異なる戦場
長きの歴史を持ち、数百年に及んで東の大陸を支配する王国『アリーリア』。
先の魔王復活戦争──『暗雲の時代』では、数々の武勇を得ていたこの国も、今ではその勢力は弱まり、世界でも4番目の統治力の国に下っていた。
しかしながら、未だにその力は健在であり、かつての絆からか国にはドワーフやエルフなど多くの人種が暮らしている多民族国家へとなっていた。
そんな国内の外れ、俗に言うスラム街の中心に建てられた大きな建物。
貧相な街並みに反して、綺麗な白色の壁に高々と外壁に備え付けられた王家の旗。正面入り口には二人の警備兵士まで立たせる施設があった。
そんな異様な場所へと足を進める者が1人。
「あれって………」
「あいつ、また来たのかよ」
施設の周りに集る連中が色々な支線を投げ掛ける中、その者は施設へと足を踏み入れた。
革のズボンに白色のシャツという軽装に、腰には大層な剣を携えた妙な男。
年は三十路手前なのだろうか、顔の作りは端正なのだが、手入れのされない髭が正確な年齢を惑わせている。
男はこれでもかというしたり顔で室内に入った。
木製の床板の上には目を見張る深紅の布が敷き詰められ、至る所に値をはる品々が装飾品として置かれている。
前方には白色の壁に数ヵ所の四方30~40センチ程の穴が空いている。
その中には美しい女性が腰を下ろし、ここを訪れた者たちの対応に終われていた。
男が入ったと同時に中心の穴から顔を出した女性と目が合った。
「──あら、これは……またいらしたのですね」
「おうよ。ここが俺の戦場だ。今日は僕の女神になってくれるんだろうね?」
やけにかっこつけて言い放つ男。初見ならば馬鹿にしたくなるような言い種である。
しかし女性は慣れているのか、小さく笑みを浮かべるだけだった。
「さぁ、こちらへ。受付をお願いします」
「はぁ、毎回思うことだがそろそろ顔パスできねぇの?」
「それはできませんよ。規則ですから」
「はいはい。名前と契約書を書けばいいんだろー」
スラスラと女性の差し出した紙に名前を記入する男。
その字は見た目とは裏腹に整い、読みやすい。
「はい、確かに。それではアリーリア王国所有カジノへようそこっ、ウル様」
「今日は勝つっ!」
男こと──ウルに向けられた受付嬢の視線は哀れみに満ちているのことを彼は知らない。




