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第38話:沈まぬ太陽、燃え上がる怒り

水戸の空が赤く染まり始めた頃、弘彌の怒りは、もはや一人の高校生のそれではなかった。


相馬財閥の刺客によって、朧が重傷を負った。


病院の緊急治療室の前。千夏、詩帆、葵、そして沙羅が駆けつけたとき、弘彌は椅子に座って一言も喋らず、ただ血のついた上着を握りしめていた。


「……朧ちゃん、助かるよね?」


千夏の声が震える。弘彌は黙って頷いた。


しかし、彼の瞳の奥は、激怒の焔に燃えていた。


スマートフォンを開き、ある番号を呼び出す。


「こちら“鳳凰”指令本部。御意を。」


弘彌は立ち上がった。


「“鳳凰”を起動せよ。対象:相馬財閥、及び関係者全て。レベルS対応で臨め。」


その一言で、日本政府すら震え上がる、伝説の超法規的秘密組織“鳳凰ほうおう”が動き出す。


その設立は、戦後の混乱を乗り越えるため、天皇家直属として創られた影の組織。今やその存在は幻とされ、知る者すらわずか。


しかし、それは確かに存在していた。


「弘彌……いや、龍ケ崎宮弘彌親王殿下の御下命により、鳳凰起動。」


――東日本全域、警視庁公安部、警察庁、内閣情報調査室、そして自衛隊情報保全隊までが、密かに連携を始める。


病院の屋上では、スーツ姿のエージェントたちがドローンを飛ばし、情報を収集。


弘彌は目を閉じた。


「二度と、俺の大切なものを傷つけさせない。」


その呟きは、誰よりも深く、そして強い覚悟に満ちていた――。


第39話:燃える刃、朧の死闘


――時は少し遡る。


アクアワールド大洗の裏施設に潜入していた朧は、相馬財閥の護衛部隊に囲まれていた。


「くノ一風情が、俺たちに敵うと思ったか?」


全身を装甲で覆った戦闘員たちが銃口を向ける。


しかし朧は、風のように駆けた。


「風遁・霞流し――」


刹那、姿がかき消える。


次の瞬間、戦闘員の一人が喉を掻き切られて倒れる。


「ば、化け物か……っ!」


だが、朧の動きは止まらない。


「朧流・閃刃脚!」


跳躍し、宙返りからの踵落としで二人を瞬時に昏倒させる。


「時間がない……弘彌様に報告を……」


その時だった。


背後から、白髪の女戦士が姿を現す。


「やはり、朧。お前が来ると読んでいた。」


「……まさか、白鷺しらさぎ……っ!」


かつて同じ忍集団に属していた宿敵。朧にとって、唯一無二の“裏切り者”。


「これは任務ではない。私は、私の意志で相馬に仕えている。」


白鷺は二刀を抜いた。


朧もまた、小太刀を逆手に構える。


「弘彌様に、指一本触れさせない。」


剣閃が走る。


金属が擦れ、火花が散る。


その戦いは、一分一秒で数十合を交わす超人の戦。


「どうして……裏切ったの、白鷺っ!!」


「“守る”だけでは弱すぎるのよ。私は“勝つ”ために、強者に従ったまで。」


「それでも……私は、守るために生きる!!」


白鷺の刃が、朧の左脇腹を裂いた。


朧は倒れそうになりながらも、足を止めない。


「あなたの信じた強さが……間違っていたこと、今証明してみせるっ!!」


――渾身の一撃。朧の右小太刀が、白鷺の仮面を砕いた。


「……やはり、あなたは強かった。」


白鷺は血を流しながら、その場に膝をつく。


「でも、間に合わない。すでに相馬は“切り札”を動かした……っ」


「……!」


その言葉を最後に、白鷺は気を失った。


朧は倒れ込みながらも、通信機を手に取る。


「弘彌様……相馬が、最後の一手を……」


次の瞬間、通信が途絶える。


弘彌がその報告を受けたのは、ちょうど夕暮れ時だった。


目の前で、朧が運び込まれる。


「……朧!!」


血に染まった彼女の姿を見た瞬間、弘彌の中の何かが音を立てて崩れた。


そして、決意の刃がその魂に宿る。


「相馬……絶対に許さない。」


そして、復讐と守護の両刃をもって、弘彌は最終決戦へと向かう――!



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