そしてディエゴの部屋にて
「は?お前、またアイツの肩を持つのか!」
ディエゴは苛立ったようにガシッともう片方の手をファビアの肩に置いた。
「母親の言いなりの…あんな男の何がそんなに…」
言いなり…なのかどうかはわからないけれど…
「前世がどうだったのかわからないわ。けれど今は…アーグフルト殿下にはフロレンティーナ王女は嫁いでいない。だからもしかしたら前世とは違う結果になってきているのかもしれないけれど…」
「どう言う意味だ?」
ディエゴはそれでもまだ眉を吊り上げ、ファビアを見ている。
「ディエゴ様のもとにも…ダ…イアナ嬢は嫁いでいないから…まだ間に合うかもしれない」
「え?」
と、ディエゴの顔が固まった。
あーまただわ。
ダイアナのことになると何故こんなに慌てたようになってしまうの?ディエゴ様。
やはり気持ちがダイアナにあるのだと思うと居た堪れない。けれど…ちゃんと言わなければ…。
「ディエゴ様は…ダイアナ嬢を…妃に迎えるの?」
言ってしまってから悲しくなった。
何故こんなことを聞かなければならないのだろう。
「は?」
ディエゴの目を見ると…信じられないと言わんばかりの目をしている。
「何故そう思う?」
「ダイアナ嬢にミラージュ大教会の管理を任されていますわよね」
「ああ。昔任せると言ったが…もうお前の管轄になっているのではないのか?」
はぁー…
やっぱりそうだったのだわ。
全て忘れているのよ。
「ディエゴ様からダイアナ嬢に言ってくださらないとダイアナ嬢は手を引かないそうです」
「は?」
「ディエゴ様に頼まれたのだからディエゴ様から解任してもらわないと管理をやめないと言っておられたわ」
「ダイアナに…会ったのか」
ダイアナと呼び捨てなのね…
やはり。
「わたしがミラージュ大教会に訪問したらいらっしゃったの。事前にわたしが行くとビーティー家には伝えてあったのだけれどね…」
「……」
確かにミラージュ大教会をダイアナに頼んだなと思い出しながらもまさかそんなことになっていたとは…とディエゴは頭を抱えた。
それにさっきのファビアの表情…
これじゃあまるで…母上のようじゃないか…
俺は父親と同じことをしようとしてるのか…
そんなわけないだろう?ファビア。
ちゃんと言葉で言わねばならないな。
「この際だからきちんと言っておく」
ディエゴが言うとファビアの顔が不安そうに翳る。
あーこんな顔は見たくなかったのではなかったか。
俺はバカだな。
ダイアナのことはちゃんとせねばならない。
ファビアには正直に話そう。
「ダイアナと俺の関係をだ」
ファビアのゴクリと唾を飲み込む音を聞いた気がした。




