第十話 「忍び寄る新たな出会い」
翌朝、俺は学校へと向かう。
昨夜の出来事を思い返しながら、朝の光に包まれた水戸の街を歩く。偕楽園の梅の香りがまだほのかに漂い、春の訪れを告げている。
「おはようございます、殿下」
隣には斎宮がいつの間にか並んでいた。護衛という名目ではあるが、彼女も同じ学校に通うクラスメイトだ。
「お前、毎朝こうやってついてくる気か?」
「当然です。殿下に万が一のことがあれば、私の首が飛びますので」
「物騒だな、おい」
そんな会話をしながら、茨城県立北常陸高等学校の門をくぐる。
校門を入ると、千夏の姿が見えた。
「おう、弘彌!」
千夏が俺を見つけるなり、原付のヘルメットを脱ぎ、髪をかき上げた。
「昨日はありがとな。ところでさ……」
「ん?」
「……お前、なんか隠してることねぇ?」
鋭い目で見据えられ、俺は思わず冷や汗をかく。
——どうやら、千夏の勘は鋭いらしい。
その直後、俺の視界の端に新たな人物の影が映った。
「……あれ、誰だ?」
桜並木の下に佇む、見知らぬ少女。
新たな波乱の予感が、春風に乗って忍び寄っていた——。




