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レイナルド殿下と…ダンス…

「悪かったね。嫌な思いをしただろう?」


陛下の元をレイナルドと共に辞すると廊下でレイナルドがつぶやいた。


「え?」


「妹が…」


「ああ。気になりませんわ」


ああいう人たちはこちらがどう出ても結局蔑む。

身分だけでしか人間を評価できない人たち。

人間の本質を見ようとしない。

そんな人に評価してもらいたいとは思わない。


いずれにしてもわたしは前世みたいにここに嫁いでくることはないのだもの。


「キミは…心が広いんだね」


レイナルドがファビアを見て微笑む。


「ほんとに…すごい人だ」


「は?」


「僕はなんていうか…王妃殿下も…妹も…小さい頃から苦手で…毎日の晩餐も…苦痛で…」


「殿下?」


こんな話…知らないわ。

殿下がこんなに苦しんでいただなんて…

前世では全然…


で、当たり前かと自嘲する。

何も交流などなかったものね。わたしの一方的な片思いだったし。殿下は嫌がってわたしに近づこうとされなかったもの。


「キミも母上が…と色々言う人がいるだろう?なのにキミは強いなと…キミはすごいよ」


「強くなど…ただ…認めていただこうなどと…無駄なことはしないだけですわ」


「無駄なこと…ああそうだね」


「ええ。生まれは誰にも変えられませんもの。より自分らしく生きること…それしかありませんもの」


そうだ。

そうなのだと自分で言いながらファビアは気づいた。


前世では無理をして純血貴族になりたくてなれなくてあんなことになったのだ。

今世は無理をせず自分を受け入れていけばいい。自然にそう思えているからしたいようにしているのかもしれない。

自分のしたいこと…

好きなこと…

それは体を動かすことで…

ディエゴに教わった剣術もその一つで…


「殿下。わたくし…乗馬と剣術が好きなのです」


「え?」


「おかしいでしょう?こんな女はガーディアンではじゃじゃ馬と言うのですって。だからこんなじゃじゃ馬はお誘いしてくださらなくていいのですわ。殿下にはもっとふさわしい方が…」


「剣術…」


ほうら…殿下が引いてるわ。

これで次からはエスコートするなんて思われなくなるわ。


「そうか…それはすごい…」


ぼそぼそとつぶやいているレイナルドにファビアは気づいていない。


会場の扉がいつの間にか目の前にある。

さあ入場だ。

レイナルドと共に会場入りするファビアは他の貴族とは別の王族用の入り口から入るのだ。


はぁーーっ…



ため息は胸の奥で大きく吐きながら実際は笑顔で入場した。


「まあ…美しい方」


「ロンズディール公爵令嬢様だわ」


賞賛の声が聞こえる一方…


『あの方、公女様のふりしてらっしゃるけど実のところは貴族ですらないらしいわよ』


『何処の馬の骨かもわからない娘が偉そうに…』


『陛下も何を考えてらっしゃるのか…あんな女狐を殿下のパートナーにお選びになるなど…』


あまりにいつもと同じで心の中で苦笑してしまう。


「では踊ろうか。ファビア嬢」


レイナルドがリードし、最初の曲が始まった。


無難なダンス。

前世と同じだわ。

教科書にあるかの如く基本に則った美しい所作の…

レイナルド殿下の銀糸の髪が王宮の煌びやかなシャンデリアの光にキラキラと輝いている様はまるで…


そうだわ。

物語の中の王子様。


わたしは前世で、この舞踏会で殿下に初めて出会い、恋をした。


今世でもレイナルドは王子様で…

ファビアは恋を…してしまうのだろうか。


考え事をしているうちにダンスがフィナーレを迎える。

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