レイナルドとこんな話はしたことがありません
更新時間、20:00に変えてみることにしました。
いつも仲良くしていた4人の内、王都ガナディーに残ったのはマチルダだけだった。
彼女は父親が王家の薬師なのでいつもあまり領地には戻らない。
今回はファビアも残ったので、日中はほとんどマチルダとともに過ごした。
夜になると、週に1回はレイナルドが報告に来たので、今回の毒薬事件のこと以外にも色々と話をするようになった。
だから、レイナルドがカンディアナに留学したのは、文学が好きだったからだとか、(カンディアナは文豪がたくさん出ている文学の国なのだ)カンディアナは好きだが、食べ物だけは口に合わず苦労しただとか、母君が属国マサ王国の下等貴族の令嬢だったと言われているが、実際は踊り子だったこととかそんな話を聞いた。
前世ではこんな話を聞いたことはない。ファビアなどに話そうとも思わなかったにちがいない。
「わたしの母も平民でした」
「そうだね。それは聞いてるよ。僕たちは同じようなものだね。ガーディアンの貴族たちには受け入れられない身分なんだ」
「きっとそれを変えてくださるのは殿下だと信じていますわ」
「ファビア嬢」
「実際のところ、恐れながら国王陛下も、わたしの父も平民に対して見下すことはありませんわ。そういう貴族もいます。世界の他の国々では、今や平民たちが王宮で仕事をしている時代です。ガーディアンだけ置いて行かれているのですわ」
カンディアナに留学していたレイナルドはそれを感じていたに違いない。だから前世でもしきりに農民や平民を大事にしようとしていた。
「君はやはり他の令嬢とは違うね」
違わない。何も。
違ったのは、一度死んでからであってそれまでは他の令嬢と同じ考え方に凝り固まっていた。
「滅相もございません。わたしなど…」
「キミはどうしてそんなに自分を卑下するの?他人の事は決して見下さず、どんな人間も認めるのに。自分を低く見積りすぎな気がするよ」
「それは…」
そういう人間だからです。殿下。わたしはどうしようもない人間なのです。
「僕はキミみたいな令嬢は珍しいと思うし…とてもキミが魅力的に見える」
「……」
そんなこと言われるような人間じゃないのです。殿下。
ファビアは言葉を飲み込んだ。




