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聖女ではなく奴隷  作者: 雨花
城下の聖女
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アラン・フラゴメーニ

アランは代々騎士の家系のフラゴメーニ家の長男として生まれた。


 父は若い頃は騎士団に籍を置いていたらしいが、アランが物心つく頃には子爵家の当主としての仕事をしている姿しか見たことがなかったので、父が元騎士だったということに関してはピンとこなかった。

母は裕福な伯爵家の生まれだったこともあり、ほんわかとして可愛らしい女性だった。そしてアランを大層かわいがってくれた。


 ある日、そんな母が実はアランには姉が居たという話をした。

だが、アランはその姉の姿を生まれてこのかた見たことがない。どこにいるのか、と無邪気に尋ねたアランに、母は悲しそうな顔で空の上に居ると言った。

 その時には詳しく話を聞かなかったが、後々姉は黒煙病という病で亡くなったのだと知ることになる。

母は優しかったが、アランが外に出ることを許してくれなかったのは、姉のことがあったからなのだと理解するようになる。


 フラゴメーニ家に次男が誕生したのは、アランが7歳の頃だった。

 アランはその時には父が、そして祖父が、そのまた曾祖父が歩んできたように、騎士への道を志していた。

 弟のエドは早産で、生まれた時から体が小さく弱かったので、母はアランが赤子だった時よりも大事に家の中にエドを仕舞いこもうとしていた。

 その時には、何故母がここまで過保護なのかアランも理解していたが、時折自分は姉とは違い体も頑丈だから自由にさせて欲しいという反抗心が芽生えるときがあったのだが、自分を心から心配している母を前にすると何も言えなかった。


 だからといって大人しく家の中で過ごすことも出来ず、騎士だった父に指導してもらい、剣を奮うようになっていった。

過保護な母は反対したが、父がうまく説き伏せてくれた。


 騎士学校へと入ってからは母も流石に反対することは無く、諦めたようだった。

代わりというわけではないのかもしれないが、エドは絶対に家から出さない様子だった。

 外界から断絶した家の中、エドは暇を持て余している様子で、たまに帰って来るアランの騎士学校での土産話をとても楽しみにしていた。

アランもまた、そうやって慕ってくれる弟のことが可愛かった。



 騎士学校を卒業し、本格的に騎士として働きだすようになると自分はこのまま騎士として働き、体の弱い弟に家のことを任せればいいと思うようになっていった。

フラゴメーニの家を継ぐのは別に自分なくても良いと思い至ったのだ。

 本来であれば家を継ぐことができない次男は、自分で身を立てるために婿入りしたり、騎士になって生計を立てるものだが、体の弱い弟にはそれらができるかわからない。

それならフラゴメーニ家を弟が継ぐという形をとり、それを補佐しながら自分が騎士を続けるのが最良な道に思えた。

 弟のエドが家に残ることを後ろめたく思わないでいい道が最良だと思ったのだ。


 折を見て自分の考えを両親に話そうと思っていたところで、思いがけない不幸がアランとエドに降りかかった。

両親が揃って亡くなったのだ。

 馬車での事故だった。招かれた晩餐の帰り、ぬかるみに足をとられた馬車が崖から落ちたのだと予想される。実際のところがわからず、憶測しかできないのは父と母と共に御者も亡くなり、事故の生存者が居ないからだ。

 アランは事故現場を実際に目にしたが、物取りにしては父も母もきれいな状態で見つかり、荒らされた形跡もなかった。ただ、馬車は大破と言って損傷ないほどにひどい状態だった。

落ちたと思われる崖と、実際に発見された場所の距離はずいぶん遠く、途中途中の木は折れていた。それがクッションとなって衝撃を和らげてくれたのかと言えば、現場を見る限りそうでもなかったようだ。

 事故の起こった日は天気がずいぶん荒れていたので、事故として結論付けられた。

 そんな天気の中、招かれた屋敷には滞在させてもらえなかったのかと沸いた怒りは、その家人の証言によって一瞬で消えた。

 その日はエドが熱を出して寝込んでいたので、心配した母がどうしても帰ると無理を押したらしかった。

母らしいと言えば母らしいが、それが原因で死んでしまっては元も子もない。

 誰かを責めることも出来ず、やりきれない気持ちと悲しみで胸がいっぱいになった。


 事故の詳細に関してはエドには話さなかったし、耳に入らないようにしていたが、聡いエドはすぐに気が付き以前よりも寝込みがちになってしまった。

 事故がおきたことは誰かのせいではない、運が悪かったのだと一度だけ伝えたが、力ない笑みが返って来るだけだった。

それ以来事故の話には触れないようにし、今まで通りに振舞うようにした。


 両親が亡くなり、二人だけの家族となると、よりエドを失くすことが怖くなった。

騎士としての仕事をこなし、遅番でなければエドが待つ生家へと帰る生活を繰り返す日々。

 普段通りにしていたのがよかったのか、エドも少しずつ以前の様子に戻り、このまま何事もなく暮らしていける、そう思っていたときだった。


 エドが黒煙病に罹った。

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