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第41話:新たな始まり、異国の姫君

春の穏やかな日差しが、茨城県の高校のキャンパスを照らしていた。どこかで桜の花が風に舞い、目の前の景色をほんのりと春らしく彩っている。主人公、龍ケ崎弘彌りゅうがさき こうやは、いつものように学校の廊下を歩いていたが、今日は少しだけ気分が違う。


数日前、突然伝えられた衝撃のニュースが、今だに彼の脳裏に強く残っていた。それは――


「転校生が来るってさ。」


友人である千夏ちなつが、学校で一緒に歩きながら言った。


「転校生? また、どんなやつが来るんだ?」


弘彌は軽く笑いながら、友人と歩き続けた。しかし、千夏の表情はどこか真剣だった。


「……今回はちょっと違う。聞いた話だと、海外から来るらしい。しかも、その子、ただの転校生じゃないんだって。」


「ふーん。どんな子なんだ?」


その時、千夏は少し間を開けてから、低い声で言った。


「実は、彼女、異国の王族だって。」


「え?」


弘彌は驚いた。まさか、そんな人物が転校生として来るなんて、思いもしなかった。


「王族? それって……本物の姫様とか?」


千夏は頷きながら答える。


「うん、そうらしい。名前は『イザベラ・アーデン』、異国の王国、アーデン王国の姫らしいよ。」


弘彌の驚きは増すばかりだった。王族の姫が、なぜ日本の高校に転校してくるのか。その理由が気になる。


その日、学校に到着すると、校内はいつも以上にざわついていた。どうやら、転校生が到着するということで、事前に生徒たちの間で話題になっていたらしい。弘彌は、少しだけそのざわめきに包まれながら、自分の教室に向かう。


教室に入ると、すでにクラスメートたちがざわついていた。先生が入ってきて、みんなを静かにさせると、クラス全員の目が先生に集まった。


「みなさん、今日は特別な転校生が来ることになりました。」


先生が言うと、教室のドアが開かれ、そこに立っていたのは――


「みなさん、こんにちは。」


その声に、全員が一瞬で静まり返った。目の前に立つ少女――彼女は、確かに普通の学生とは違っていた。優雅で気品に満ちた雰囲気が、周囲の空気を一変させる。


彼女は、白いドレスのような制服を身にまとい、まるで王族そのものの風格を持っている。銀髪を束ねた髪型に、透き通るような青い瞳が、教室を一周した。


「私は、イザベラ・アーデン。アーデン王国の姫です。」


その一言に、クラス全員が息を呑んだ。


「これから日本での学びを深めるため、こちらに転校してきました。よろしくお願いします。」


イザベラ・アーデン――その名前に、教室内が一層静まり返った。その美しさ、そして異国の王族という背景が、誰もが息を呑むほどに強く感じさせた。


弘彌は、その場の雰囲気をよそに、少しだけ興味を引かれた。異国の王族がなぜ日本の高校に転校してくるのか、その理由が気になって仕方がない。そんなことを考えているうちに、イザベラがクラス全員に軽くお辞儀をし、席についた。


「座ってください。」


先生が言うと、イザベラは静かに席に向かい、空いている席に座った。その席は――弘彌の隣だった。


弘彌は一瞬驚いたが、すぐに冷静さを取り戻し、何気なくイザベラを見た。


「……君がイザベラか。」


イザベラは、少し微笑んで答えた。


「はい、私がイザベラです。あなたが龍ケ崎弘彌ですね。どうぞよろしく。」


その言葉に、弘彌は少し照れながらも、軽く頭を下げた。


「よろしく。」


イザベラは、少しだけ席を調整しながら、弘彌に向かって小さな笑顔を見せた。それは、どこか落ち着きと優雅さを兼ね備えた微笑みだった。


「あなたが隣の席でよかった。私、まだ日本の文化に慣れていなくて。」


「そうだろうな。でも、少しずつ慣れていけばいいさ。」


弘彌は、無理に話題を作ることなく、少しだけイザベラに話しかけた。彼女が王族であることを感じさせない、どこか人懐っこい笑顔を見せる彼女に、弘彌は少し不思議な気持ちを抱いていた。


しかし、その笑顔の裏に隠された何か――彼女の抱える秘密が、この先の物語にどれほどの影響を与えるのか、弘彌はまだ知る由もなかった。

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