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皇帝命令?

「ファビア・ロンズディールよ」


晩餐中、突然の皇帝からの声掛けに、ファビアは思わず口に入れたものを落としそうになりながら、あわてて顔をあげた。


「はいっ」


びっくりするじゃない。

今まで一度も声をかけたことなどないくせに。


毎日の晩餐においては皇帝は誰にも声をかけることはなく、ただただ感情のない表情でもくもくと食を進めているだけだった。

なのに突然声をかけられたら、声も裏返るというものだ。


「明日、マウワ離宮を訪問せよ」


は?

マウワ離宮といえば…。


「かしこまりました。そのようにいたします」


そしてそのまま口を閉ざす。


え?

何時に行けとか、誰と行けとか、何をしに行けとか…指示は??!!


マウワ離宮はジュリアードの郊外にあり、ディエゴの母君、グレンダ・フェルナンデスが住んでいるところだ。

ディエゴはすぐに戦場に行ってしまったし、グレンダはこの宮殿にはこの1か月まったく近づいた形跡もなかったし、いつ会えるのかと、もしかしたらこちらから会いに行ったほうがいいのかと悩んでいたところだった。

明日訪問するようにと指示があったのはいいが、こんな適当な指示じゃどうすればいいのかわからないじゃない。


そのまま食事を終えそうな雰囲気を感じたので、ファビアが意を決して口を開こうとしたときだ。

となりの席からぐいっとドレスの裾をひっぱられた。


え?


ファビアのとなりにはいつも第四皇女のティナ皇女が座っている。母君が異国の人でファビアと同じように色が白く、アッシュブロンドの髪にうすい碧眼のおとなしそうな皇女で、今まで話をしたことは皆無だったが、どうやら意図的にファビアのドレスの裾を踏み、口を開くなと警告してくれているらしい。

どうやら口を開くと大変なことになるのだろうと察したファビアは何も言わず、そのまま黙っていた。


皇帝と皇后が席を立ち、部屋を退出する。


その他の者も食事を終えたようなので、ファビアはティナ皇女が退出するのを待って、自分も後ろから退出し、声をかけた。


「すみません。ありがとうございます。ティナ皇女」


くるりと振り向いたティナはふわりと笑った。


「いいえ。皇帝陛下からおそらくお手紙が届きますからそれをお待ちするほうが得策ですわ」


「そうなのですか?」


手紙が…?


「皇帝陛下はあまりあの場で話すことは好まれません。詳細はいつも手紙で参りますの」


好まないって。ならば全員での晩餐なんて何の意味があるっていうのよ…。


「わかりましたわ。ありがとうございます」


「いいえ。それよりファビアお姉さま。わたくし、とても親近感を感じておりますのよ」


にこにことファビアを見る。


「今度、お茶にご招待してもいいかしら?」


「よろしいのですか?」


「ええ。ほんとうはお話したくてうずうずしておりましたの。ほら、この国では肌が白いだけで目立つのですもの」


くすくすと笑うティナ皇女とお近づきになれそうで少しワクワクしているファビアだった。


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