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ストーカー竜娘と復讐鬼の王子様 〜今、あなたの後ろにいるの〜  作者: 逢月 悠希
第2章『黙した傷の在処、語らぬ想い』
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17.マスコミ禁止区域-2

 そして次の日。

 道中は全力で『幻貌(ファサード)』による認識阻害を駆使しつつ、ラザラスは放送局内の会議室に直行した。

 フードで万物を隠してはいたが、それでも人の目が痛すぎたのだ。


「おはようございます」


 逃げ込むように会議室に入ってきたラザラスの姿を見て、番組スタッフと思しき女性は目を丸くする。


「おは……っ、ようございます……カミーユ社長から聞いちゃいましたけど、すごいことになってますねぇ……」


 声が上ずっている。無理もない。

 現在のラザラスの顔は、本当に、酷い。


「はは……すみません……人がどこにいるかくらいは識別できてるので、気にしないで頂けたら……あー、でも、書類はちょっと読めなくて……一発で内容覚えるんで、後で読み上げお願いできたら……」


LIAN(リアン)さん、頭良いですもんね。大丈夫ですよ、それくらい協力します!」


 どうやらラザラスの認識はロゼッタ視点でなくとも“頭が良い”になるらしい。確かに「一発で内容を覚える」と言い切れるのは凄いことだとロゼッタは思う。


 ラザラスが番組スタッフの女性と話していると、ふいに後方のドアが開いた。


 賑やかそうな男性3人組だ——彼らは、先に入っていたラザラスの顔を一瞥する。


「おはよーございまー……うわああぁあ!?」


「どうし……わああぁああ!?」


「おわあああぁ!?」


……否、()()では済まなかった。

 5度見くらいはしていたように思う。当たり前だ。


 自分のせいで叫ばれてしまったと気づいたラザラスは、大慌てで彼らの元へと走る。


「も、申し訳ありません……! その、俺っ! お、一昨日、寝ぼけて壁に激突しまして……驚かせてすみません!!」


(ラズさん! 設定が違う! それ設定違う!!)


 叫ばれて動揺したのか、ラザラスは設定を間違えたうえに、『LIAN』のキャラまで崩壊させていた。


(打ち合わせだから、あのキャラじゃなくて良いのかな……? 

 そもそも、ラズさんがリアンさんだって分かってない可能性も……?)


 ロゼッタがそんなことを考えていると、入ってきて早々に叫ぶ羽目になってしまった男性陣は目をぱちぱちとさせている。そして、1人が口を開いた。


「……。さては君、普段は盛大にキャラ作ってんね?」


(やっぱりダメじゃん!)


 キャラについて指摘され、ラザラスは包帯とガーゼの下で視線を泳がせる。


「あっ、えっと……わ、私は……」


 ラザラスは慌ててリアンを演じようとしていたが、男性陣のひとりがへらへら笑いながらラザラスの肩をぽんぽんと叩き、中へと入っていく。


「うん、しんどいっしょ? それは辞めとこな。今日は打ち合わせだし、大丈夫大丈夫」


「う……」


 残りの2人も、ラザラスの肩を叩いてから中に入っていく。


「気にすんな~、ほら、ボクらも結構違うしさぁ? 実はこんなんなんだよねぇ」


「キミが自分らのこと知ってたら、違うって分かると思うんだけど。知ってる?」


「も、もちろん……そして、まあ、そうです……ね……」


 どうやらラザラスに合わせて素を晒してくれたらしい三人衆に背を向ける形で、ラザラスは少し肩を震わせている。


 一瞬泣いてるのかと思ったが、ただの羞恥だった。

 そして彼は、ロゼッタ以外には聞こえない微かな音量でぽつりと呟く。


「優しさが……っ、つらい……っ!」


(あー……)

 

 後に、ロゼッタは知る。

 ラザラスに優しい声掛けをしてくれた三人衆は『マスコミ禁止区域』という、俗に言う“お騒がせ系”のお笑い芸人らしい。


 お騒がせ系、というだけあって、失礼だったりキツかったり、とにかく突拍子もない言動が特徴的な3人組なのだが、側に言う()()()()()()だったらしく……。


「スタッフさん? ここの演出ってどうしたら良いっすか? ALIAのふたりって顔出さないっしょ? ワイプ出演っすかね?」


「あ、あ、あ、そ……そうですね……はい、その認識で合ってます……」


「慣れて下さいって! 俺ら、本当はこんな感じなんっすよ! 番組中はちゃんとキャラ作るんで!」


 どうやら、相当に普段とキャラ(芸風)が違うらしい……番組スタッフが、可哀想なほどに、全力で困惑している——。


 マスコミ禁止区域の1人がスタッフを(変な意味で)困らせている間に、他の2人がラザラスに絡みにきた。


「あ、リアンくん? キミらの出番ね、開始30分後のタイミングだよ。ボクらが頑張ってふざけるから、その後に出てくる感じになるねぇ」


「は、はい……」


「大事なのは2ページの3行目からかな? 後でJULIA(ユリア)ちゃんとも話しといてね? 今回は彼女の新曲披露がメインだからね、いやー……キミも大変だね。

 伝書鳩的なノリで今日来たんでしょ? ホントおつかれ、帰ったらゆっくり休むんだよ?」


——冗談抜きで、『普段とはまるで違う』のだろう。


 彼らの「打ち合わせだから大丈夫」という話も本当なのだろうが、全ては、顔面が事故っているせいか、芸歴が浅すぎるせいか、とにかくいきなりキャラを崩壊させたラザラスのためだということは、この場に集う誰もが理解していた。

 

(や、優しいなぁ……うん、優しい……)


 ロゼッタは、思う。

 本来のリアンは割と白い目で見られてしまうタイプの立ち位置にある。

 つまり、放送局内で暖かくされることにあまり慣れていない筈なのだ。元のALIAが大人気だったからこそ、悪意に晒されることも多いのではないか、とも思う。


 先程、ラザラスが漏らした言葉から察するに——今、ラザラスは慣れていなさすぎる環境に放り込まれ、かなりいたたまれない気持ちになっているに違いない。


(がんばれー……がんばれー……)


 変な意味で疲れてきているラザラスを、ロゼッタは影の中から全力で応援する……今回ばかりは当たり前だが、彼女には応援することしかできなかった。

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