5.渡さない。*ライアン視点
*主人この幼馴染のライアン視点です
マルティス公爵家の茶会に招待された。ユリが行かない茶会など行っても何も良いことなどないが、さすがに公爵家の茶会を理由なく断るのは無理だろう。早めに帰ろうと思って俺は茶会に参加した。
するとそこにはいないはずのユリがいた。アンダーソン家と、マルティス公爵家は未だに交友関係が悪化しているままだったはずだ。俺は驚いた。周りの子息令嬢も驚いているようだった。何か理由があるのかもしれないが、ユリがいる茶会ならば楽しめそうだと思った。俺はなんだか少し嬉しくなって、ユリに声をかける。
「おい、ユリ! ここは公爵家の茶会だぞ? その、大丈夫か?」
嬉しくなっているのは隠し、ユリを心配しているように見せる。まぁ実際に心配しているのだが。するとユリは俺がいるから安心だと言ってくれた。どうしてユリはいつもこう不意打ちなのだろうか。ユリの性格上本心でそう言っているというのが分かるからこそ余計に照れる。俺も勇気を振り絞って素直になろうと思って
「俺がずっとユリを守る。」
なんて言ったけど、肝心のユリはどこにもいなかった。俺は少し悲しくなりつつ、ユリを探す。ユリの容姿はそこいらの令嬢よりもかわいいから、一人にしておくと危険だ。変な虫がつきかねない。しかし、どこを探してもユリは見当たらなかった。令嬢たちも誰かを探しているようだった。令嬢たちの声に耳を傾けると、探していたのはこの茶会の主催者。マルティス公爵家の長男だった。俺は思った。普段は公爵家の茶会には来ないし、公爵家も遠慮して誘わないはずのユリが今日来て、尚且つマルティス公爵家の長男とともに姿が見当たらない。
「公爵家がユリに目を付けたのか? いや、公爵家というよりはあいつが、か。」
ユリに目を付けたのはセンスがいい。しかし、ユリは俺のだ。ユリは俺と結ばれるべきだ。ユリと出会ってから7年。ユリへの気持ちは増す一方だった。幸いにも、ユリとマルティス公爵家とが結ばれることは無いだろう。ユリの大叔母上のことがあるからだ。ユリも公爵家と関わり合いになりたくないようだったし。だが、用心は必要だろう。ユリは鈍感だからもっと気持ちを伝えなくては。そう思ってユリ探しに再び足を向ける。
漸く戻ってきたユリは、どこか疲れているようだった。俺は取りあえず理由をつけて、ユリを送ることにする。ユリと共に馬車がある方向へ向かうと、どこからか殺気のような視線をかんじた。振り返り、マルティス公爵家長男の様子を伺うと、如何にも不機嫌そうに俺達、いや俺の事を睨んでいた。ユリも寒気を感じたようだが、公爵家長男の視線のせいだとは思わなかったようだ。俺は睨み返して、ユリをエスコートする。
自然とユリをエスコートして馬車に乗せ、俺もユリの隣に、わざとユリに近いところへと座る。ユリは本当に疲れていたようで、数分後には寝てしまった。ユリの頭を起こさないように俺の肩へと持ってくる。ユリの寝顔は本当に天使のようだ。
「誰よりも愛しているよ。ユリ。」
俺はユリの頭をなでながらそう呟く。寝ていてきっとこの声は届いていないだろうが。ユリは誰にも絶対に渡さない。
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