第一話
初恋は、たとえ全てを捧げても
叶わないものだと知ったのは
高校一年の初雪が降る寒い日だった。
もう、遠い過去のことだ…
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自宅__
朔 「……あっつ…」
渇いた喉を潤すため、ベッドから起き上がり冷蔵庫のミネラルウォーターを手にする。
ゴクッ、ゴクッ――
体は重く、昨日の仕事の疲れを引きずったままだ。それでも、日常は待ってはくれない。
ふと、冷蔵庫の中に入れてある空のラムネ瓶が目についた。
――誰かの声が頭の中をかすめる。
***
(回想・誰かの声) 『朔、ほらね?壊さなくてもビー玉取れただろ?』
***
朔 「いつまで、こんなの取ってんだよ」
俺は一人きりの部屋で自分に悪態をついた。
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会社__
夏目 「あ、おはようございます、朔先輩!」
朔 「……うす」
会社の後輩である夏目遥は何故かやたらと俺を慕ってくる。だが、その距離感は俺には少し鬱陶しく、わざと淡々と返事を返すようにしていた。
俺は必要以上に他人と関わりたくない。
それなのに…
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朔 「今日から俺がこいつの世話係?!」
課長 「まぁまぁ、そんなに睨むなよ。可愛い後輩じゃないか!」
朔 「…はぁ?!」
課長「君みたいな無愛想な人から直接学びたいなんて夏目君の熱意に私は心が動かされたよ」
朔「夏目ぇ…」
俺は少しバツの悪そうな夏目の顔を睨みつけた。
夏目「あ、いや…その…」
課長 「はいはい。そんな不機嫌にならないの!これだから、ゆとり世代は〜」
朔「あ、それ差別発言すよ」
課長「おっと、これは失言。それじゃあ、私は超がつくほど忙しいのであとは頼むよ!」
朔「逃げやがった…あの狸おやじ」
もう、こうなったら腹を括るしかない。
夏目「朔先輩、諦めるしかないですよ〜!」
朔「お前が言うなよ」
夏目「す、すいません…」
俺の勤める出版社は今右肩上がりの注目株で最近は仕事量も1人でこなすのはキツくなってきていた。だから、正直助手が付くのは悪くない。
(でも、よりにもよってこいつかよ…)
朔 「はぁ…仕方ない。時間だし行くか」
気乗りしないまま、俺は撮影の仕事へと向かう。夏目はそんな俺の背を忠犬のように追ってきた。
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退社後のBAR__
朔 「マジで最悪だった…」
強めの酒を一気に飲み干す。
精神的な疲弊が酒を飲むペースを上げていた。
(これから、あいつにチョロチョロ纏わりつかれる日々が続くのか…)
朔「………だる」
そんか俺の様子を見ていたのか、視界の片隅に女性の影が寄りついてくる。
だけど、心は一瞬も弾みはしない
俺の心臓は、あの日の初雪のように凍りついたまま――
あれから一度も、温もりを取り戻せていない。
女 「ねぇ、遊ばない?」
朔 「いーよ」
そして、今日もまた満たされないと分かっていながら見知らぬ女を抱く。
あの人を忘れらるようにと淡い期待を抱きながら――
そんな、愚かな夜は過ぎていった。




