不思議な光と力の覚醒
夜が明けた森は、昨夜の恐怖が嘘のように、光に満ちていた。結衣は、乾いた喉を潤すために、せせらぎを探して歩いた。その道中、彼女は倒れている一匹の狼を見つける。その狼は、腹部に大きな傷を負い、浅い息を繰り返していた。
「ひっ……!」
結衣は思わず後ずさりした。しかし、弱り切った狼の瞳は、まるで助けを求めるかのように、結衣を見つめていた。その瞳に、かつて自分が助けた子猫の姿が重なる。結衣は、もう一度、他者を放っておけないという自分の性分に従うことを決めた。
「大丈夫だよ……」
震える手で、狼の傷口にそっと触れる。その瞬間、手のひらから、温かく、淡い緑色の光が溢れ出した。光は、狼の傷を優しく包み込み、まるで魔法のように傷口はみるみるうちに塞がっていく。狼は、驚いたように結衣を見つめ、感謝するように彼女の手に顔をこすりつけてから、森の奥へと消えていった。
「やっぱり、これは…」
結衣は、自分の手のひらを見つめた。あの時、子鹿を治した時と同じ、温かい感覚。これは、夢ではない。自分には、この世界で生き抜くための、特別な力が与えられたのだ。彼女は、この力を利用して、食べられる植物や、怪我をした動物を助け、少しずつ森での生活に慣れていった。