表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
刀傷の少年  作者:
8/11

ほんとうのはじまり

おれから父と呼ばれたことによって涙を溜めていた王導が、やっと落ち着いたのか立ち上がると、甲概は相変わらず笑顔を向けながらそちらを向いた。

「それで、何の用でここに来たんだい?」

おれが一歩、後ずさる。

なぜなら、その甲概の問いには、笑顔の裏にひどい威圧感が見え隠れしていたからだ。

甲概は垂れ目で、困り眉。王導と年は変わらないだろうが、若々しい顔の作りをしており、笑顔を作るとえくぼができる。人に好かれそうな顔だ。

そんな完璧なはずの笑顔に、吹き荒ぶ台風のような凄味を感じた。ゆえに、おれは怖くなった。

王導は怯えもせず、こう答える。

「魔術士の育成について、文句を言いに来たんだ」

「へえ?珍しいねぇ。ずっと上からの命令にはイエスマンだった君が。言ってみなよ、その意見」

「魔術大学校での魔術試験に受かった者に、『魔術士にならない』という選択肢を与えていただきたい」

ぴり…と電撃のように研ぎ澄まされた気配が頬を掠める。空気は張り詰めている。

その中で、甲概はずっと貼り付けていた笑みを消した。

「つまり君は…『魔術士を希望制の職業にしろ』と言いたいわけだね?」

「そういうことだ」

甲概は無表情で王導を一瞥すると、こちらに鋭い視線を向ける。

「王導くんがこんな世迷言を言うとは思えない…興童くんの発言だね?これは」

「はい」

ずいぶん、想定よりも大ごとになった気がするが、ここで臆して退いてはいけない気がした。

「いいかい。世間知らずの君に、教えてあげよう。魔術大学校の試験の合格率がどれだけか知っているかな?1.7%だ。試験の合格率の低下と、優秀な魔術士の殉職により、魔術士の数はどんどん減っている。そこで魔術士を希望制にしてしまったら、どうなると思う?魔術士の数はさらに低下、そうなれば君たちが"喪服"に襲われて死ぬ可能性も限りなく高くなるだろう。魔術士は諸外国への警戒や治安維持だけではなく、"喪服"への対抗も業務内だからね。」

「でも、殉職するほど大変な職業なら、選択肢を与えてもー」

「だから、本末転倒だと言っているだろう?魔術士の数が少なくなれば、守れる人間の数も少なくなる。その場合、殉職による犠牲よりも一般人の犠牲が多く出るだろうね。」

「それでも…!」

「そんなに言うなら、君が魔術士になったらどうだい?この世の理不尽の全てから、皆を守ってみるといい。君がそんな魔術士になれば、オレも君の意見を認めてあげよう。…だが、なれるわけがない。だって君は…出来損ないの王導の息子なのだから!」

威圧魔法によって、おれたちは5メートル範囲外に吹き飛ばされる。その魔法には、なす術もなかった。

だけど、おれは、見るに耐えない着地をしたあと、擦りむいた膝を払いながら立ち上がり、威圧魔法の吹き荒れる範囲内に近づいていく。

王導は、そんなおれを信じられないとでもいうように、まるで奇跡を見たかのように目を見開く。

威圧魔法の範囲内に入った。今度は、全身に精一杯の力を込める。すると、おれの身体中から力が溢れた気分になって、甲概に一歩、もう一歩と近づく。

甲概は冷や汗をかきながらも、自嘲の滲んだ無表情を崩さない。

甲概に手を伸ばせば触れる距離になったとき、ようやくおれは口を開いた。

「なってやるさ…!全てを守れる、魔術士に!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ