解毒剤があるようです
マチルダからの報告はおおむね、ディエゴから聞いたものと同じだった。
デーゼという植物の根から取ったものでカンディアナでしか取れないもの。遅効性の毒を有していて、知らないうちに体内に蓄積され、風邪のような症状から悪化して3年ほどで死に至る。カンディアナでしか知られていない禁忌の薬物。その効能は医師ですら他国では知る者は少ない。
「どうやら禁忌になってからは、カンディアナの王家がひた隠しにしていて、諸外国にはあまり知れ渡らなかったみたいですわ。カンディアナが昔その毒のせいで、滅びる寸前までいったとかで…。」
その毒をアルフォンソ王に飲ませてまさしくガーディアンも滅びたではないか…。
怖い毒だ…。
「風邪が悪化したのかも?と思って死にますからまさか毒とは誰も思わないため、とても危険ですからね。禁忌になるのも納得ですわ」
ミラージェス伯爵家を以てしてもここまでしか結局調べられないのか…。
やはりカンディアナに出向いて古代書物を読まない事にはわからないのかしら…。
古代カンディアナ語なんてわかるわけもなく、絶望に近いと考えていた時だった。
「そのデーゼですけれど、どうやら解毒剤があるようなのです」
「え?」
やっぱりミラージェス家!
キランとファビアの表情が輝いた。
まったく、こういうときファビア様はおそろしく美しく見えるわ。とマチルダはしみじみ見惚れながらも、がっかりするだろうなと少し気後れしつつ伝える。
「それもカンディアナ独特の植物のようで、それが…わからないんです」
父の伯爵は必死で古代カンディアナ語を解読しようとしていたが、今はまだ、植物の名前やどうすれば解毒剤になるのかまでは解明できていない。
「すみません。古代カンディアナ語は難しくて父も難航しているようです」
少しがっかりしたファビアの顔がまたキラキラと輝くさまを想像し、今度はキラキラのファビアになってもらわないとと父を急かそうとマチルダは改めて思ったのだった。
「ごめんなさい。お願いしますと伯爵にも伝えてね」
「ええ。絶対に解読しますから」




