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第四瓶

こんにちは。これを読み解ける人が読んでいるこれが、その人にとって何番目の手紙になるのか相変わらず分かりませんが、僕の記憶違いでなければ、実際に川に投じるものとしてはこれで四本目になる筈、……確認をしたらやはり四本目で間違いないようです。この瓶入りの手紙たった一枚を書くのに時間をかけるばかりでなく、書きかけては破棄をしたものも勿論あり、それぞれの数は覚えてはおけなくても、書き終えたものを瓶に入れてもらい、それに蓋をして水の入らないように封印し、なおかつ時間をかけて川まで出かけて水の中に投じてもらう……儀式のような、この一連の流れの回数の方は数えておくことが出来る。そう、この手紙を流すのは僕一人の手によるものじゃない。この瓶入りの手紙を流すことに手を貸すこの忠実な「共犯者」なしに僕はこれを遂行は出来ないわけなのですが、この二人の共同作業で初めて完成するもので……「僕一人ではこの手紙を放つ事が出来なかった」、これを手にして読んでいる、あなたにならその意味を察することが出来ると思うのですが、この共犯者の存在こそ計画の要であるのは確かです。そもそもこの計画は共犯者からの発案が素で着想され、僕がそれにひねりを加えて……そうして実行に移されたものなのですから。ある夏、共犯者が差し出す薄荷水の瓶、それを処分せず「これに手紙を入れて封をして海に流したら海の向こうの誰かが受け取るのだろうか」などとぽつりと言った言葉が頭に残りました。頭の中にそれは長く引っかかり、あれこれと考え事の元になり、そうして僕の中で計画が湧き上がってきたものです。……昔から自分にとって奇妙に思っていたのは、瓶詰めの手紙を書くのに相応しい言語は何なのだろうかというのはありました。国内で拾われるならばともかく、使われる言語がこちらの予測出来ないものであれば、それは果たして意味があるのだろうか、世界各国で話者の多いだろう言語によるならばまだしも。ましてや僕の綴る手紙など……。でも、むしろそのことが別の意識をもたらしたのかもしれません。「手紙は書かれ、存在する事で既に意味がある」と思い至った時にこの計画を実行する決心が付いたのです。川に放たれ海に向かう、割れて沈まず、人手に届くかも読まれるのかも確かでは無いこの手紙の意味は、少なくとも僕と共犯者の二人にとっては紛れもなくあるものだった、そう信じたのです。

初出:2023年(令和05)06月29日(木)02:22

[pixiv] https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=20163677

『pixiv小説1000億字突破記念「1000字コンテスト」』テーマ「ボトルメール」( https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=19909583 )内

「1000字コンワンライ」第2回「二人」( https://x.com/pixiv_shosetsu/status/1662262346742628352 )未参加作品。

[※募集期間外投稿 2023年05月27日(土)10:00~11:00の開催期間後に書かれたものです。]



再録:2025年(令和07)02月15日(土)

[小説家になろう]


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