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第42話:新たな陰謀と予兆

イザベラ・アーデンが転校してきてから数日が経った。その美しい外見と王族の血筋を持つ彼女は、学校の中でもすぐに注目の的となり、多くの生徒たちから親しくされていた。しかし、どこか不穏な雰囲気を漂わせる彼女に、弘彌は次第に疑念を抱くようになった。


「どうした、弘彌。なんだか最近、元気ないじゃないか?」


昼休み、千夏が心配そうに声をかけてきた。弘彌は軽く肩をすくめて答える。


「まあな、少し考えることが多くてな。」


「イザベラのことか?」


「それもあるが、他にも気になることがあってな。」


弘彌は目を細めながら、イザベラの存在について考えていた。彼女が転校してきた理由、その真意がまだ見えてこない。確かに彼女は優雅で聡明で、何の問題もなく学校生活を送っているように見える。しかし、どこか不安定な影があるような気がしてならなかった。


その日の放課後、弘彌は一人で校内を歩いていた。イザベラもまた、放課後は校内を歩くことが多く、時々目が合うこともあった。だが、彼女の瞳の中には、確かに誰にも見せない「何か」が隠れている気がして、弘彌はその感覚を払拭できなかった。


「……どうした、弘彌?」


後ろから声をかけられ、振り返ると、イザベラが立っていた。彼女は微笑んでいるが、その微笑みにはどこか謎めいたものがあった。


「いや、何でもない。」


「ふふ、そう? でも、もし何か気になることがあれば、私に話してもいいわよ。」


弘彌はその言葉に少し驚いた。彼女は、確かに王族の姫としての立場を持ちながら、こうして気さくに話しかけてくる。それがまた、何か裏を感じさせるのだ。


「……ありがとう、イザベラ。でも、今は少し考え事をしていただけだ。」


「そう。無理に話す必要はないわ。でも、覚えておいて。あなたが必要なとき、私はいつでもあなたの味方よ。」


その言葉に、弘彌は少しだけ胸をざわつかせた。彼女の目は真剣そのもので、まるで彼の心の中を見透かしているかのように思えた。


その後、イザベラは微笑みながら立ち去り、弘彌はしばらくその場に立ち尽くしていた。彼女の言葉が気になった。味方、とは一体どういう意味なのか。それが本当の味方なのか、それとも別の目的があるのか。


その夜、弘彌はスマートフォンを取り出し、ある人物にメッセージを送った。それは、彼が普段から信頼している情報屋であり、かつての部下でもあった男――朧だった。


【イザベラの背景について、少し調べてくれ。】


しばらくすると、すぐに返事が来た。


【了解。すぐに調査を開始する。】


弘彌は安心したように息を吐きながら、スマートフォンを机に置いた。今は彼女のことを気にするべき時ではない。しかし、何か引っかかるものがあった。イザベラが転校してきた目的は何か。何か隠していることがあるのか。それが明らかになる時が、きっと近い。


その翌日、弘彌はいつものように登校し、教室での時間が始まった。イザベラはその日も静かにクラスに入り、さりげなく周囲と会話を交わしていた。しかし、弘彌は彼女の動きに目を光らせていた。彼女が何かを隠しているという直感は、ますます強まっていた。


「弘彌、どうしたの? 今日は元気ないみたいね。」


千夏が心配そうに声をかけてきたが、弘彌は少しだけ微笑んだ。


「うーん、なんだか、気になることがあるんだ。」


「気になること?」


「……イザベラのことだ。」


「やっぱり?」


千夏は少し驚いたように言った。


「でも、何も問題ないんじゃないの? 彼女、すごくいい子だし、王族だってこともあるから、ちょっと普通の子とは違うけど。」


「それがな、どうも何か引っかかるんだ。彼女の言動や雰囲気、何かが違う。普通じゃない。」


弘彌は少し言葉を濁しながら続けた。


「何か隠している気がするんだよ。」


その瞬間、教室のドアが開き、イザベラが入ってきた。彼女はその場の空気を一変させるような存在感を放ちながら、弘彌の目の前を通り過ぎて自分の席に着いた。弘彌はその背中をじっと見つめながら、心の中で決意を固めた。


――イザベラ・アーデン。その背後に何があるのか、必ず明らかにしてみせる。


その時、弘彌は確信した。新たな陰謀が動き始めている。そしてその中心にいるのは、他ならぬイザベラだ。


次第に、彼の周囲に何か大きな変化が起きようとしていることを、誰もがまだ気づいていなかった。

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