01
一日がまた始まろうとしている。
そのことがこんなにも憂鬱なのは学生の試験日以来かもしれない…いや、それ以上かもしれない。
「早く起きてくださいな! 今日も一日忙しいですよ!」
言うや否やがばっと布団を引っ剥がされてしまう。こうなっては布団の中でごろごろしていることも出来ない、と怠い体を無理やり起き上がらせた。
目に入ったのは忙しそうに動き回るセフィの姿だ。朝もまだ早いのに私と違ってすっかり頭は目覚めているようだ。
用意された朝食に横目をやりつつ、ベッドからたらたら抜け出て備え付けの洗面台へと向かう。顔を洗えば幾分すっきりするが慢性的な気怠さがなくなることはない。
朝から食べるには些か量が多いが、それでも昼はほとんど食べれないし、夜に至っては一切口に出来ないことも多い。おかげで減量には成功したが、自分でも健康的とは言えない痩せ方なのはわかっているので、出切るだけ朝食は多めにとろうとしている。
バターがたっぷり塗られテラテラと光るパンを一口かじり、フルーツジュースをグラスに注ぐ。自分で用意することを考えれば相当な手間暇かかる朝食は、さながら高級ホテルで出されるようなそれだ。丁寧に焼かれたオムレツには気が利くことにチーズまで入っている。
数ヶ月前までは朝食は冷蔵庫の中のモノを適当に食べていたのが嘘みたいに優雅だが、この後のことを考えれば喜んでもいられない。
朝はあまり食欲が湧かないものの、死活問題になるのでいつも通り無理やりお皿の上にきれいに並べられたものを詰め込む。
「美味しそうなもの食べてますねー」
ニコニコ笑いながら現れた男に思わず眉間に皺が寄ってしまう。
「こわいなぁ、聖女様は朝は不機嫌ですね」
「今日もハードスケジュールだろうと思うとそうなっちゃうんです」
ベーコンにフォークを突きさしながら返す。いつも通り笑みを浮かべる目の前の男は宰相補佐としてこの国の中枢にかかわる身分を持っているからなのか、もとよりそういう性質があったからなのか一見すると優しそうな柔和な笑みをいつでも浮かべているが、実際にはその内を読み取ることができない――もとい、読ませない――掴みづらい人物だということがわかってきた。
そうしてみると嘘くさい笑みに見えてしょうがない。
「ご苦労様です」
フォークに刺さったベーコンを口に運んで咀嚼している間にも話を続けてくる。
「聖女様のおかげでずいぶんの数の人が助かってますよ」
にこにこと笑っている男に視線を向け、頭を軽く下げる。
人数を数えたことはないけれど、この世界に連れてこられてからやっていることと言えばそれだけなのだからきっとたくさんの人を助けられたのだと思う。
――それにしても一体この人は何しに来たのだろう。
疑問は顔に出ていたのかもしれない。こちらの視線に何かを思い出したように「あっ」と声を上げている。
「そうだった。レイノルフ様が明日、朝食を一緒にどうかと。そのときに話を聞くそうです」
昼は疲れてぼんやりしている。夜は夜でそれどころではないので、こちらとしても朝というのは都合が良い。
「わかりました」




