過去
衛兵に二人してつまみ出されたあと。
「貴様らは魔術士隊長である甲概様に無礼を働いた。よって、この拠点地に二度と入ることを禁じる!」
外にも聞こえるほどの声でそう言い渡され、おれはがっくりと肩を落とした。
「すみません…王導さん…おれのせいで」
「いや、いいんだ興童。むしろすっきりした。私は、あいつがどれだけ間違っていることをしていても指摘できない人間だからな…」
王導の横顔が後悔に曇ったのを見て、なんとか元気付けようと口を開く。
「でも!おれがすごい魔術士になれば済む話ですから!」
車に乗って、王導がエンジンをかけると、独特な匂いを乗せながら冷房が微風を送る。
夏の暑さが、じりじりとアスファルトを照りつける。
「そうは言ってもな、お前はすでに魔術学校の試験で落ちている。魔術大学校に行くまでもなく、お前の魔法は魔術足りえなかったと、その結果が証明しているんだ」
興童の過去を覚えていない、知らないおれは、疑問を返す。
「じゃあ、魔術学校の試験に落ちたら各職の専門学校に行くんでしたよね?おれもそこに行ったのでは?」
王導は視線を落とすと、唇を血が出るほどに噛み締めた。
深い後悔の念を湛えているのは、おれから見てもわかることだった。
聞いてはいけないことを聞いてしまったのか。そう思うとばつが悪くなり、おれも視線を彷徨わせる。
王導が口を開いたのは、沈黙の時間が1分を超えた頃だった。
「専門学校に通い始めた頃だ。お前が喪服に付け狙われ始めたのは…。」
喪服という言葉の意味もわからぬおれに、王導は焦ったように言葉を続ける。
「学校に通う最中のお前に、喪服が凶刃を突きつけた。お前は持ち前の身体能力で急所を避けたが、腕に切り傷がついた…それが5年前。お前が12の頃だ。喪服の下っ端は見境なく人を狙うと聞くから、そのときはお前が狙われたのは偶然だと思ったんだ…その時は。」
王導が口元を歪ませる。口にするまでもなく、彼が深い後悔と憎悪を抱いているのはわかることだった。
「その時は…?」
「ああ。おかしいと思ったのは、お前が15の時。喪服が2度目の襲撃を仕掛けた時だった。それ以来、私はお前の護衛役を雇ったものの、襲撃の頻度は急激に増えた。私はお前の安全のため、専門学校を辞めさせ、家にいることを強要したが、お前はある日いなくなった。それが今日から1週間前。その日、お前は多数の襲撃犯からの攻撃を避けられず、腹に深傷を負った。死の淵を彷徨って目覚めてみれば…お前は記憶喪失になっていた、というわけだ。」
王導は自分の膝を殴ると、こちらに顔を向けた。
「お前は今、人生のレールを外された状況にある。専門学校を卒業しなければ職には就けないからな。どれもこれも、お前が最初に襲われた時、偶然だと考え込んだ私の甘さが原因なんだ…すまない…!」
王導は深く頭を下げる。その瞳は、暗く沈んでいて、もはや涙も出ない、と言った具合だった。
おれは、そんな王導に不敵に笑いかける。
「人生のスタートは、何歳からでも遅くありませんよ。おれはこれからなんとしてでも魔術士になります!」
「しかし…お前は魔術試験に落ちて…」
「今のおれだったらどうなるか、誰もわからないでしょう?これから魔術を鍛えていけばいいんです!それに、王導さんはおれに魔術士になってほしいと思ってる。そうでしょう?」
王導の眉間の皺が薄くなる。瞼を閉じて、ふと思案して、ため息をついた。
「お前にはお見通しだな…そうだ。私はお前に魔術士になってほしい。私の分までも。…そうだな、大丈夫だ。私のコネクションを最大限に駆使すれば、まだ道はある。」
王導は細い目を見開いて、声を出す。
「行こう、合同魔術試験へ!」




