表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/98

お茶会〜かわいい姉妹たちと

ティナ皇女は好奇心旺盛なタイプだなとファビアは分析する。

母君は北部のカンディアナ王国との国境近くにある小国の出身でどちらかというとカンディアナ人に近い人種らしく、ガーディアン人と同じでとても色が白く、そういう意味ではファビアと同じようにミルアーでは目立つ容姿をしていた。


グレンダのところからルンルン気分で戻ってきたファビアは3日後のお茶にティナ皇女からの誘いがあり、喜び勇んでやってきたのだ。

そこには第五皇女のアナベルもいた。


アナベルは皇帝の子どもの中ではめずらしい純粋なミルアー貴族との間に産まれた人で、そういう意味では第六皇子のアーグフルトと同じだった。


ふたりとも14歳らしい。

ファビアから見たら実年齢的にも妹みたなものではあるが、実際に生きている年齢から行くと、娘みたいなものかしらねと思った。

2人ともまだ幼く、きゃぴきゃぴと令息たちの噂話に花を咲かせている。


「わたしこの間マグゴルド卿に助けていただいたんだけれど、すごく胸板があつくってきゃーってなっちゃった」


「あら、なぜあなただけ?わたしもその場にいたかった」


「いいでしょう」


マグゴルド卿というのはイケメンで通っているミルアー騎士団の剣士だ。腕もよく令嬢からの人気を一身に受けているらしい。


「ファビアお姉さまもあんな血も涙もないお兄様なんてやめて、一度騎士団の見学に行きませんこと?」


「え?」


「あら、そんなことしたらお兄様が嫉妬に狂うからダメよ」


「そうかしら?」


「そうに決まってるわ。だってお兄様ファビアお姉さまにべたぼれだもの」


「あのお兄様がねぇ…」


「だって…」


そしてそこで2人の声が小さくなる。


「皇后陛下がお兄様の弱みを握ったってほくそ笑んでいるとみんな言っているわ。ファビアお姉さまご注意なさいませ」


う…。

弱みかぁ…。

だから今だってわたしのうしろに控えているリンジーを付けてくれたんだけど…。


けれど特に襲われたりとか、身の危険を感じたこともないんだけどなぁ…。


「そうだわ。お二人にお聞きしたいのですけれど、皇帝陛下はお手紙をよくくださるものなのですか?」


「この間の晩餐の時のことを言っているのね?あれは全部皇后陛下のせいなのよ」


「え?」


2人が顔を見合わせている。


「あの晩餐でほかの妃のことを話すと皇后陛下の機嫌が悪くなるから、皇帝陛下は最小限の事しか言わないの」


「はぁ…」


「だから、詳細の指示については全部手紙でくるのよ」


なんとまぁ…。

ならば個別に呼べばいいものを…。


「あの2人もよくわからないのよね。それならば最初から個別に呼ぶとか手紙にするとかすればいいのにと思うけど、皇帝陛下が第六皇子以外の子どもになさることを皇后陛下が知っていないとまたそれはそれでお怒りになるそうよ」


へぇ…。

なんというか…。

面倒な人ってことかしら?


まぁ夫があれだけいろんな女性を妃にしているのだからそれくらいしないとやってられないのかもしれないけれど…。


それにしてもその皇后の意見を尊重している皇帝陛下も皇后陛下を無下にはしていないという証拠よね。


これだけ多くの妃を持ってもそれなりにやっていけているのは実は皇帝陛下の気遣いがあるのかもしれない。

先日のお母さまへのお手紙を見てもそれはわかる。


きっとほかの妃にもずっと気を遣われているのだわ。


「皇帝陛下は皇后陛下を大事になされているということですね」


ファビアが言うと2人が顔を見合わせた。


「まぁそうだけれど。それでもやはり皇太子の座は第六皇子に就かせたいとずっと皇帝陛下に交渉なされているようだけれど、それだけは絶対に首を縦に振らないのよね。皇帝陛下も」


「そうそう。お兄様しかダメだとおっしゃるそうよ」


そうなのか…。

そこにどういう理由があるのか…。


けれどディエゴひいき目のファビアが見ても、皇帝の子どもたちの中で将来皇帝としての適正が一番あるのはディエゴだと思う。

第五皇子のイアンはディエゴが戦争に出ている間の皇太子としての雑務をすべてこなされており、それなりに何でもできる人ではあるが、何といおうか…ディエゴにはあるカリスマ性のようなものがなかった。

ファビアはここに来てから毎日宮殿を観察しに足を運んでいたが、その際ディエゴのことはどの職員も尊敬の念を持って接していることがわかった。それにひきかえイアン皇子の陰はうすく、どちらかというと縁の下の力持ちという感じだ。


第四皇子のゲイリーは身体が弱く、もうすぐ神官になられるらしいという噂だ。政治の表舞台にはほとんど顔を出さないらしい。晩餐の時もあまり召し上がらない。

それに第六皇子はあんなだし。


あんなというのも…

もう話しかけるなと言っておきながら、常にファビアのことを見張っているらしく、何かというと向こうからからんでくるのは今も同じで、薬草学にはおそろしい能力を発揮されるようだが、政治には特に興味はなさそうに見えた。


皇后はアーグフルトをなんとか皇太子にしたいのだろうが、なかなか本人はどう思っているのやら…といった感じである。


「あ、そうだわ。帝国の建国記念日のドレスはもう決めた?」


「わたしはいつものとおりミラジェの洋装店に頼むわ」


「あら、今の流行はラピス洋装店よ」


「え?うそ」


ん?何それ?


「あの…建国記念日とは?」


「まあ、ファビアお姉さまお聞きにはなっておりませんの?」


2人があきれたとばかりに扇で口を隠す。


「お兄様ったら何も言わずに…」


「けれど、お兄様、戦地から戻れるかわからないわよ」


「そうねぇ…。その場合どうされるおつもりかしら?」


2人が顔を見合わせている。


どうやら、帝国の建国記念日、6月6日に大舞踏会があるらしいのだ。

その1週間前から帝国はお祭りムードになり、大舞踏会で締め括られる。


ファビアはまだ婚約者であるが、ふつうは婚約者としてお披露目されるはずだとのこと。


何も聞かされてないわ。わたし。

ドレスも…どうしたらいいのかしら?


「イアンお兄様が今ディエゴお兄様の代行をされているのだからイアンお兄様に聞くのがいいのではなくて?」


「そうねぇ。それしかないかもねぇ…」


仕方がないイアン皇子に聞くとするか…。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ