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第一瓶

こんにちは。この瓶を拾ってこの手紙を見つけた人、見つけただけではなくこの文字の読み方を知っていた人。水の流れのままに漂い、衝撃に脆いガラスの瓶が砕けずに遠くまで運ばれてこの手紙が手紙としてあなたの手元に辿り着いたのなら、その奇跡的な確率に驚いて運命をさえ感じるかもしれません。文字通り幾つもの困難を超えてこの手紙があなたの手元に届き、あなたがわたしの言葉を受け取った、果たしてそれが「いつ」なのか「どこで」なのか、それらは僕にとって「あなた」が永久に謎であるように分からないで終わるでしょう。僕が今日この日綴った手紙がどれくらいの時間をかけて川から海、そうして人の手に拾われるのか分かりません。その時にはもう僕自身が地上のどこにもいない……「今日」この日が遥かな過去の「昔々」になっていることさえあり得るのだから。あなたはアメリカ航空宇宙局のボイジャー計画をご存知でしょうか。この地球の外、この太陽系の外側へ向かい、遥か遠くの惑星や宇宙の姿を調べるための無人探査機ボイジャー。この地上からでは知ることのできないような世界を調べに高く高く、そして遠くまで飛んでいく航海者。そこには観測の機械だけではなく、黄金のレコードが乗せられているそうです。地球という惑星の姿や音、挨拶の言葉や音楽を詰め込み、この宇宙の中で「私」という存在がいることを、実在するかどうかの確証のない誰かに向けて送り出した。この地球の人類全てがボイジャーを一つのボトルにしてそこに込め、誰かも分からない、いるかどうかも定かではない相手に出した手紙。そのボイジャー・ゴールデン・レコードに込められた我々・地球人のメッセージが届く頃には僕らはとうにこの地上からいなくなっているだろうし、もしかしたら人類そのものも、この惑星のかすかな思い出になっているかもしれないけれど、どこかに届いていたなら……と、今日この日の僕は思わずにはいられなかった。僕はこの手紙をボイジャー探査機とは比べものにならないだろう一本の瓶に入れて川の流れに流すけれども、もしかしたらこれを読むあなたは別の国の、別の時代の、更には別の惑星の人という可能性だってゼロではないだろうし……。でも、つまるところ、手紙が本当に届かなくても、読まれなくても、良いのだと思う。書いたそのことでもう目的は果たされた、そういう手紙だってあるのだから。

初出:2023年(令和05)06月21日(水)22:56

[pixiv] https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=20120011

『pixiv小説1000億字突破記念「1000字コンテスト」』テーマ「ボトルメール」( https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=19909583 )内

「1000字コンワンライ」第4回「今日」( https://x.com/pixiv_shosetsu/status/1671503234790461440 )参加作品。


再録:2025年(令和07)02月15日(土)

[小説家になろう]


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