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LINE  作者: 時演
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Episode2 -9-

 ―日曜日―


 翌日の夕方過ぎ、池上と愁は警視庁へと戻ってきた。野口恵の事件の捜査は行き詰っていた。愛田悟も、S・Aも、犯人も、誰1人見付からない。その欠片さえ、警察は追えずにいた。

「煙じゃあるまいし」池上は苛立ちを隠す事もなく、幾度となく呟いていた。「どうして何も捕まらないの」

 2人は一係の部屋まで階段で上がり、廊下へと出た。長い廊下には数名の捜査官達が浮かない表情で歩いている。今日は日曜日だ。世間は休日で浮かれているのに、警視庁は静まり返っている。

「丁度良いところに来たな」二係の部屋から吉沢が出て来て、二人を見て駆け寄った。「池上、浜野を借りても良いか?」

「はい?」

「プロファイルしてもらった事件の容疑者があがった。今、任意で事情聴取してるんだ」

 池上は心底疲れきった表情で、ひらひらと手を振った。「どうぞ。林さん達には私から言っておきます」彼女は若干ふら付いた足取りで一係の部屋の中へと消えた。

「宜しくな」吉沢は池上の後姿に向かってそう言うと、階段へと続くドアを開けた。

「何の事件です?」

「笹木充さんのだ」吉沢は淡々とした口調でそう言い、すごい音を立てながら階段を駆け下りて行く。

愁は慌てて、彼の後を追う。「何時、捕まったんですか?」

「さっき着いたばっかりだ」

「何人です?」

「3人」吉沢はそう言い残して、廊下に飛び出して行く。

 愁が廊下に出ると、加藤とマッドがそれぞれ鑑識キッドを持ち、吉沢と取調室の前に立っていた。吉沢は取調室1と2の間のドアを開け、先に加藤を通した。愁はマッドの後から部屋へと入った。

 部屋の中からマジックミラー越しに見える、取調室1と2にはそれぞれ若い男と捜査官がデスクを挟んで座っていた。捜査官の顔は苛立ちに歪んでいる。その表情から、取調べが難航している様子が窺えた。

「おちょくってる」吉沢は取調室1の男を指した。「特にコイツが。こっちの奴ものらりくらり交わしてる」2の部屋にいる、薄ら笑いを浮かべた男を指差す。「もう1人の奴はひたすら『お母さんを呼んで下さい。お母さんと一緒じゃないと何も話しません』って言い続けてる」

「阿呆が」加藤が吐き捨てる様に言った。

「何故、彼は制服なんです?」愁は1の部屋にいる男に視線を向けた。彼は制服姿で、2の男は私服だった。2人の服装は乱れてはいない。制服はきちんとボタンがしめられていた。私服の男もジーンズにジャケット、中に白いタートルネックのセーターを着ていた。髪の毛も黒く、自然のままになっている。いわゆる不良ではなく、真面目な学生といった雰囲気をしていた。

 吉沢は1の部屋にいる男を顎で指した。「今日は高校で何かイベントがあったみたいだ」

「それは幸運ですね」愁はぼそっと呟いた。

「幸運?どういう意味だ?」吉沢は眉を寄せる。

 マッドが取調室1の部屋の男の足元を指差した。「革靴履いてる。多分、犯行時のまんまじゃないのかな?きっと制服もね」

「洗ったところで血は落ちねぇからな。奴等の家に取りに行く手間が省けたな」加藤が腕を組み、厳しい表情を浮かべる。

 吉沢は小さく頷いた。「1の男は18歳、2の男は19歳、もう1人は15歳の高校生だった。3人は家も近所で、頭も良い。19歳の男は何と俺の大学の後輩だ」彼は心底嫌な表情を浮かべた。「問題はどうやって落とすかだな」吉沢は愁を見、マッドを見た。勿論2係の捜査員は優秀だ、吉沢はそれを疑った事はない。彼にとって一係も二係も同じ様に頼れる良い部下達だ。

「では、15歳の子からいきましょう。お母さん、を頼っているのですから、是非とも来て頂き同席してもらいましょう」愁はにっこりと微笑んだ。

確かに、と吉沢は思う。彼が一番脅しをかければ落ちそうではあった。常にソワソワして落ち着かず、捜査員が話しかけると世間話でさえビクビクとしている。2人は比較的落ち着いていたが、15歳の子の方は今にも泣き出しそうだった。だが、何故母親をわざわざ呼ぶ?「それで、どうする?」

「母親の前で笹木充さんの写真を見せて下さい。出来れば生前の写真と遺棄した時の写真が良いかと思います。そして『彼を殺したのは誰か?』と2人に聞いて下さい。その子は常に誰かに依存して生きていくタイプの子なのだと思います。家では母親に、外ではこの2人に、と言った具合に。母親の前で自分が殺害した笹木さんの写真を見せられれば動揺を隠しきれないでしょうから、何かしら話し出すと思います」

「母親が否定したら?」うちの子がそんな事をするはずがない、警察の陰謀だ、と叫んだ親が過去に何百人いた事か、と吉沢は思う。

「いいえ。自分が殺害した、ではなく、悪魔でもあの2人が殺害した、と話すと思います。責任は母親やあの2人であって、自分には責任がないと考えているのだと思います。その為に誰かに依存しているのでしょう」責任を擦り付ける為に、自分がヘマをする人間だと思わない為に。今、こんな場所に連れられて来て、恐怖を感じても、なお話さないで母親を待っているのは、その為だ。責任を押し付けられる誰かがいなければ、何も出来ない。

「昔、親に言われたな。『皆がやるからお前もやるのか』って」吉沢が愁を見て、ひきつった笑いを浮かべた。

「15歳の子はきっと言われた事がないのでしょうね」愁は1の部屋にいる男を指差した。「こちらの男が主犯でしょう。実質、主導権を握っているのは、と言う意味ですが。彼の方がひどく落ち着いている様に見えますから」

「ちっ」加藤は思わず舌打ちする。この場においても落ち着き払ってる高校生なんて、とんでもねぇ奴だ。大の大人だって大抵はびくつく。こいつ等は将来、どんな人間になるのだろうか。少年院に入ったところで、そう簡単にこの手のタイプの人間が更生するとは思えない。裁判員制度が始まり、少年法が変わり、刑は以前より随分重いとは言え未成年の刑期はやはり短い。否、刑期は長くても、早く出所する可能性は高い。未成年の場合更生の余地があるから短いのだが、その時間だけでは更生しきれていないと思える。罪を償うのと更生するのは全く別物だ。無論、きちんと罪を償い、更生していく奴もいる。だが、鑑識をやっていて分かった事がある、罪を償い、ここにまた戻ってくる奴の多さを。

「じゃ、まず彼等2人は指紋かな」マッドは加藤に人懐っこい笑顔を見せ、自分のキッドを持った。「僕、1の子ね。信さんは2の子お願いね」

 それは助かる、加藤は内心そう呟いて、頷いた。





                         *





 未解決事件がぎっしりと詰まった本棚のガラス戸を開け、愁は一冊のファイルを抜き取った。デスクの端にファイルを置き、反対側のガラス戸を開ける。そこからファイルを二冊抜き、デスクに置く。ガラス戸を閉め、隣の本棚のガラス戸を開け、今度は三冊のファイルを取り出す。反対側からは二冊。デスクの上には八冊のファイルが積み上げられている。

 愁は椅子にドサッと腰を下ろした。デスクの上に置いた煙草を1本咥え、火を点ける。溜め息と同時に煙を吐き出し、愁は一番上に置いたファイルを手に取った。

 20代後半から30代前半の男性、前科なし。ただし、人を殺害したのは始めてではないと思われる。学歴は中卒、及び中退。IQは非常に高い。仕事はしているが、比較的時間の自由になる職種。人当たりがよく、話上手。未婚であるが、パートナーはいる。幼少期に身体的及び性的虐待を受けている。

 プロファイルに該当する人物が、過去に犯したと思われる事件。愁がピックアップしたのは八冊だが、これが全て同一人物とは考えてはいない。

 愁が選んだのは、犯人のIQがずば抜けて高い、と思われる事件のファイルだった。被害者は男女、年齢、容姿、生活環境、はバラバラ。殺害方法もまたバラバラだった。また、犯人に繋がる様な証拠はほぼ残っていない。そして秩序型。

 まるでサム・ウォールの様だ。遺体を隠したり、放置したり、ナイフで刺し、銃で撃ち、鈍器で殴り、首を締め、まるで警察をあざ笑うかの様に次々と人を殺害して行く。被害者は若い女性であったり、売春婦であったり、ハイカーのカップルだったり、少年や青年、中には中年男性が混じっていた。被害者、17人に共通する接点が未だにはっきりとしない。サムは無秩序型の犯人ではない。何かに執り付かれて、無秩序に殺害を繰り返すタイプの犯人ではないのだ。

『俺が殺した奴等がたった17人だと思うか?』サムは優しげな口調で、嬉しげな笑みを浮かべて、刑務所という単調な毎日の暇つぶしであろうゲームを始めた。ロバートと愁を相手に、永遠のゲームを。

 一冊目のファイルをデスクの上に投げ出し、愁は二冊目のファイルに手を伸ばした。途端、デスクの上に置いた携帯がガタガタと音を立てる。愁はファイルに伸ばした手を、そのまま携帯へ伸ばした。携帯を見て、溜め息を付く。藤沢冷子。「もしもし?」

「私よ。今、何処?」

「オフィスにいます」

「そう」冷子はふぅと溜め息を付き、淡々とした口調で言った。「今から来てくれる?」

「了解」愁は立ち上がり、「では」と言って携帯を切った。スーツの中へ携帯を入れ、こめかみを揉んだ。小さな溜め息を付き、愁は部屋を出た。

 愁は重い足取りで総監室へと向かった。冷子の口調から、何かがあったのだと推測するには十分だった。今度は何だ?

 総監室のドアを叩き、愁はネクタイをきゅっと締めなおした。

「入って」その声は何時になく重い。

 ドアを開け、愁は頭を下げた。「失礼します」中へと入り、ドアを閉める。冷子の方へ向くと、彼女は窓際に立ったまま、暗くなった外を見ていた。

 冷子はダークグレーのツーピーススーツを着て、髪を無造作に一つにまとめている。その彼女の後姿は何処か悲しげだったが、怒りにも燃えていた。冷子は窓の外を見たまま、淡々とした口調で言った。「笹木充さんの事件、解決したのね」

「はい」

「高校生と大学生が犯人ですって?」

 愁は彼女が見ている窓の外に、視線を投げた。外は暗く、ビルの明かりだけが浮きだって見える。「えぇ、15歳、18歳、19歳だそうですよ。マスコミが群がっています」

 冷子は窓の外の下にちらりと視線を落とした。「だから、賑やかだったのね。純粋なはずの子供が犯す事件は何度起きても衝撃的だものね」この部屋から外の音は聞こえないが階下に行った時やけに賑やかだった、と冷子は思い出した。どんな事件でも犯人が捕まればマスコミは来る。だが、少年犯罪や大量殺人、連続殺人等のセンセーショナルな、発行部数を伸ばしそうなものは一際騒ぎ立てる。冷子はマスコミ担当とまで揶揄されているが―幹部達にだが―、全ての事件に対応している訳ではない。華やかな会見を開く時、それは上を目指す者が仕切りたがる事が多い。「ギャルママ殺人事件は?」

「ギャルママ?」

 冷子は振り返ると、力無く微笑んだ。「野口恵さんの事件をマスコミがそう言ってるわ」

「そうですか。残念ながらまだ犯人の尻尾さえ掴めていません」

 彼女は身体中から搾り出すかの様に、深い溜め息を落とした。「今日、会議があった」

「はい」

 冷子は窓に寄り掛かると、淡々とした口調で言った。「私の直属の部下である、あなた達が槍玉にあがってるわ」

 要はあなたが責められている訳ですね、と愁は解釈した。違う国の違う組織所属である愁やマッドを能なしだと責めたところで、それが漏れた時に立場が悪くなるのは幹部達の方だ。特に日本とアメリカの関係を見れば、外交問題にさえなりそうだ。幹部達が気に入らないのは2人ではなく、悪魔で冷子自身だろう。彼女とて、それくらいは身に染みている。だが、冷子をそう簡単に警視総監からは降ろせない。彼女が着任してからの検挙率の良さや、マスコミ受けの良さを考えれば、何も汚点がない状態で降ろす事は出来ない。権力を握りたい幹部達はジレンマに陥っているのだろう、だから何かを見つけては責め立てる。

「一つの案が出たの。有得ない案よ」彼女は視線を窓の外に向けたまま、呟く様に言った。「事件が一定期間解決出来なければ他の係に回す。現場を無視した意見だわ」

「一定期間とは?」

「まだ分からないわ。でもコールドケースになる前よ。きっと月単位で考えているはずよ」

「それが野口恵さんの事件なのですか?」愁の脳裏に浮かんだのは池上が激怒する顔だった。

「えぇ。それとマッドが抱えている強盗殺人事件、通り魔事件」

 愁は視線を合わそうとしない、冷子の横顔を見つめた。「マッドの方は知りませんが、野口さんの事件が難航しているのは確かです。ですが、何処に回してもこの事件は難航します」

 冷子はゆっくりと視線を愁に向けた。「どう言う意味?」

「マッドと井上さんが追ってもなかなか尻尾を出さなかった犯人ですよ?」冷子はこの事件も、マッドが現在進行形で抱えている事件二つも、2人から逐一報告を受けている。だから殆どの内容は既に知っていた。

 冷子は肩をすくめた。「そうだったわね。で、どうするの?」

「一都四県以外の未解決事件のファイルが欲しいのですが」

「山の様に来るわよ?」

「無論、全てではありません」

 冷子はふぅと息をついて、デスクに戻った。デスクの上に転がしてある煙草に手を伸ばし、淡々とした口調で言う。「何処の警察にも優秀なプロファイラーがいる訳じゃないわよ。どうやってよりわけするつもり?」

「大都市と言われる土地で、過去15年から20年の間、証拠を一切残さず、目撃情報もなし、あるとすれば185センチでモデル風の容姿。秩序型」

 煙草の煙を吐き出し、冷子は座り心地だけは良い椅子に腰を下ろした。「やだ、それだけ?何百ってくるわよ?」

「構いません。マッドと2人でより分けますから」

「マッド?彼、プロファイルまで出来るの?」冷子は柳眉を寄せる。

「その辺の新入りプロファイラ―よりは出来ますね。マッドはプロファイラ―の息子ですし」愁は出会った当初、マッドはロバートの跡を継いでプロファイラ―になるのだと思っていた。マッドはプロファイラ―であるロバートを尊敬していたし、誇りに思っていると口癖の様に言っていた。だが、マッドはその頃からすでに科学オタクだった。ロバ―トはマッドに捜査をやらせるつもりはなかったらしく、息子は研究室か少なくとも科学捜査に行った方が世の為だと思っていた様だ。しばらくするとロバートは愁をスカウトする様になった。そのきっかけが何だったのか、そしてロバートの口説き文句が何だったのか、愁は幾ら思いだそうとしても思い出せない。何年も口説かれたのに。

「マッドに出来ない事ってある訳?お願い、あるって言って頂戴」じゃないと自分が無能だと言われている様だ、と冷子は思う。科学捜査にプロファイル、どちらもちんぷんかんぷんではないものの、やれるかと言われれば出来ない。その上マッドは料理もプロ並み、他の家事も完ぺきにこなすと聞いた。それに引き換え、自分は料理も家事も一切出来ない。出来るのは仕事だけ。

「結婚生活の維持ですかね」いたずらっぽい笑みを浮かべ、愁は何時もの穏やかな口調で続ける。「学生時代に結婚したんですが、半年で離婚しましたから」

 冷子はニッと笑った。「それ、初耳だわ」





                       *





 部屋の明かりを点け、愁は手紙の束をデスクの上へ投げた。コートとスーツのジャケットを一緒に脱ぎ、ベットの上に放る。ベットの上に腰を下ろし、愁は深く長い溜め息を付いた。

 日本での住まいはマッドに言わせれば、『悲惨さが滲み出ている』ものだった。確かにアメリカの部屋はもう少しマシだったと、自分でも思う。

 ベット、デスクに椅子、ノートパソコン、備え付けの電子レンジと冷蔵庫とエアコン、クローゼットの中にダンボールに入れたままの洋服、かろうじて出してあるスーツ類は中にかけてある。デスクの横には本が、やはりダンボールに入ったまま置いてある。それでも開いているだけマシで、玄関近くにはまだ封すら開けていないダンボール箱が積み重ねられていた。

 キッチンはあるが、使用した事はない。やかんもなければ、コップすらない。否、あるが箱の中に入れっ放しのままだ。どうしてもまともな物が食べたい時は外へ出るか、最悪となりのマッドの部屋へ行く。

 ネクタイを解き、コートの上へ投げ、愁はワイシャツの胸ポケットから煙草とライターを取り出した。煙草を抜き、火を点け、箱とライターをデスクの上へ置く。その手に触れて、手紙の束から紙がヒラヒラと舞い落ちた。愁はその落ちた紙を取り、呟く。「ガス」基本料のみ。

 愁は立ち上がると、椅子に腰を下ろした。ここ数日、家には帰っていたが、ポストを覗くのを忘れていた。今日久しぶりに開けたら手紙や請求書、ちらしが山の様に入っていた。

 ちらしと光熱費の請求書を選り分け、愁は手紙を一つ手に取った。クリスマスのシンボルカラーである緑と赤で縁取られた封筒。差し出し人の名前は両親だった。

 愁はちらっと時計に視線を落とす。12月24日。PM20:25

 そう言えば街はカップルだらけだったな、と愁は思いだした。両親からの手紙をノートパソコンの上に置いて、愁は手紙の中から目的の字を探す。手紙は大概がアメリカの友人からだった。その殆どがクリスマスカードだろう。それぞれ封筒にはクリスマスを思わせる絵柄が描かれていた。ジェイの殴り書きの様な文字も、ロバートの見慣れた文字も、次々とパソコンの上に置いていく。その中から癖のある日本語で書かれた、井上の字を見つけて、愁は思わず苦笑する。だが、それもパソコンの上に置いた。

 真っ白な封筒、求めていた、美しい文字。筆跡鑑定士がこの字を見たら、何と鑑定するのだろうと愁は思う。

 愁は丁寧にレターオープナーで封を開けた。同じ真っ白なカード。レースの十字架が神秘的に描かれ、氷の結晶が所々に描かれていた。

 封筒の中に何かが入っているのに気が付き、愁は中を覗いた。レースペーパーに包まれ、リボンのシールが止めてある小さな包み。そっと慎重にシールを取り、紙を開けると、アクリル樹脂で作られた十字の付いたストラップが入っていた。こんなもの、何処で買ったんだろう、と愁は思った。アメリカではストラップを付けている者は殆どいない。売っている場所もさほどある訳じゃない。尤も愁も付けておらず、マッドは常に2、3個のストラップを付けている。

 左の手でストラップをそっと包んで、愁はカードを開いた。





Episode2  ・・・END・・・


秩序型と無秩序型・・・簡単に、ですが、

             秩序型は犯行を計画し、被害者を誘いこむだけの高い知能がある等々。

             無秩序型は被害者を気まぐれに選び、人格には関心を示さない等々。

             混合型も存在する。

             ロバート・K・レスラー/トム・シャットマン(早川書房)

             『FBI心理分析官 ~異常殺人者たちの素顔に迫る衝撃の手記~』

             (ロバートの名前は無意識化で拝借していた様です。最近気が付きました。恐ろしや)




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