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28話.きっと全世界が刮目した、スペーススケールバトルクラス。

 レディースランチは女生徒しか頼めないとか何とか言われてしまった。

 あんなに美味しい物を食べさせてくれないなんて不公平だ、ということで……

 伊賀に頼んでみるとすんなり二人分通った。

 伊賀、最高だよお前。


「何から何まで本当にありがとうな」

「まあ、いいから食おうぜ」


 女として扱われたのが気に入らないのかあんまり乗り気じゃない。

 つっても一口箸が入れば伊賀のやつはガツガツいく。

 うめーうめー言いながらガツガツとサラダだうどんだをバクバクバクバク。

 汁が飛んでる。真っ白い丸テーブルがどんどん汁まみれになってく。

 ――おまけに全然足りてなさそうだな、物欲しそうに見られたって困るぞ。


「今日は特別だ、助けてもらったんだしな」


 もう一食分買ってこいよ、お釣りはしっかり貰ってこいよ。

 伊賀のやつ、ぱっと笑顔になってばっと千円札をさらってさっさと食堂のおばちゃんの方に向かいやがった。

 俺はゆっくりいただくとするか、そう急いだって意味はない。

 明治さんは今日も俺のために弁当残すのかな、いや俺のために作ってきてるって言ってるから元から残すつもりなのか?

 というか俺のために作るって何だろう、考えてみるとそれって相当照れくさい事なんじゃないか。


「あっりがっとな~」


 ご機嫌な様子、大分浮ついて戻ってきた伊賀。

 ……あれ、お釣りは?

 あ、こいつ全部使いやがったのか!! 成る程それで900円の超どデカ盛りカツ丼に100円をプラスしてカツを更に増量したっていうのか。

 レディースランチに上乗せして一番ボリュームでっかいのを食らうつもりかよ。


「お前、それ本当に一人で食うつもりなのか?」

「当然だろ! うっまそーだろこれ!!」


 目が輝いてる、犬みたいだなこいつ。

 でっかい丼ぶりの乗ったおぼんを乱雑に置き、席に着くや否や目にも留まらぬスピードで箸を掴みかっくらい始める。

 すごい、みるみる内に減っていく。こいつもしかしたら本当に一人で全部食っちまうつもりなのか!? 俺にもちょっと分けてくれよ!

 一瞬すら止まる時間は無かった。

 箸が止まったその瞬間、そこには空っぽの丼ぶりがあった。

 随分と腹が膨れたご様子、伊賀の奴は満足ほっこり状態で背もたれに思っきし身体を預けている。

 ……これはこれで、悪くないかもしれないな。


「ごちそうさまでした」


 俺もようやくレディースランチを完食。

 伊賀のヤツは無言のまま和やかに動かない、まさかあまりの美味さに昇天しちまったか。


「伊賀、大丈夫か?」

「あー、幸せだ」


 完璧に向こうに行っちまってるってわけだ。

 仕方ない、このまま伊賀の食器も一緒に片してやるとするか。

 戻ってきても同じ姿勢のまま椅子にもたれかかっている。こうなりゃ引っ張って連れて帰るしかないな。


 ――食堂を出る瞬間、思いもよらぬ光景を横目にしてしまった。

 上半身半裸、血塗れの筋肉男が丼ぶりをいくつも平らげている様だ。

 あえてそれをはっきりとは確認しなかった。いや、確認するのが怖かったのかもしれない。

 まさかあいつが今ここで飯を食っているとは思わないだろう。

 それにあの丼ぶりの量、超どデカ盛りカツ丼を何杯も食らいきってるってわけだ。何という強靭なエナジー、正しく化物だ。

 乱暴に椅子を蹴る音に次いで、声高な宣言が響く。


「おばちゃん、もう一杯!」


 間違いなかった、その声は正しく織田九兵衛のものだった。

 伊賀のやつは満足しきってるようで全くあいつの声が耳に届いていない。俺もこれ以上奴と関わる気はない。

 あれほどのエナジー差を見せつけられてしまったのだ、瀕死寸前だったはずの男があれ程の量のカツ丼を食っている。

 下手をすれば相当の強敵になるかもしれない、気を引き締めなければ。


 今日の部活は何事もなく、いつものように明治さんの隣に座って時間が過ぎて行く。


「……どうしたの? 具合悪い?」

「え? あ、いやぁ。そういうんじゃないよ」

「んー、そっか。もし辛いことがあったらさ、遠慮なく言っていーよ」


 和やかな笑顔を見せる明治さん。しかし、素直ではなさそうな表情だ。

 このままイジメられ続けるって事は明治さんにこういう心配をさせ続けてしまうって事と同じなんだよな。

 できるだけ根絶を急がないと、明治さんにこれ以上心配をかけさせたくない。

 本当は普通の学校生活を送って、普通の日常を過ごしたいんだから。

 ……しかしやはり離れない、食堂でカツ丼を大量に貪っていた織田の姿が。

 あいつ、あの状態で更に何杯も食べるつもりの勢いだったぞ。明日が心配だ、きっちりと自衛の用意をしておかねばな。


 いよいよ学校だ。

 間違いなく織田の奴はしれっと登校してくるはずだ。そして登校早々俺をイジメに参ってくる。

 きっと昨日の鬱憤を晴らすために相当やばい手を仕掛けてくるはずだ、下手すりゃ俺が死にかけない程の暴力を振るわれるかもしれん。

 だからこそ仕込む、この服の中に黒いボディプロテクターを。そして頭には漆黒の超合金ヘルメット搭載。

 見てくれは多少不格好かもしれんが背に腹は代えられない、これは俺と奴の決死の勝負になりそうだからな。


「おう伊勢崎、おはよ――」


 我が物顔で居着く伊賀、どうやら俺の様相にギョッとしちまったようだ。


「あら拓也、どうしちゃったのそれ?」

「構わないでお母さん」


 お母さんはおかしそうに笑っている。こうやっておかしな格好をしてお母さんを笑わせるのはいつものことだ。あまり疑問には思ってくれないのが幸いだな。


「伊賀、もしもの事があったら頼むぞ」

「え? あっ、おう」


 相当動揺している様子。まっ、我が家に馴染んでないお前からしたらちょっとは困惑するかもしれないが、家はそういう家庭なんだぜ。

 いつもが如く……俺達は歩む、死への登校路。化物の待ち構えている巣窟へと。

 登校早々何があろうと、俺はこの完全装備。絶対に負けるつもりはない、かかってこいよ織田(おた)九兵衛(きゅうべえ)


 意を決して教室の扉を開ける。


「はい伊勢崎登校遅いー! 罰ゲームなこっちこいヤァ!」


 しゃしゃり出すイジメっ子達、超合金装備の俺を教室の真ん中に連れ出し早速イジメを開始する。


「千本キーック! オラァッ――」


 無駄。

 最強のボディプロテクターが全ての衝撃を吸収、お前らの攻撃などまるで歯が立たない。


「いってぇぇぇぇーーーー!!」


 全てのダメージがお前に跳ね返ってしまったようだな。どうだ、今日の俺は一味違う。

 見ていてくれてるかい? 明治さん……


 あ、いないわ。そうだよね、明治さん登校するのめっちゃ遅いもんね。

 あー、今日ばっかりは居てほしかった、見てほしかった。


 罪な男の姿、とくとご覧になってほしかったぜ。こんなイジメなど意にも介さず、暴力の後に残るのは瀕死のオラオライジメっ子共と悠然と立ち尽くすこの俺の勇姿。なんてカッコいいんだ!

 これなら例えあの筋肉馬鹿であろうと俺に一切手出しはできない。


 ――ガラガラと教室の扉を滑らせる声が響く。

 ぬっとやってきたのは筋肉の塊……ではなく、肥満形態の織田九兵衛。

 全く驚きだぜ、ただの脂肪だと思っていたあの身体の要素全ての奥側にあんなおぞましい筋肉を背負い込んでるんだからな。

 しかしあいつ、意外にも冷静だ。イジメっ子共が手出し出来ていない様をただただ不敵に笑いながら眺めている。

 ……って待てよオイオイ、信じられねぇ。あの野郎全くの無傷だ。昨日あれ程痛めつけられた男がまさかの無傷だぜ。なんて男だ。この超人的な回復力、化物そのものだぜ。あの筋肉は伊達じゃねぇ、正真正銘の本物だってことを一晩の完全治癒で証明しちまいやがった。

 俺達とは格の違う、本物の化物だってことをな。


「くっそいってえぇぇ!!」


 イジメっ子共が地面で呻くのを横目に、俺は自分の席へと……だめだ、足が震える。

 あいつに背中を晒す行為、それは無防備な首を晒すのと同じ事なんじゃないのか?

 しかし俺は席につかなきゃならねぇ。大丈夫だ、超合金ヘルメットを信じろ。

 こいつは最強だ。いくら化物の織田であろうとも、こいつには敵わねぇはず。

 おずおずと座る――奴は何も、仕掛けてこない。


「クククククク……」


 ただただ不敵に笑っているだけだ。何だ、何を考えている?

 結局、明治さんが学校にやってくる時間になってしまった。間中後ろの化物は何も仕掛けてこない。

 朝のホームルーム開始、境太郎先生がやってくる。当然何も起こらない。


「――伊勢崎くん」

「はい?」

「ヘルメットを脱ぎなさい」

「!?」

「それと、身体の中にも何か着込んでいるでしょう。不格好ですよ、お脱ぎなさい」


 な、なんてことだ。

 こいつそういう算段だったか、先生に見られればこんな奇妙な格好は注意されてしまう。

 自分から危険に飛び込むつもりはないと……この男、意外に狡猾!


「一時間目は体育なので、皆さん体育着に着替えるように」


 ――しまったァ! そうだ、今日は体育だ!

 何を着込んでいようと意味がない! 体操着に着替えなきゃいけないんだから!

 その中に何かを仕込んでしまえば、当然バレちまう……いや、最後の抵抗だけはさせてもらうぜ!


 袖は短い、丈も短い。

 制服から一転、皆が白と黒の体操着を着て赤いトラックのグラウンドに集まる。

 明治さん、小さくて可愛いなぁ――っていけねぇ、俺が注意すべき野郎は、あいつだ。

 体操着がギッチギチ、今にも弾け飛びそうだ。肉を食い込ませながらキツイ体操着を着るアイツの名は、織田(おた)

 俺は知ってるんだぜ、あの全てがガッチガチの筋肉であることをな。


「今日の体育は、バトルです。皆さんには一対一になって戦ってもらいます」


 な、なんてことだ。

 今日も走ったりするのかと思ったがまさか、こんな種目がこの学校にあっただなんて。

 一対一って、正気か!?

 サッカーとかしようぜ先生!


「まずは第一戦目……伊勢崎くんバーサス、織田(おた)くん!!」


 ――しまったァ! まさか織田の野郎、これを読んで今朝は俺に仕掛けなかったというのか!

 無防備な俺を一方的にリンチするためだったということか……この男、意外に狡猾!!


 赤いトラック……その真ん中、円形に植え付けられた緑色の芝生の上で俺達は互いに見合って立ち尽くす。

 赤いトラックの上では皆が俺達の戦いに注目している。明治さんだって、例外じゃない。

 ここは格好良いとこ見せてやらないとな。


「フフフ、無駄なんだよ伊勢崎くん。今朝の芝居は楽しませてもらったぞう?」


 ぎこちない喋り方だ。しかしそれは単なる印象操作、この喋りでこいつをナメていると奥底に隠れた筋肉で一発KO。爪を隠し、股をおっぴろげて挑発する鷹ってわけだ。

 不用意に飛び込んではいけないってこった。じゃなきゃ一寸後、こちらが無惨な姿に成り果てちまう。


「レディー……ファイッ!」


 境太郎先生の激しい掛け声、上に向けて撃たれた空砲がバトルの開始を知らせた。


「じゃあまずは一発いくぞー! ぐるぐるぱぁーんち!」


 舐め腐った態度でぐるぐると腕を回し始める織田。それが演技だって事、俺は分かっている。

 だからこそ先に仕掛けさせてもらう、お前の本性を暴いてからが本番だからなっ!


「どおりゃっ!」


 腕をぐるぐるさせる織田など無視、顔面に一発ドぎつい蹴りを入れてやる。

 ――織田、微動だにせず。


「……全く、これは授業であってガチの殺り合いじゃないんだよ?」


 織田の額、浮かぶ青筋。

 いや、こいつ自信は望んでいたはずだ、その機を。奴が狙うは、正当性。


「君が本気でやるっていうなら、しょうがないよね?」


 全力を出さざるを得ないという正当な理由、それを奴は欲していたってわけだ。

 しかしそんなものは上等、お前の本気を見せてみろ。


「ハンンンッ!!!」


 瞬時に飛び散る体操着の残骸、奴が一つ力みだせばこんなものは弾けちまう。

 枷から外れた筋肉は開放感に隆々としている。


 飛び散った上下の体操着に悲鳴を上げる女子陣。

 しかし女を悲しませるような真似はしないようだ。

 堂々とした白いふんどしがゆらゆらと風にはためいている、準備万端ってこったな。


 腕を組み、こちらへと指をさす織田。


「さあ、始めるぞお?」

「――上等」


 凄まじい筋肉から瞬時に解き放った腹パン。

 まともに食らってしまった俺だが、吹っ飛んだ衝撃に身を任せ後ずさる。

 抵抗のため地に付けた靴がガリガリと芝生を一直線に削っていく。

 しかしこんな物は簡単に受け止められる。なんたってこの体操着の下には衝撃吸収ジェルをガッチガチに塗り込んだからな。

 とはいえ、それでもおよそ5メートルといったところか……。やはりやるじゃねぇか。

 こっちからも行かせてもらうぜ。


 吹っ飛ばしたことに満足している様子、織田との距離を一瞬で詰め繰り出す拳。

 筋肉に強ばる顔面を真正面から吹き飛ばす。

 めり込む拳、割れるメガネ。

 不意打ちに吹っ飛ぶ織田の身体。しかし空中で一回転した織田はそのままこちらへと飛び蹴りを解き放つ。

 そんな一直線な攻撃、余裕でかわせるさ――

 ま、前が見えない!?


業塔(ごうとぅ)経流(へる)!!」


 ――後頭部より流れ込む強い衝撃。

 感覚で分かる、恐らく俺は前にふっとばされてるってこと。

 頭から突っ込んだ地面、ギャリギャリと鳴る硬い地面。

 成る程トラックまで吹き飛ばされちまったってわけだ。

 背中から着地し、同時に肘が擦り傷を負う。

 俺の視界を隠しているものはなんだ……一瞬で目隠しとして利用しちまったわけか、やはり狡猾この男。

 俺の顔に巻かれていたのはやつのふんどしだった!!


 咄嗟に起き上がり振り向く、芝生の方には赤いふんどしをまとい悠然と立ち尽くす織田がいた。


「ククク、どうやらまだ息があったようだね」


 成る程、いくつもふんどしをそこに隠しているってわけか。

 油断できねぇ、こいつ。


「伊勢崎くん、リタイアしますか?」

「いいやまだまだ!!」


 境太郎先生の投げかけをきっぱり断る。

 負けるわけにはいかねぇ、これを機に今までの仕返しをしなきゃ気が済まねぇからな。


「これはお前が俺にくれた勝ち筋ってやつだ、織田」


 ふんどしを握りしめつつ、戦いの場へと戻る。

 腕を組む筋肉の塊・織田は笑っていた。


「ハンッ、僕と同じ手を使うつもりかい?」

「ああそうさっ!」


 愚直に突っ込む俺に対し、踏み込みを入れ拳を叩き込む織田。

 するりとその横をかわし、後頭部に回し蹴りを叩き込む――


「そんなことだろうと思ったさ――」

「甘いなッ、織田!」

「――!?」


 一瞬後、織田の身体がすってんころりと転倒した。

 これこそ俺の作戦。やつの踏み込んだ足元にふんどしを滑り込ませ、あえてそれを踏ませた。

 そしてそこには――俺の手によって衝撃吸収ジェルが塗り込まれている。潤滑性抜群ってことだ!

 俺はふんどしの片方を握っている、この片っぽを引っ張れば織田の巨体もバランスを崩しすってんつるりんってわけ。

 空中に放った回し蹴り、着地する場所は当然……織田の顔面さ――


「クククッ!」


 なっ、掴まれちまった!

 一瞬で掴まれちまった俺の足……


「これで君はもう終わりだね?」


 立ち上がる織田……俺の身体をぶんぶんとハンマー投げの要領でぶんまわし始める。

 目が回る、どうにかしようたって遠心力のせいで動くことすらままならない。


 ――その時、トラックから声がした。


「おい頑張れ伊勢崎ィィィィィ!! 織田なんかに負けんじゃねぇぞォォーーー!」

「そうだ伊勢崎ィ! 負けたら昼休みボコしてやるからなぁぁぁ!!」

「伊勢崎くーーん! 頑張れー! 負けるなー!!」

「おい愚民!! 貴様よりも下等なる生物に負けると申すかァァァ!! そんな事は決して余が許さぬぞオオオオオ!!」


 み、皆……!

 普通ならありえない光景だ、俺の闘志が皆に届いたってわけか……いや、織田に対し皆のヘイトが集まりすぎてるってわけか。


「グランド・ニュートリノ! スーパー・エクスティンクション・スロオオオオァァァァァァ!!!!」


 豪快なる宣言と共に吹っ飛ばされる俺の身体――

 空の彼方、その果てまで奴は俺を飛ばしにいっちまう。なんて投擲(とうてき)力、なんて筋肉だ!

 大気圏を越え宇宙にほっぽり出された。このままでは冗談でも何でもなく死んでしまう。

 ――しかし、俺の仕込んでおいた最大の布石がそこにはあった。


「――復讐させてもらうぜ」


 ……地球帰還ミッション開始! スイッチ、オン!

 ブシューーー!!


 再度大気圏突入!!

 炎を纏う隕石となって地球に舞い戻る俺達(・・)、目掛けるところはトラック中央、芝生の上の織田(おた)九兵衛(きゅうべえ)

 勝ち誇っていた織田の顔が一気に青ざめるのが余裕で目視できる。


「う、う、うわあああああああ!!!」


 素っ頓狂な悲鳴を上げて逃げ出す織田。無駄、こっちにはジェットパックの推進力がある!!

 どこまでも墜落までお前を追跡してやるぜ、織田九兵衛!


「死んで俺に詫びろオオオオオオ!!!!」


 ――刹那、激しい爆発と共に着陸!!

 叩き込んでやった最大の布石に、織田はまっ黒焦げの下敷きになってしまった。

 そう、こいつは高天原(たかまがはら)月花(げっか)。少し前にジェットパックをめり込ませ地球外まで追放したこいつが人工衛星となって宇宙を漂っていたのだ。

 こいつの纏っていたジェットパックの推進力のおかげで無事地球に帰還、こいつの全体重を全速力で織田にぶつけ、試合終了ってわけさ。


「ゲーーーイムセット! 勝者、伊勢崎くん!!」


 境太郎先生の激しい宣言。

 トラックより沸き起こる歓声、同時に鳴り出す授業終了を知らせるチャイム。

 体育のバトルはこの一戦しかできなかったみたいだが、授業も復讐もキッチリ済ませてやったぜ。


 織田九兵衛、お前は確かに強かった。

 その筋肉があれば今まで敵なしの調子付き放題だっただろうな。

 だがどうだいこの規格外の味は、これが伊勢崎拓也だ。

 イジメの報いを受け入れ、しっかりと復讐の味をその腹に叩き込んでおきな。


「……おかえり、高天原(たかまがはら)月花(げっか)

「た、ただいま……」


 やれやれ――それにしても生きててよかったよ、全く。

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