55話.最上最悪、最強の魔王。
……知ってる天井だ。
もう何度もお世話になっている、そうここは病院。
僧堂院のやつをぶっ倒して気を失ったんだ、俺は随分疲れていたから。
長くここにいる必要もない。さっさと病室なんて出てしまおう。
「あ、伊勢崎さんまた勝手に歩いてるんですか!! 今度こそ脱走させませんからね!」
「邪魔できるもんならしてみろバーカバーカ!!」
僧堂院の寺院に行ってみたがすっかり全焼という感じ。
パトカーとかいっぱい停まってる。お父さんと女の人二人は大丈夫なんだろうか。心配だ。
だが、これでハッキリしたこと。
校長カイムはリバース・ワールドに流れるエネルギーを研究している。
そして俺の父さんもまた、そのエネルギーを研究している。
どういうわけか今、校長カイムは『伊勢崎復讐計画』を実行している。
暴力的で残虐な行為も躊躇わない校長カイムとその臣下、斑穢牙。
逃げ隠れている俺の父さん。
こうして整理してみると、見えてくる。
深く醜い闇……そいつは恐らく、父さんと校長カイムに関わることだ。
父さんの話が聞きたい。リバース・ワールドに行きたい。
……とはいえ、お母さんを心配させるわけにもいかない。
今日はお家に帰ろう、そうしよう。
「拓也! 今日は遅かったのね」
「ちょっと友達と遊んでてさ」
「連絡の一つくらいちょうだい? お母さんすっごく心配したんだから!」
「実は連絡できないくらい大変なことがあってさ」
「そ、そうなの? 大丈夫だったの?」
「うん」
とても大変だった。
だがお母さんは何も追求してこない。これで納得してくれてるなら俺としては嬉しいことなんだが、お母さんの心のなかに不安が募らないか少し心配だ。
よし、決めた。明日先輩にお願いしよう。俺を父さんのもとに連れて行って欲しいって。
それで父さんの言葉をもらって、それを伝えてお母さんのことを安心させたいのもある。
お父さん、俺の知らないところ一体何をしてきたんだろう……。
いい朝だ。さて、伊賀の野郎はもう来てるのかな?
ああ、バッチリ来てる。
「拓也! おはよう!」
「伊勢崎、お前学校行くの?」
伊賀の野郎、ご飯をもにゅもにゅしながら聞いてきやがる。
「当たり前だろ、むしろ行かない理由がどこにある!」
「あの爺さんアタりキツいじゃねぇか。正直俺あんま行きたくねぇよ」
「大丈夫だ、俺に任せろ」
全て受けきってやるぜそれくらい。
朝支度終えて、学校行く。
教室入ったらいつものイジメが始まる――
あれ? 誰もいない。
皆どうしたんだ?
「っかしいな。こんな事ってあるか?」
「何か特別な行事とかあったっけ」
「伊勢崎の方がそこは詳しいんじゃねぇの?」
「俺は何も」
この時間なら皆いるはずなんだがな。
「伊勢崎、お前学校にゲーム持ってきてんのか?」
「え?」
あ、俺の机の上に何かある。
これ、ゲームソフトのパッケージか。
マオウクエスト。
随分と可愛らしい女の子が仁王立ちして紫のオーラを放ってる。
これが、魔王なの?
「ちょっと待て、これ最条じゃねぇか?」
「え……あ、本当だ」
しなびたわかめみてぇなツインテールに、意地悪そうに若干釣り上がった黄色い目。
1年3組26番・最条魔王に間違いねぇ。
このゲームのパッケージに写ってんのは間違いなく最条本人。
あんまり覚えてねぇが俺がイジメっ子共をボッコボコにしまくってたらいつの間にかイジメをやめていた奴だ。
「マオウクエスト、ってやっぱり最条だよな……」
マオウって名前も、恐らくは最条の名前から来ている。
これ、何か危ない気がする……!
「おい待て伊賀ッ! 迂闊にソイツに触るんじゃない!」
「え?――あ、あっ、うわぁっ!!」
伊賀の野郎がパッケージを開けた……!
中から、強い光がっ!!
なんだこれは、まぶ、し――
「う、うぅ……あれ? 伊賀? おい、伊賀!?」
何だ、何もない、真っ暗だ……。
俺は一体どうなってしまったんだ!?
何かが、浮いている。
一冊の茶色い、大きな本……。
これは一体、なんだ?
気付けば俺は手に取っていた、その本を。
これを見なければ始まらない気がして。
読もう。
どうやら、この本によると――
『普通の高校生・最条魔王。何の代わり映えもしない普通の高校生活を送っているが、彼女には魔王になるべくしてなる運命が待ち構えていたのである。その名の通り正しく、最条魔王は最上の魔王となり世界を支配した。
集え! 勇者達よ! この世界は依然として魔王のものであるのか、あるいは誰が彼女を討ち果たすのか! 物語の結末は――』
この先は、途切れている。
「えっ!? うわぁっ!!」
突然身体が落下した!
落ちる、落ちる、無限に落ちる!!
一体、一体どうなっちまうっていうんだ!?
「ぐべっ!!」
ここは……草原?
遠くには城が見える! 恐竜みたいな鳥の影が見える!
これは、まさか俺は……! 入ってしまったというのか、ゲームの世界に!!
――あの光景。
俺達が教室に入った時の光景、誰もいなかった教室の謎!
まさかその答えが、これなのか!?
ゲームの中に入るなんて、めちゃくちゃ楽しそうだな!
楽しそうかも、しれねぇが。だが、俺のこの身体は恐らく本物!
何の力か分からねぇが、ゲームの世界に引き込まれてしまっているっつーことは……危険なにおいがする。
ゲームとなれば当然簡単に死ぬ可能性がある。もしここで死んだら俺はどうなる?
そしてもう一つ、このゲームから抜け出す方法。先程の本によればこのゲームの最後に待ち構えているのは最条魔王! おそらくゲームをクリアすればこのゲームから抜け出すことは可能。だが、それっていうのは、魔王を倒すっつーのはつまり最終目的はラスボス撃破ってわけだ。
その道のりは、長いのか、短いのか!!
モチロンそれ以外の方法で出られる可能性があるならば俺はそいつを探ってみたい!
だがわざわざこんなマネをしてきたんだ。ゲームの世界に閉じ込めるなんていうマネをするなら、解放される方法などゲームをクリアする以外に有り得ない!!
そうと分かればウジウジしてられない。
さっさとこのゲームをクリアして脱出しよう!
きっと伊賀の野郎もここに来ている。もし合流できるなら、なるべく速く合流したいな。
……さて、ゲームの世界に来たからには、こういう事ができたりもすんのかな?
「ステータス・オープン!!」
なーんて、できるわけもねぇか。
――うおッ、出てきやがった!!
俺の目の前に、半透明の真っ黒いウィンドウが出てきやがった!!
――――――――――――――――――
伊勢崎 拓也
LV 1
HP 10
MP 0
こうげき力 3
ぼうぎょ力 1
まほうの力 0
まぼうの力 1
すばやい力 2
――――――――――――――――――
え、ざっこ。
なんだこのステータス。
俺、こんなんでやってくのか?
どうすればいいんだこんなの。
やべぇ、すぐ死にそう!!
エンカウントとか、絶対したくねぇ!
――スライムッ!!
スライムがいる!!
フィールドでスライムが飛び跳ねている!!
コイツならやれそうか!?
いや、まずい! なんたってHPが10だぞ!?
草原には敵の姿がちらほらと見える……シンボルエンカウントっぽいのが唯一の救いか!!
10しかねぇと、流石に戦うのも危うい!
町だ! とりあえず町を見つけねぇと!
うわっ、スライムがこっちに近付いてきやがった!
ふざけんじゃねぇ! お前と接触して、スライムが5体とか出てきたその日には俺の人生即終了だ!
逃げろ!! スライム、来んじゃねぇ!! やめろ!!
「俺のそばに近寄るなァーーーーーー!!!!!」
終わりたくない、こんな呆気なく、情けなく!
――ヒッ!! かげからスライムがぁ!!
[スライム が 現れた!]
あ、一匹……。
よ、良かったぁ。
同じ草原にいるように見えるが、遠くに見えた城も何も見えない。
この一匹のスライムと俺以外、見渡す限り草むらで何もない。
エンカウントするとこうなるってわけか。さて、とりあえずやってみるか。
「オラッ!!」
スライムに 2 のダメージ!
スライムの攻撃!
伊勢崎拓也に 3 のダメージ!
スライムに 2 のダメージ!
スライムの攻撃!
伊勢崎拓也に 3 のダメージ!
スライムに 2 のダメージ!
スライムの攻撃!
伊勢崎拓也に 3 のダメージ!
「はっ!?」
嘘だろ、いつの間に俺は攻撃されていた!?
連撃をぶちかましさっさとぶっ倒してやろうって思っていたのに……!
クソッ、ターン制が強制ってわけなのかこれは!!
まずい、もうHPが1だ!
これはシャレにならねぇ、死ぬ! 死ぬって本当に!
俺がスライムに与えたダメージは6……。
もしもスライムのHPが7~8くらいなら、倒せるのか。
俺の攻撃力は死ぬほど弱いんだ。この一手に……賭けよう。
さぁ、これで決めてやるぜ。スライム――!!
「オオオオォォォオオォォォオオオォ!!!!」
伊勢崎拓也は戦闘から逃走した!
「ふぅ~……」
飛び出してきたスライムはもういない。
景色も元の場所に戻った。
さて、俺のHPはのこり1、俺がスライムに与えられるダメージは2。
なんつーゲームだこれは。こんなのクリアできるやついんのか?
とにかく絶対にエンカウントしてはいけない!
その瞬間、即死だ!!
必死こいて逃げながら町に来たはいいものの、さてどうしようか。
「すみません、体力を回復したいのですが」
「ようこそ! ここはモッショの町だよ!」
あー、そういう、感じね。
まぁ、なんとなくは分かってたよ。
「あの、宿屋とかってありますかね」
「ようこそ! ここは――」
もういいもういい。
マジでゲームの中ってわけだ。
自力で何かいろいろ探してみよっかな。
他人の家のツボとかタンスを漁っていると大分お金が溜まってきた。
アイテムとか色々出てきたし、この辺りの設定は潤沢なんだな。
もうちょっとバランス考えてくれよ最条魔王の野郎、まぁ最条がどう関わっているのかは分かってないが。
「旅人さんいらっしゃい! 一泊10Gだよ!」
払わないでベッドに横たわっても何もないんだよな。
何もしてねぇのに10Gむしられるのも気に入らねぇが仕方ねぇか……。
――ウオッ!?
突然真っ暗になったぞ!!
明るくなった。
「おはようございます! あなたの旅路に平穏があらんことを!」
……宿屋って、こんな仕組みだったのか?
体力回復してるし。
全部漁り終えたしこんな町はさっさと出てしまおう。
拾った金で買える武器と防具は買っておいたが、雀の涙だ。
攻撃力が3から5に、防御は1から2に。
先程よりはマシになった。アイテムも色々もらったし、状況はまぁまぁ良くなった。
盗んだ地図によると、北にずっといけば魔王の城はあるらしい。そこを目指そう。
お、スライムいるじゃん!
いっちょ試し切りしてみますか!
――スライムの体力は13~16って辺りなのか。
残り体力2。
もらった経験値は1。
……あの時賭けに出なくてよかった。もし死んでいたらどうなってたことだろう。
俺はこのクソゲーをどう攻略したらいいんだろうか?
洞窟。
お宝はありそうだが、狭い場所は嫌だ。
洞窟だけ歩数エンカウントとかだったらひとたまりもないし、シンボルエンカウントにしても逃げるだけのスペースが確保できるだろうか。
慎重に進もう。
「そこの、そこの旅のお方!」
なんだ? 話しかけられたぞ。
そういうイベントか?
脇道の先に少女がいる。
話しかけてみよう。
「あ」
「この泉の水、とても美味しいですよ。あなたも一口いかがですか?」
選択肢が出てきた!
はいといいえ、こんなのはいに決まってんだろ!
体力が全回復した!
おお、こりゃすげぇ!!
こんなのあんのかよ、なんだよそれ!
最初に言ってくれよーーーー!!
「ステータス・オープン」
――――――――――――――――――
伊勢崎 拓也
LV 15
HP 65
MP 0
こうげき力 58
ぼうぎょ力 45
まほうの力 4
まぼうの力 16
すばやい力 50
――――――――――――――――――
大分上がってきたな。
これならどんどんレベルが上がる。
強い武器を手に入れて、強い防具を手に入れて、お金もがっぽがぽだ。
そろそろ中盤くらいかな?
荒野の町には涼しい風が吹いている。
物語が進むにつれて、どんどん寂しい場所になっていく。
風情があっていいんだけどな。
宿屋で休んだらさっさと狩りにいきますか。
[ストロングブル が 現れた!]
凶暴な牛みてぇなモンスター。
こいつの攻撃力ははっきり言って異常だ。頭がおかしいくらいにな。
だが、経験値はうまい。
「オラァ!!」
ストロングブルに 48 のダメージ!
ストロングブルの攻撃!
伊勢崎拓也に 40 のダメージ!
このゲームの製作者はプレイヤーにクリアさせる気があるのだろうか。
まぁ、そこらへん全部まとめて最条の野郎に聞いてやろう。
「おい!」
「この泉の水、とても美味しいですよ。あなたも一口いかがですか?」
「はい!」
体力が全回復した!
「オラ死ねぇ!」
ストロングブルに 48 のダメージ!
ストロングブルの攻撃!
伊勢崎拓也に 39 のダメージ!
「おい!」
「この泉の水、とても美味しいですよ。あなたも一口いかがですか?」
「はい!」
体力が全回復した!
「くたばれぇ!!」
ストロングブルに 48 のダメージ!
ストロングブルを倒した!
355 の経験値を手に入れた!
50G を手に入れた!
「っしゃあ! 楽勝!!」
そう、俺は泉の少女を誘拐した。
こうすれば少女を一緒に戦闘に引きずり込めるし、話しかければいつでも会話イベントが発生する。
正攻法で無いことは分かっているが、あんなクソゲーをやらされたらこんな事もしたくなるってもの。
「イセザキィーーー!!! イセザキィーーーーーーーーーー!!!」
なんだ!?
夕焼け空から声がするぞ!
ッッ!!
最条だ!
雲からでっかい最条の上半身が生えている!
相変わらずしなびたわかめみてぇなツインテールしてる。
「最条! 俺はテメェに聞きたいことがあるんだ!」
「いやこっちが聞きてぇ事あって来たんだよ! ふざけんなよ伊勢崎! おい!」
「答えろ最条! 何が目的で俺をゲームの中にブチ込んだ!」
「それは……我はずっと魔王になりたいと思っていたからだ! いいだろ、折角こんな事できるんだからこんな事したって!」
我って……。
「とにかくお前ソイツを返せ! お前だけじゃねぇんだぞこのゲーム参加してんの! やけに皆洞窟で死んでいくなぁと思ったらお前何勝手にNPC連れて回ってんだよ!!」
「え、このゲーム死んでも大丈夫なのか!?」
「バカか! 死んだら終わりのゲームなんか今日び流行らんわ!! 我はしっかりゲームバランスを考えて作ってやってるんだぞ、感謝しろよ!」
皆っつーのは……吸い込まれてきた皆の事か。
全然クラスメイトに会ってないんだけど本当にいるのか?
「とにかくお前ソイツを戻せ! じゃないと我がお前をぶっ殺しに行くぞ!!」
「戻すって、戻らなきゃいけないの?」
「そうだ! 戻すまでお前の事ずっと見張ってるからな!」
やれやれ、しょうがねぇか……。
とはいえ最条のヤツを呼び出せたっていうのはデカいな。
どうやらこのゲーム、死んでも大丈夫だったみたいだ。だがそれはそれだがよ、他のクラスメイトの野郎どもも良く死のうって気になったよな。何があんのか分かんねぇのに。
「ていうか俺の最初のステータス低すぎねぇか? 本当にどうしようもなかったからこんな事してんだぞ」
「そりゃそうだ! お前をここで永遠にいたぶってやろうと思ってたからな! だっつーのにお前何なんだよそれ! ズルだろ! チートだろチート!」
最条の野郎が見張ってくれるっつーことはできるだけここで情報を引き出せるってこと。
今の内に聞けること全部聞いておこうか。
「で、このゲームをクリアしたら俺は脱出できんだよな?」
「あっったりまえだ!! 誰かが我を倒したらゲームクリアだぞ!! まぁ、無理だと思うがな!!」
「じゃ、さっさとお前をぶっ倒して脱出してやるよ」
「威勢はいいな、勝てるもんなら勝ってみろ! ハハハハ!」
で、元の場所に戻したぞ。
「これでいいだろ?」
「ああ、ご苦労! お前正攻法で来いよ! 迷惑かけんなよ皆によ! じゃあな!」
最条の野郎の姿が消えた。
なんで俺がわざわざ足運ばねぇといけないのか分かんねぇが、最条の野郎の気を立たせるのもそれはそれで嫌だし。あの少女がいなくても困るわけではねぇしな。
[サイクロプス が 現れた!]
お、強そうなモンスターだな。
ぱっぱと狩ってレベルをあげよう。
「ドラァ!!」
サイクロプスに 63 のダメージ!
サイクロプスの攻撃!
伊勢崎拓也に 60 のダメージ!
本当に敵の攻撃が痛い。
これは敵が強いんじゃなくてただ単に俺のステータスがわざと低く設定されているような気がしてきた。
「おい!」
「旅人さんいらっしゃい! 一泊10Gだよ!」
「はい!」
真っ暗になって、明るくなって!
よっしゃ全回復した!
――あれ? サイクロプスはどこいった?
景色がドリャプリャトポットプュ湿原に戻ったぞ!
「おい伊勢崎、ふざけんなよ」
「何だよ最条……」
また出た。
雲からでっかい上半身のぞかせて。
「もっとダメだよ。皆宿屋で休みながらレベル上げてんのに何やってんだよ」
「言われたとおり少女は戻したんだからいいだろ!」
「ふざけてんじゃねぇよ!! レベル上げられなくて皆困ってるだろーが!!」
「やれやれ、仕方ねぇ……」
戻しに行くか、めんどくせぇけど。
「ほらよ、これでいいか?」
「ああ、次やったら我が直々にブチ殺すからな」
はぁー、戻るのも面倒くさいんだぜ。
お前は空から見てるだけだからいいんだろうけどこっちの身にもなってくれよ。
[メカニカルドラゴン が 現れた!]
「オラァ!!」
メカニカルドラゴンに 135 のダメージ!
メカニカルドラゴンの攻撃!
伊勢崎拓也に 120 のダメージ!
「おい!」
「伊勢崎拓也か……ここはアジトの休憩所だぜ。休んでいくかい?」
「はい!」
体力が全回復した!
――あれ? メカニカルドラゴンはどこいった?
景色がベールブルバーデュル・ルル機工世界に戻ったぞ。
「おい、いい加減にしろよ伊勢崎」
「え?」
「いやいい加減にしろって、ふざけんなよ」
「……でも、こいつ持ってかれたって別に困んねぇだろ? いてもいなくてもいいようなNPCのくせに全回復してくれるんだし」
「確かにソイツはいてもいなくてもいいが、そういう事じゃないんだよ伊勢崎。我は普通にゲーム遊んでほしいの、分かる?」
「つってもステータス低いからなぁ、俺……」
「――分かった! 分かったよ!! 我がステータス元の状態に戻す、皆と一緒にしてやるから!! もうNPCを連れ回すのやめろ!!」
「何だと!? そんな事できるなら早めにやってくれよ! 頼むよ!」
「あぁ分かったから! ステータス皆と一緒にしてやっから、もうやめろよ?」
「それなら俺も文句はねぇ」
!!
何かステータスが変わった気がしたぞ!
よし、見てみよう!
「ステータス・オープン!」
どれどれ――
――――――――――――――――――
伊勢崎 拓也
LV 1
HP 1
MP 0
こうげき力 0
ぼうぎょ力 0
まほうの力 0
まぼうの力 0
すばやい力 0
――――――――――――――――――
「え?」
「かかったな伊勢崎!!」
[魔王 が 現れた!]
最条、魔王……こいつ、謀ったな!!
「どういう事だこれはヨォ!! 皆と一緒にするどころか全部下がってるじゃねぇーーーか!!!」
「当たり前だろ! 我は二度我慢してやったのにおんなじことを何度も何度も繰り返しやがって、我慢の限界じゃ!!」
あの雲の上の魔王にどうやって攻撃を届かせる!?
クソッ、逃げるなんてしても絶対逃げられそうにない!
「お、おい!」
「伊勢崎拓也か……ここはアジトの休憩所だぜ。休んでいくかい?」
「はい!」
体力が全回復した!
――!!!
1だ!! 1のまんまだ!!
「くたばれチーター野郎!!」
魔王は アイ・レーザー を放った!
伊勢崎拓也に 9999 のダメージ!
伊勢崎拓也は死んだ!
「あ、あ、身体が……」
動か、ねぇ……。
「――ハッ!!」
こ、ここは?
ここはっ!?
……ああ、最初の町だ! モッショの町だ!
墓場があったんでお供え物を盗んだ覚えはあるが、まさかここがリスポーン地点だったなんて!
「ステータス・オープン……」
ああ、変わらねぇ……。
やっぱりステータスはこのまんまなのか……。
「――あれ、伊勢崎くん?」
「えっ?」
あ、明治、さん……。




