星座を見たい男と現実を見てほしい女
寒風吹きすさぶ公園のベンチに、一組の若いカップルが肩を並べています。
周りには誰もいません。
イチャコラしても捕まることはないでしょうが、それは叶わないのです。
なぜなら、二人の手には缶コーヒーが握られているからです。
トン
彼女が缶を地面に置きました。
イチャコラするのでしょうか?
カランカランカラン
風が空き缶を倒し転がします。
「ふうぅぅぅぅぅ」
掌に吹きかける吐息は白く、気温の低さを嫌でも認識させられます。
たぶんですが、握っていた缶が冷たく、手放したのでしょう。
そしてそれは、彼氏へのメッセージでもあると思われます。
寒い! 気づいて! という。
「ぼくの夢ってさ。新しい星座を見つけることなんだよね」
夜空を見上げ夢を語る少年の顔は、光り輝いています。
きらめく満天の星にも負けてません。
ああ、青春です! が、それではダメなのです。
少年が真に視るべきは、星ではなく彼女の顔色なのです。
真っ赤です。
これはもう、怒り心頭とみて間違いないでしょう。
「一生空見てろ!」
やはりです。
彼女は帰ってしまいました。
冬の悲しい公園で、少年は一人悲しく泣くことしかできませんでした。




