3章
「ほんとにやるんですか」
「やるしかないだろ、事件解決のために」
そういうと僕は夜の道を歩き出した。できるだけ人気のない場所へ、暴れられても被害の出にくい場所へ。そう思いながらじれったい思いを飲み込み、できるだけゆっくり自然に歩いた。
すると、すぐに引っかかった。ストーカーと思われるあの人がついてきた。そのまま、何周か同じ道を歩く。まだついてきている。
阿部さんからもらった情報に顔写真がついていた。そこに貼られていた顔はあの、僕がやけによく会う、ストーカー(と思われる)女性だった。
今すぐにでも走り逃げ出したい気持ちと後ろを振り返ってすぐに捕まえたい気持ちが交錯している。
しかしその両方の気持ちを抑えて、ゆっくり歩いていると目的の曲がり角が見えた。曲がり角を曲がり、ストーカーが曲がったタイミングで捕まえる。それが僕らの作戦だ。
曲がり角まで3、、、2、、、1、、、0!!僕は曲がり角を曲がるとすぐに後ろを振り向いた。そして曲がり角から出てくる人影に声をかけた。警察と言えば、ヒッっという声が聞こえ、ライトにはコンビニで見たあの女性―――あの日振り返ったら逃げ出した女性―――がいた。
この女性は逃げ出そうとするが、深津がもうすでに挟んでいる。
しかし、他人と思ったのか深津の横を通り抜けようとする。
深津は僕と目を合わせ、この女性がその女性であることを把握した。そこからの行動は早かった。通り抜けざまに足を出し、女性を転ばせ、さらに逃げようとする女性の腕の関節を極めた。
深津が低身長でも戦力になる理由、それはシンプルに強いからだ。なんだったら、たいていの大人―――男だろうが女だろうが―――はすぐに放り出せる。もはや怖い。警察庁内の一部ではその容姿と強さから尊敬の意を込めて金太郎ちゃんと呼ばれているらしい。
女性はせき込むとあきらめたように力を抜いた。
「楠さん。あなたをストーカーの現行犯で逮捕します。さらに、あなたには逮捕状が出ています。あなたには黙秘権が認められ…」
深津が逮捕をして、いろいろと述べている。
僕は、少し疑問を覚えていた。なんで今まで証拠を残さないほど慎重だった人がこんなミスをしたのだろう?しかし、そんなこと気にしても仕方がいない。今は目の前のことに集中しよう。
深津から僕に楠さんを受け渡してもらい、署まで連れて行こうとする。そのとき、楠がしゃべった。
「あなたを守りたかった…。あの女は…。」
あの女?というのは誰だろう。深津のことか?それとも別の女性のことか?しかし、相手はストーカーをしてきた人、従順に話を聞いてはいけない。
「うん。わかった。詳しい話は所で聞くから。」
僕はそう告げると用意していたパトカーに楠を乗せた。




