不穏な動き?
その日の夜…
ディエゴはファビアのところに来なかった。
え?
マジで…
知らぬ間に眠っていたらしいファビアは、ディエゴがこなかったことに流石に危機感を覚え始める。
そりゃ…
抱いてはくれないけどさ…
けどいつも…
いつもちゃんと…
おでこにはチューしてくれるじゃない?
なのにさ…
もう飽きたの?
わたしのこと…
嫌になったの?
その日公務の勉強をしながら、ため息しか出ず、バクスター夫人に何度も注意される羽目になってしまった。
ダメね…
前世と何も変わってないわ。
わたし…
結局昨日のお茶の時間以降ディエゴには会えていない。
今日は公務を終えると、考え事をしながら宮殿をぞろぞろとリンジーとともに散歩している。
1人でいるとどんどん考えがおかしな方向に行ってしまいそうで…
それでも考えてしまう自分が嫌になる…
そう思いながら歩いていたらどうやらイアン殿下の部屋の前あ辺りを歩いていたらしい。
中から強烈な悪意を持った声が聞こえてきてビックリしてしまった。
『お前は悔しくないのか!アイツに負けっぱなしだろ!』
え?
この声は…
『関係ありませんよ。所詮わたしは…兄上がいなくなった時用のスペア人形にすぎない』
『そんなこと言うな。お前はよくやってる。あんな奴に負けるな!』
『いいえ。兄上。わたしは彼女が幸せに…なってくれればそれで…』
『ちっ…ったく。使えない奴め…』
『兄上?何かおっしゃいましたか?』
『いや。何もない。もういい。お前は一生、ダイアナの幸せだけ祈ってればいいさ』
そしてバタンと扉が閉まる音…。
……。
大変!
ここから立ち去らないと…
まさか聞こえていたとは思われないだろうけど…。
こういうときにディエゴがいてくれたらと思いながらもファビアは抜足差足でその場をゆっくりと後にしたのだった。




