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Mr.SOCCERS!!

作者: カカ

坂野蹴跳(さかのしゅうと)は、サッカー部の練習後に一人、黙々とボールを蹴っていた。部活の仲間たちは、すでに帰り支度をしていたが、蹴跳はいつも最後まで練習を続ける。彼の集中力は他の誰とも比べ物にならなかった。それは、サッカーに対する情熱だけでなく、彼自身の信念から来ていた。


そんな彼の後ろから、重々しい足音が近づいてきた。振り向くと、サッカー部の顧問である監督、藤崎ふじさきが立っていた。藤崎はその厳しい眼差しで蹴跳を見つめ、ゆっくりと口を開いた。


「蹴跳、お前には期待している。全国大会で勝つためには、お前の力がどうしても必要だ。だから、フィールドを支配しろ。」


蹴跳はボールを足元で軽く転がしながら、藤崎の言葉をじっと聞いていた。監督の言う「支配」とは、ゲームを完全に掌握するという意味だろう。しかし、蹴跳にはその言葉がしっくりこなかった。


彼は少しだけ黙ってから、口を開いた。


「支配なんかしない。」


藤崎は驚いたように眉をひそめた。蹴跳の返答は予想外だった。藤崎はすぐに続けた。


「お前、何を言っているんだ? お前がフィールドを支配すれば、チーム全体を引っ張ることができるんだぞ。」


蹴跳は少しだけ笑みを浮かべ、視線を藤崎に向けた。


「支配なんかしない。僕が目指すのは、もっと自由なプレーだよ。」


藤崎はその言葉に一瞬驚いたが、すぐに冷静さを取り戻した。


「自由だと? サッカーは自由だとしても、試合では制御が必要だ。お前の才能を持ってすれば、もっとフィールド全体を支配し、周囲を引き寄せるようにしないと。」


蹴跳は、藤崎の言葉に反論するように、軽くボールを蹴りながら再び口を開いた。


「それが違うんだ、監督。僕が一番自由にプレーできることが、チーム全体に良い影響を与えると思う。フィールドを支配するなんて、誰かに縛られるようなものだ。自由にプレーすれば、チーム全体がもっと自然に動くんだよ。」


藤崎は少し考え込み、そして深いため息をついた。


「お前の言うことは分かる。でも、実際にそれができるプレーヤーは少ない。お前は、どんなときでも自由に動ける才能を持っている。でも、それが乱れたプレーにならないように気をつけろ。」


蹴跳は、藤崎の言葉を聞いた後、再び真剣な顔で言った。


「僕はね、サッカーって、ただの戦いじゃないと思うんだ。勝つための戦略も大事だけど、一番大事なのは楽しむこと。僕は誰にも縛られない、自由なプレーができるからこそ、サッカーが最高に楽しいんだ。」


藤崎は少しだけ眉をひそめたが、その後、静かに頷いた。


「分かった。だが、お前が自由にプレーするためには、みんなとの信頼が必要だ。自由に動けるのは、お前がチームを信じているからだろう。」


蹴跳はその言葉に静かに頷き、顔を上げて空を見上げた。


「もちろん、僕は仲間を信じてる。だから、僕が自由にプレーしても、みんながその中でうまく連携できると思う。」


藤崎はしばらく黙って蹴跳を見つめ、そしてゆっくりと口を開いた。


「お前が『Mr. SOCCER』だと言われる所以は、ただ上手いだけじゃない。その自由な発想と、仲間を信じる心があるからだろう。お前が言う自由こそ、サッカーの本質だと言えるかもしれないな。」


蹴跳は少し照れくさそうに笑いながら、ボールを蹴り続けた。藤崎はその後ろ姿をしばらく見守り、やがて静かにその場を離れていった。


蹴跳は一人きりの夜のグラウンドで、自由にボールを操りながら、心の中で誓った。この自由こそが、真の「Mr. SOCCER」への道であり、誰にも縛られないプレーヤーが、この先のサッカー人生を切り開いていくのだと。


サッカー部のメンバーが集まるとき、蹴跳の姿勢は変わらなかった。彼が目指すのは、フィールドを支配することではない。サッカーを愛し、自由な心でプレーすることが、何よりも重要だと確信していた。そして、そんな蹴跳がいることで、チームはもっと一体感を増していった。


「Mr. SOCCER」と呼ばれる者は、結局、最も自由なプレーヤーであるべきだ。蹴跳は、そんな真理を胸に抱きながら、次の試合に向けて新たな一歩を踏み出した。

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