表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
刀傷の少年  作者:
1/11

はじまり

腹が、熱い。

燃えるような痛みはやがて鈍くなり、痺れる手先の感覚すら薄れていく。

熱源の臍の上からはどくどくと音を立てるように血が溢れ出し、止める術を知らない。

朦朧とする意識の中で、めくるめく記憶が廻る。

17年分の命を詰め込んだおれの走馬灯は随分つまらないものだ。そう思った。



小鳥が、窓の向こうで鳴いている。

腹の痛みをぼんやりと感じながら、体を起こす。

引き攣るように目を開けると、目の前にいた知らない人が、大声を出した。

「興童様が起き上がったぞ!」

きょうどう、さま?知らない名前だ。そんな人は身内にいないし、おれの名前ももちろん違う。おれの名前はー

おれの、名前は。

嘘だ。思い出せない。思い出すことを体が拒んでいる。おれには、たしかに名前があったはずなのに。

自分の意思と相反する体を見てみると、腹には包帯、臍の上に血染みの跡、そして、白雪ように白い肌。

腹の傷には見覚えがある。意識を失う前、凶悪犯から逃げきれずつけられた傷だ。だがこの真っ白な肌はどうだ。おれはこんなに色白だったか?

ふと、柔らかい掛け布団の下でもぞもぞと影が動いた。

おそるおそる布団を捲ると、ふてぶてしそうな猫がゴロゴロと目を細めていた。

猫のオッドアイをつい覗き込むと、その瞳におれの姿がうつる。

白髪に白い肌。顔立ちこそは目覚める前と変わっていないが、決定的な相違点がひとつ。

思い出す限りのおれが持っていた白目と黒目は、反転していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ