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第二十話:企業買収を決意

翌日、静との会話を思い出しながら、僕は改めてその覚悟を深めていた。彼女の家が直面している危機、そして彼女自身が感じている怒りと痛み。それを僕がどうにかして解決しなければならない。だが、それには相当なリスクが伴うことは確かだ。


その日の昼休み、僕は千夏と一緒に食堂で昼食を取っていた。千夏はいつも通り元気そうに笑いながら、僕の弁当をじっと見つめている。


「また、あんたの弁当は質素だね。何でそんなに地味なんだよ」


「これは俺のやり方だから」と答えながら、少しだけ弁当を口に運ぶ。その視線の先で千夏は少し不満そうな顔をしてから、急に真剣な表情に変わった。


「……それで、静のことだけど、何か進展あった?」


その問いかけに、僕は少しだけ間を置いてから答えた。「ああ、少しだけ。彼女、かなり追い込まれている。でも、彼女自身も何か決意を固めたようだ」


千夏は頷きながらも、どこか不安げに僕を見つめている。「……それ、もしかして、俺らが助けるって話なのか?」


「もちろん、俺も彼女を助けるつもりだ。だが、これは単なる助け合いの問題じゃない。彼女の家を守るためには、あの令嬢の親会社を叩かなければならない。お前にも言っておくが、かなり大きなリスクを背負うことになる」


千夏はしばらく黙って僕を見つめた後、低い声で答える。「わかってる。でも、あいつがどうしても許せないんだ。俺、あいつに何かしらの形で報いを受けさせないと、気が済まない」


その言葉には、千夏の中にある強い思いが込められていた。彼女もまた、復讐心を燃やしているのだろう。それは僕と同じ気持ちだ。


「まあ、そうだな。だが、気をつけろ。復讐というのは、感情に流されてしまうと後悔することになる。冷静に、計画的に動かなければならない」


千夏は頷きながら、真剣な顔で僕を見返す。「わかってる。お前が言う通りにする。でも、もし何かあったら、俺も全力でお前を助けるからな」


その言葉を聞いて、僕は少しだけ安心する。千夏もまた、僕の味方でいてくれる。彼女の強さと誠実さに、僕は心から感謝していた。


その後、放課後の時間を利用して、僕は静と再び会う約束をした。彼女はすでに覚悟を決めているようだったが、その目はどこか悲しげでもあり、同時に強い決意が込められていた。


放課後、僕は静と校門近くのベンチで待ち合わせをした。彼女が到着するまで、少しだけ考え込んでいた。今から動けば、僕が計画していることは確実に進展するだろう。しかし、もし失敗すれば、その代償はかなり大きなものになる。静の家も、静自身も、そして僕自身も、大きなリスクを負っている。


そのとき、静が静かに現れた。彼女は前回よりも少し落ち着いた表情をしているが、それでもその瞳の奥に潜む怒りは隠しきれない。


「龍ケ崎さん、来てくれたのね」と彼女は小さく言った。


「もちろんだ。お前の家を守るために、全力を尽くすつもりだ」と僕は答えた。


静はゆっくりと頷くと、少しだけ躊躇するように口を開いた。「実は……私、今、ある計画を考えているの」


「計画?」


「ええ。私が思いついた方法は、あなたの手を借りれば、確実にあの令嬢の父親を追い詰められると思う。ただ、かなり大胆な方法だから、リスクは大きいわ」


その言葉に僕は少し冷静になり、慎重に尋ねる。「どんな方法だ?」


静は深く息を吸い込んでから、言葉を続けた。「私の家の特許や技術力を狙っているあの令嬢の父親を、経済的に追い詰める方法。企業買収を仕掛けるの」


その言葉に、僕は思わず驚きの声を上げる。「企業買収……?」


「はい。彼らが経営している会社が抱える隠れた負債や、企業内部の不正を暴いて、ライバル企業を巻き込んで買収する。そうすれば、あの令嬢の父親は会社を乗っ取るどころか、逆に追い詰められることになる」


その言葉に、僕の頭の中で一瞬、何かが閃いた。静の言う通り、この方法なら確実にあの令嬢の父親を潰せる。だが、リスクも大きい。もしこの計画がバレれば、ただの高校生である僕と静は、確実に命を狙われることになるだろう。


だが、僕はすぐに決断した。「いいだろう。やってみよう。君の家を守るために、俺は全力で協力する」


静はその言葉を聞いて、初めて穏やかな表情を浮かべた。そして、僕に静かに言った。


「ありがとう、龍ケ崎さん。これから、私たちの未来を切り開くために、力を合わせましょう」


僕は静の目を見返しながら、心の中で決意を固めた。この計画が成功すれば、静の家も守れるし、あの令嬢の父親も追い詰められる。そして、静の苦しみも少しは軽くなるだろう。


だが、同時に、この先どんな危険が待ち受けているのか、僕にはまだわからなかった。


——これから、何が起こるか、僕たちはまだ知らない。









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