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舞踏会の朝

「まぁ。ファビア様!」


次の日の朝、ファビアの部屋に入ってきたリズが素っ頓狂な声をあげたが、ファビアはしーっと指を唇に当てるとリズを黙らせる。


「静かに。戦地から戻られたところだからお疲れなの。もう少し眠らせてあげて。それと殿下付の侍女に殿下が戻られている旨伝えてちょうだい。朝食も殿下の分を用意する様に。いつもより少し多めにね。そうね。とりあえずお部屋にお持ちするように言ってちょうだい」


「は、はい。わかりましたっ!」


リズがパタパタと部屋から出ていったので、ファビアはベッドからそっと抜け出そうとしたところで、ディエゴが起きたらしく、くいっと引っ張られてもう一度ベッドに逆戻りしてしまった。


「ディエコ様。びっくりするじゃないの」


またぷうっと頬を膨らませると、ディエゴがぴんとおでこを弾いた。


「おまえのそのすねたような表情。他の男には見せるなよ」


「え?」


「あと、他の男には笑うな」


「は?」


ファビアが眉間にしわを寄せたらディエゴがクスクス笑った。


「ウソだよ。お前は笑ってなきゃだめだと前言っただろ?笑ってろ。俺の横で」


そしてギュっと抱き寄せ、額に唇を寄せる。


そのしぐさにきゅんとファビアの胸の奥が締め付けられる。


「舞踏会でもよろしくな。婚約者として発表する」


「はい」


ファビアがぎゅっとディエゴにしがみつくと、ディエゴが無理やり気味にファビアをぐいっと離した。


「よし。起きるぞ。俺は部屋に戻る。今日は朝から忙しいだろうから、夜までおまえと話してる暇はないだろう。おそらく次会うときは舞踏会の前だ」


そして、がばっとベッドの上に半身を起こし、ファビアを横にストンと座らせた。


「よろしくな。ファビア」


そう言うとディエゴはベッドから降りて部屋を出ていった。


なんか…

よそよそしい気がする…。


せっかく久しぶりに会えたのに…。


なんとなく物足りなく感じつつ。ファビアも今日の用意にとりかからねばならず、ベッドから離れるとリズがちょうどやってきたので、それからバタバタと舞踏会の準備に明け暮れたのだった。

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