蒼淵と業火
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男たちを倒した湊は、凛の手を引いてその場を離れた。混乱と興奮、そして恐怖で頭の中はぐちゃぐちゃだったが、とにかくここから逃げなければならないという本能的な危機感が彼を突き動かしていた。
「な、なにあれ、……映画の撮影?」凛が震えた声で尋ねる。
「わからない……けど、ここにいたら危ない。とにかく走って」
二人は人気のない公園まで逃げ込み、息を整えた。湊は自分の掌を見つめた。何の変化もない。普通の、学生の手だ。だが、確かにこの手で水を操った。
「あの人たち、あなたを狙ってったのよね。」凛が言った「どうして?」
「分からない……何もしてないはず」
その時公園の入り口に一台の黒塗りのセダンが静かに横付けされていた。湊は身構えたがセダンから降りてきた人はスマートなスーツを着た穏やかな雰囲気な男性だった。年齢は二十代半ばだろうか。
「天宮湊くん、桜庭凛さん。怪我は?」男性は柔らかな雰囲気で尋ねた。
「あんた、誰だ?」湊は警戒を解かない。
「私は月島蓮。君たちを保護しに来た」月島がゆっくりと歩み寄る「先ほどの男たちは君たちを狙う『業火』という組織の人間だ。彼らはこちらより早く君のあり方を突き止めたようだ」
「業火……?」
「話は長くなる。まずは安全な場所に移動しようと。君の能力のことも含めて、すべて説明する」
月島の言葉には妙な説得力があった。湊は凛と顔を見合わせ、頷いた。他に選択肢はなかった。
セダンの後部座席に座ると月島は話始めた。
「この世界には、ごく一部だが、古代から受け継がれてきた『異能』を持つ者たちが存在する。その中でも水を操る我々の組織を『蒼淵』、火を操り、対立する組織を業火と呼んでる」
「じゃあ、さっきの男たちは火の能力者?」
そうだ。そして湊くん君は我々『蒼淵』の中でも特別な、伝説的な血筋『海神』の継承者だ。君の能力『水の記憶』は全てを内包し再現する可能性を秘めている。」
「水の記憶……?」
「君が今日使ったらのは周囲の水を集めて固めるだけだが、本当はもっと複雑だ。一度触れた水の性質、温度、流れ、果てはそこに宿る微量な残留思念まで記憶し、再現できる。応用次第では最強にもなり得る。」
月島は淡々と説明する。湊は自分が世界の裏側の抗争の中心に放り込まれてしまったこを実感した。
「じゃあ、凛は?凛は関係ないだろ?」
桜庭さんは……残念ながら、君に近づくための餌としてねらわれた。だが、彼女自身に能力はない。巻き込んでしまってすまない」
凛は青ざめていたが、湊の隣でしっかりと座っていた。
「俺は、これからどうなるんだ」
「まずは我々のセーフハウスへ。そこで、君は蒼淵の能力者として、自分の能力n使い方を学ぶんだ。訓練をする」
「訓練……俺が人を殺すための訓練を?」
「違う」月島はきっぱりといった「大切な人を守るための術を身に着けるんだ。業火は容赦しない。君の血筋を狙って何度でも襲ってくるだろう」
湊は黙り込んだ。平凡だった日常はもう戻ってこない。メロンソーダを飲みあって笑いあったあの時間は過去のものとなった。
「……分かった」湊は決意を固めた。「やるよ、凛を守るためにも」
セダンは高速道路に入り見慣れない風景の中を走っていく。
「ようこそ蒼淵へ」月島は静かに言った




