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舞踏会当日

2日ぶりです。

更新ゆっくりですみません。


クライマックスです!

今一番参加したくないもの。それがこの国の舞踏会だ。

がしかし、参加しないわけにはいかない。

ミルアーの代表として呼ばれているからだ。


くそっ。

絶対見たくもない2人を見なければならないのか。


しかもこれから先ずっとだ。

なんてこった。


これも生を2度得たことによる天からの罰みたいなもんなのか…。


いやいやながら大広間の中に足を踏み入れたはずだった。


が…。


いない?

ファビアが。


レイナルド王太子の横にはだれもいない。


なぜだ?


会場を見回して探せば、ファビアの父公爵と夫人は貴族たちと談笑中だ。


なぜだ?


あらかたの挨拶が終わってから、またダンスにさりげなく誘われたので、何回か踊ったあと、ジーニアを見つけて、問いただした。


「ファビア嬢は?どうかしたのか?今日は来ていないようだが…?」


すると、ジーニアの顔が少し苦々しいものになった。


「体調がまだすぐれないのですよ。どうやらあのあと少し外に出るのがおっくうになったようでしてね」


体調だと?

あのときの怪我は完治していたぞ。

精神的なものか?

しかしアイツがそんなやわな神経なわけ…。


「もしかしたら殿下の顔を見れば元気になるやもしれません。このあとでも会ってやってくれませんかね。かなりふさぎ込んでましてね」


なんだと?

婚約発表の場にも出席できないくらい体調が悪いって言うのか?


ディエゴは居ても立っても居られなくて、その場を早々に辞した。


舞踏会だからか道は空いていたため、一等地にある公爵邸にはすぐに到着した。


久しぶりに正面から中に入り、侍女が止めるのもきかず、ずかずかとファビアの部屋に入っていくディエゴ。


「緊急事態だ。四の五の言ってられない」


「ファビア!」


ディエゴが侍女の制止を無視して、ファビアの部屋の重い扉を開けた。


「ディエゴ殿下?」


キョトンとして、くつろいだ部屋着でこちらを向いたファビアにホッとする。

なんだ元気そうじゃないか。


「体調を崩していると聞いたが、婚約発表の場にも来ないとはどうしたのだ?」


「婚約発表?」


ファビアの目が見開かれ大きくなる。


そしてむっとしたのか、ほっぺをぷくりとふくらませた。


「そんな虚偽情報どこから仕入れたのです?」


「は?」


別に情報を仕入れたわけじゃないが、そうじゃないのか?この間の感じじゃ。


「わたし、婚約なんてしてません」


「は?なぜだ?王太子に好きだと言われたと言っていたではないか?」


「言われましたが、お断りいたしました」


「は?なぜだ?あんなに好きだったんだろう?それをなぜ断る?」


つい大声になり、扉の前にいる侍女が慌てているが知るもんか。


「そんなの決まってるじゃないですかっ!」


「どう決まってるんだ!」


「好きな人がいるからよ」


え?

一瞬固まった。


す、好きな人?


「心の奥に好きな方を想ったままレイナルド殿下と結婚するのは嫌だったんです。だからお断りしました」


「では、その好きな人のところに嫁ぐのか?」


そんな話知らないぞ。

こいつがいつ他の男と知り合った?


王太子以外とは接触してないはずだと報告を受けている。


「嫁げません」


「なぜだ?」


「その方はわたしのことを好きではありませんもの。だからわたしの片思いなんです」


「なんだと?」


片思い?

誰だ。その幸せなやつは。


「誰だそれは」


「え?」


「誰に片思いしてる?」


こんなぶしつけなことを令嬢に聞いていいわけないのはわかってる。けれど、ファビアの好きなヤツが誰なのかととても気になり、聞かずにはおれなかった。


「そ、そんなこと聞くんですか?」


突然ファビアが真っ赤になって横を向いた。


なんだ?言わないつもりか。こっそりひとりでそいつのこと想い続けて…。

またおまえは自分はどうなってもいいとかそんな考えを…。


「俺にも言えないのか?おまえと俺の仲だろう?」


「あなたよ」


ぼそりと小さな声がした。


「え?」


「もうっ!あなたが好きだって言ってるの。バカ皇太子!」


え?

ディエゴの思考が一瞬止まった。


何て言ったのかなかなか把握できない。


「ファ…ファビア?誰って言ったんだ?」


「レディに何度言わせるのよ!わたしが好きなのはディエゴ・ジョイス・フェルナンデス皇太子殿下で…」


ファビアが全部言い終わらないうちにディエゴはガバっとファビアを抱きしめた。


「キャッ…」


めずらしくファビアの女らしい驚きの声にディエゴはもう一度ぎゅっと抱きしめた。


「それは本当か?」


「ウソなわけないでしょう?」


「本当に、本当なのか?」


信じられなかった。

ファビアが自分を好きだなど…。


「どうして今まで…俺は…」


ファビアはディエゴに抱きしめられたことにびっくりし、そのあまりの力強さに、固まってしまって動けなくなっていた。


「俺は…俺も…いや、たぶんお前より先に…俺はお前を好きになっていたぞ」


「え?」


ディエゴがそう言って抱きしめていたファビアをすっと解放して、ファビアの瞳を見つめた。


「ディエゴ殿下?」


ファビアのエメラルド色の瞳はウルウルとあふれそうな水分が目尻に溜まり、宝石のように美しく輝いている。


「あー。そんな顔をするな」


「だって…うれしいんだもの」


そしてその涙はファビアの大きな瞳の中ではついに支えきれなくなって、すーっと頬を伝い落ちたので、ディエゴの長い指で涙をスッと拭く。

そのままここで唇を重ねたいところだが、侍女がいる。


レディに対して結婚前にそんなことをしたと言われたら、結婚することもままならなくなってしまう。


ディエゴはこそっとファビアの耳元につぶやいた。


「今日の夜もう一度来るから待ってろ」


「え?」


ファビアが目を見開き顔をあげたが、ディエゴは不敵に笑った。


「明日再度こちらに伺う。侍女殿」


ディエゴはファビアから身体を離し、ファビアをソファに座らせると侍女に向き直った。


「はいっ!」


「公爵が帰還したらその旨伝えてほしい。先ぶれはもう一度出すが、明日の午後に伺うと」


「かしこまりました。ディエゴ殿下」


侍女が深々と頭を下げ、ディエゴは公爵邸を後にした。


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