ガーディアンの輝く未来へ
「半年後にはミルアーに向かわれるようです。殿下」
「そう」
ファビアの父であるロンズディール公爵からファビアがディエゴ皇太子の元へ嫁ぎたい旨打診があったのは舞踏会の1週間後だった。
「相思相愛なのはわかっていたことだったし…まあ仕方ないな」
ボソリとレイナルドがつぶやいた言葉は次期宰相候補のリカルドには聞き取れなかったらしい。
「殿下?何かおっしゃいましたか?」
「いいや。いいんだ」
ファビアがフロレンティーナの護衛騎士に傷つけられたときのことは今思い出しても寒気がする。
あのときディエゴが現れなかったらと思うと生きた心地もしない。
あのときのディエゴのファビアを気遣うあの瞳は本気の瞳だ。
ディエゴが
「他国のことだ。俺は関与しない。俺はこの令嬢を助けたかっただけだ。令嬢を送り届けたら失礼する」
とファビアを横抱きにして颯爽と去って行ったのはカッコいい以外の何物でもない。
一方ファビアのディエゴが現れたときの安心しきった表情は…
「完全に勝ち目などなかったからな」
「どうされました?殿下。もう忘れたとおっしゃっていたでしょう?」
「ああ。そうだったね」
「今日も山のように釣り書がきてますよ。いい加減にこれも放っておくわけには」
また結婚の打診か…
しばらくは考えたくないのだが…
「放っておけばいいさ。僕はこれから国を立て直さなきゃならないんだよ。結婚なんてしてられない」
「ですが…」
「それより、南部で起きてる暴動の方が問題だろう」
「そうでした」
「あそこの領主の伯爵だが、確か…」
「お待ちください。それはですね……」
ガーディアンの次期国王は今日も忙しく国の立て直しに奔走している。
ファビアに笑われないために。
ファビアが導いてくれたガーディアンの未来への道。
自分の中でずっと燻り続けていた純血信仰への反発心とこのままでは国がダメになるという恐怖心。
だから改革をと思いながらも、それでも戸惑い続けていた自分の背中を押してくれた。
あんなに勇敢に悪に立ち向かって。
今度自分が国王となってミルアー皇后となったファビアに会った時にガーディアンが誇れるように…
「リカルド。視察に行くぞ」
「はい。殿下」
僕は頑張ってみせる。
ファビア。
ありがとう。
~episode 1 fin~
『episode 1〜婚約編〜』
完結です。
次回から
『episode 2〜結婚編〜』
です。
まだまだ続きます。
10月ごろから更新していきますので、それまで少々お待ちくださいませ。




