻がいいようで」


柏木「…いいのは鼻じゃないと思うけどな」


夏目「え?今、何か…?」


柏木「ううん。何でもないよ」


夏目「…?」


そう、彼がいいのは鼻ではない。

記憶だ。心に刻まれた記憶…。

石川朔という男は未だに、この香りを忘れていないのだと知った。


今もなお、この香りに反応するのだと…


朔「なに、密着してんの?」


睨みつけてくる反抗的な目つき。

その目つきが僕は心底気に入らない。


そう、あの時だって…



***



(過去の石川朔とのやりとりの回想)


朔「俺、やっぱり柏木さんのこと好きじゃねーわ」


柏木「うん、知ってる。僕も同じだから」


朔「……」



***



(お互い様だ。僕だって君の存在が目障りで仕方ない…)


柏木「夏目君の話、最後まで聞いてあげなよ」


朔「別に最後まで聞かなくてもわかんだろ」


(いや、君は何もわかってない…)


柏木「石川さんって、自分の感情次第で物事の答えを決めつけるんですね」


朔「は?」


柏木「難しい答えよりも簡単な答えの方に逃げるタイプだ」


朔「なんだと?」


柏木「僕なら、僕の感情は二の次で、最後まで大事な人の話なら聞いてあげるけどな。答えって最後まで確かめないと分からないことだって多いし」


朔「なに、説教してんの?」


(そうだよ、根性なし)


本当はそう言ってやりたいのをぐっと堪えていた。


____________________



柏木「ごめんね、夏目君。余計なことしちゃって。僕がちょっと大人気なかった;」


夏目「いえ、そんなこと!今のはどちらかと言えば先輩のほうが…」


夏目遥。


この子には頑張ってもらわないといけない。


僕と同じくらい…


そうじゃないと、僕たちの行き着く答えが変わってしまうから…


柏木「嫉妬だよ」


夏目「え?」


柏木「嫉妬したんだよ。だから、石川さんのこと、許してあげてね(ニコ)」


嫉妬したのは僕の方だ。

僕の方がずっと…君に嫉妬し続けている。


今この瞬間でさえも…


____________________




帰宅時__


先程まで降っていた雨が止んでいる。



”trrrrr”


”プッ”




???『もしもし、陽介おつかれー』


柏木「来週、契約決まったみたいだね」


???『何で知ってるの?あ、そっか。この会社が陽介の移転先なのか』


柏木「うん。うちの会社に来たら、紹介したい人たちがいるんだ」


???『なに?友達できたの?』


柏木「…友達というよりは

…ライバルかな?」


???『ライバル?wそりゃ楽しみだ』


柏木「うん。楽しみにしててよ」


決着をつけたい

僕が負けないことを君に見せつけたいから…


柏木「…負けないからね。絶対」


水溜まりの中の月に向かって、そう呟いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ