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お茶会にて Part II

「ファビア様…」


じっとファビアを見つめる。

その瞳がやはりはかなげでファビアですら守ってあげたくなる。

前世では悪意を持ってしか見たことがなかったから知らなかったが、ドローディアはとてもかわいらしいと思った。


「ドローディア嬢はとてもかわいらしいですわね」


「え?」


思わず声に出てしまって、しまったと思い、口をふさいだが、ドローディアには屈辱的に感じたのかもしれない。バカにされたと思ったかもしれない。


真っ赤になったドローディアはその場でうつむき、耐えるようなしぐさを見せた。


ど、どうしよう。また悪女とか言われてしまうわ。


「ど、ドローディア嬢。そういう意味では…。わたくしほんとうにあなたがかわいらしくて…」


いや、これもおかしいか。

ファビアは実年齢より20歳以上長く生きているので、ついつい若い女性を見るとかわいいと思ってしまう。

おばさん目線で見てしまうのだ。


「ひ、ひどい…」


口に出せば出すほどひどくなるとはこのことだ。


「とにかくっ!わたしはあなたを嫌いではないし、それだけはわかってね」


ファビアはそれだけ言うとそそくさとその場を後にした。


ドローディアの取り巻きの令嬢たちがドローディアの周りに集まり、慰めながら、ファビアのほうをギロリ、睨んでいる。


うーん。もしかして失敗したかなぁ…。

苦い気持ちになっていたら、マチルダがやってきた。


「ファビア様。例のものですけれど、詳細がわかりましたわ。近々うちにおいでください。父も待っていますわ。どうやら…」


マチルダとファビアがこそこそ話していると、レイナルドがやってきた。


「ファビア嬢。ここにいたんだね」


レイナルドは笑顔満載で、その銀糸に輝くサラサラの髪とともに、笑顔からもキラキラと星屑がでているような気がしてしまう。


「殿下。陛下はお元気にされていますか?」


「そうだね。元気にされているよ」


なんでそんなことを聞くのかと言わんばかりの怪訝な表情に変わる。


「お変わりありませんか?」


「ああ。何か気になるの?」


レイナルドに言ってしまおうかと一瞬ファビアの頭の中をよぎったが、いや…と心の中で首を横に振る。


「いいえ。陛下には先日優しいお言葉をいただきましたので、お元気にされているかと思いまして。お元気でしたらよいのです」


「そう」


怪訝な表情だ。


レイナルドはマチルダにも声をかけてあたりさわりのない会話をしている。


そんな中ファビアは考えていた。

やはりレイナルドにも先日のことを共有したほうがいいのじゃないかと。


レイナルドは前世でも国王陛下との仲はよかった。

むしろ国王陛下は亡くなられるその時までレイナルドが王妃殿下にないがしろにされないかを心配されていたように思う。


だから、フロレンティーナ王女をご自分が亡くなる前に、王位継承権を放棄させ、ミルアー帝国の第六皇子に嫁がせたのだ。


レイナルドも最後までよき国王であろうとした。

妨害していたのは自分の方だ。


ひとまず昔の自分は置いておくとしても、レイナルドと陛下の良好な関係のことを思うと今回のこともレイナルドに共有するほうがいいんじゃ…?


そのうち、エリナとマリアも合流し、レイナルドは2人にも気さくに声をかけている。


そうだ。こういう人だった。

純血主義者に染まっていたのは自分のほうで、レイナルドはいつも万人に平等であろうとしていたではないか。

秋の収穫祭には農民たちに感謝の意を伝えるために毎年主要な農地を行脚すると言い出したのはレイナルドだったということを思い出した。

わたしがバカじゃないのと却下したのだったわ。

前世の記憶は忘れてしまっていて少し曖昧な面もあるのだわ…。


ファビアはレイナルドにこの間の取引のことを言おうと決めた。


話が途切れた時点を見計らってファビアはレイナルドに言った。


「殿下。近々少しお時間を頂戴できませんか?」


「え?」


レイナルドが不思議そうにファビアを見ている。


「お話したいことがあります」


じっとファビアを見ていたがレイナルドがうなずいた。


「わかった。王宮でいいかい?それとも別の場所がいいの?」


「別の…できれば、人のいないところがよろしいかと。あと、できることなら、わたくしと会うことは内密に願いますわ」


「わかった。では3日後の夜に公爵邸にお忍びで訪ねるとしよう」


「ありがとうございます」

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