お茶会にて
「ファビア嬢!」
レイナルドの笑顔がまぶしい。
今でもその笑顔にはドキッとしてしまう。
「来てくれるなんて思わなかったよ」
「王国の太陽、王太子殿下にご挨拶申し上げます」
深々と完璧なカーテシー。
今日は王太子主催の王宮の庭園でのお茶会だ。
どうやらカンディアナの留学を終えて戻られたら本格的にお妃選びが始まったらしい。
定期的にお茶会を開かれることになったようだ。
今日はその1回目。
ガーディアンの適齢期の男女が一斉に呼ばれているらしい。
女性だけではないので、一種の婚活パーティーみたいになっているらしく、みんなウキウキと浮足立っているのがわかる。
今までのファビアなら体調不良などと言って適当にごまかし、絶対に参加していなかっただろうが、今回国王陛下が狙われているとわかり、調査をしたいのもあって足を運んだ。
ファビアはここでもエリナ、マリア、マチルダとともに過ごしている。
今までのガーディアンであればおそらく彼女たち新興貴族は呼ばれもしなかっただろうが、今回新興貴族令息令嬢たちも呼ばれているところを見ると、レイナルドは開けた考えの持ち主らしい。
前世では果たしてどうだったかと少し考えてみるも、自分がレイナルドに夢中だったため、そんなことまで考えたこともなかった。
自分がいかに周りが見えず、レイナルド一直線だったのかがわかる。
本当にバカだったのだ。
4人で楽しく会場入りし、隅っこのほうで話していたら、今日の主催者のレイナルドが会場入りした。
すっ…と一瞬会場が静まり返る。
「みんな来てくれてありがとう。今日は楽しんでほしい」
レイナルドが挨拶すると、みんなが一斉にレイナルドのほうへ集まり始める。
ファビアは公爵家というこの中では格上の令嬢のため、令息たちの挨拶が終わると一番最初に挨拶に向かわなければならない。
「またあとで」
あとで?
ファビアのあとにも令嬢たちの挨拶は続くので、ファビアはすぐにレイナルドの御前を辞したが、去る寸前にこそっとささやかれた。
どういう意味かしら?
それにしてもどうすればデーゼのことを調べられるかしら。
そもそも陛下がお元気かどうかなのよね…。
考えながら、エリナたちの挨拶が終わるのを待っていると、突然目の前に女性が立ちはだかった。
「ごきげんよう。ファビア嬢」
そのふわふわのピンクの髪と空色の瞳が物語に出てくる妖精のようにも見える、かわいらしい容姿の侯爵令嬢、ドローディア・キシュタリアだ。
前世ではレイナルドにずっと片思いしていたファビアのライバルだった。
最期までドローディアとファビアどちらが王太子妃になるかでもめて、結局ロンズディール公爵家の力に物言わせ、父のジーニアがキシュタリア侯爵を陥れ、ファビアが王太子妃を勝ち取ったのだ。
ファビアが王妃になってからキシュタリア家は裕福な領地をとりあげられ、貧弱な土地だけになってそのまま政界からいつの間にか姿を消していた。
今もレイナルド殿下を好きなのかしら…?
「ごきげんよう。ドローディア嬢」
そのかわいらしい妖精のような顔の下では何を考えているのかよくわからない。
それは前世でも同じだった。
色も白くはかなげで守ってあげたくなる男性は多いだろう。
今世ではもうレイナルド殿下の妃をめぐって争うこともない。
もしかしたらドローディアが王妃になるのかしら…?
キシュタリア家なら純血論者でもないし、ガーディアンにとってもいいような気がした。




