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賀陽宮様との御縁

生活にもなれた頃、日曜日には外出してもよいようになった。


初めての外出は、神宮外苑の近くに住んでいた植柘叔父の家を尋ねた。


叔父は居なかったが、叔母は喜んでくれ、うまい飯をご馳走になった。



きんきら第一装に剣をつけ、巻きゃはん無しの姿は、

私自身スターになったような気がして、気持ちよかった。



電車は混んでいなかったが、座らなかった。



駅で行き会った兵が敬礼をしてくれ、陸幼式にバシッと敬礼を返したら、

びっくりしたような顔をした。




別の日曜日、横須賀まで行き、川名叔母を尋ねた。

叔母も喜んでくれ、うまい飯を作ってくれた、


当時は飯が最高のもてなしだった。


この頃、叔父は出征したばかりだった。

もしかしたら、輸送船で戦死したかもしれない時期だった。



遠い外出だったので帰校の時間が心配だった。

遅ければ一週間謹慎だが、何とか間に合って帰ることができた。






そして六月、皇族の賀陽宮邦寿(かやのみやくになが)親王陸軍大尉が、

私達第一訓育班の生徒監として着任せられた。


父君は陸軍中将陸軍大学の校長である。


柴田少佐は三訓に回られた。



皇族の生徒監は幼年学校初めてだそうだ。



公私の区別をはっきりするよう、注意された。



着任式の時、外から来られて、式の壇上にお立ちになるまでは、

皇族として、校長でも頭を下げられたが、

壇上を校長と代わられると、校長の部下として命令される。



以後、私達第一訓育班は、殿下を教官兼親代わりとして、日常の教育を給わった。


皇族だからといって別に変わらず、普通の軍人だった。


だが、ちょっとお優しく、怒った顔は見た事がなかった。






ちょっと、ここだけの話は先に飛ぶ。

先に飛んで終戦後、私は諏訪へ戻って、諏訪中三年にしばらく通っていたが、

ある日、自宅へ私宛の電報が届いた。



「『○○ニチ、チノ、ライガクジ ヘ シコウ セヨ』カヤ」

とある。


母が父に連絡し、父が学校へ飛んで来た。


何とも訳の分からぬ電報であった。


「『○○日に、茅野の頼岳寺へ伺候せよ』賀陽」

と私は読んで行ってみたら、正解だった。



宮家は終戦後、茅野市の諏訪寄り国道沿いの山側にある

頼岳寺(寺の名は忘れたので、仮に頼岳寺とした。今でもあるだろうが確認していない)

に住まわれていた。



殿下の弟さんが二人居られ、寺の庭で、一緒に野球をしたりして遊び、

球探しをしたが、どうしても見つからず、結構楽しんで拝辞した。


菊の御紋章型の落雁をいただいて帰った。



その後賀陽様は一般人となられたが、私が早稲田大に通って二年くらいの間に、

二度、東京山手線内で偶然お会いし、大きな御名詞を頂いた、奇妙な御縁であった。




……ここで大きく飛び返る……





B29による警戒警報は、ほとんど毎日あり、一機~三機くらいで飛行するのを何回か目撃した。


昼間、敵機の周辺を、蚊が飛ぶ如くぐるぐる回る迎激戦斗機が、

突然白く光って見えなくなった。




敵に撃たれて飛散したのだ。



夜はサーチライトが、何本も空に放射され、ぐるぐると回る。

そのうち二、三本が交叉して、その交叉点に敵機の影が映し出され、

それを目がけて高射砲の弾が撃たれる。


見事命中して赤い火が放たれると、あちこちで拍手が起こる。

こんな経験もあった。



空襲警報も幾度かあった。


これが出ると防空壕へ入らなければならない。


幼年校では、入り口と並んだ土手に幾つもの防空壕が掘られていた。


長く、互いに連絡壕もあり、学校全体千人以上が入れた。


「父が学校へ飛んで来た」の「飛んで来た」や「飛んでいく」などは、南信の方言です。

「急いで来る、行く」の意です。


余談ですが、早稲田大学へは下駄で通っていたそうです。流石わが祖父w


そろそろ話は終盤へ

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