表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/9

東京陸軍幼年学校~入学式~


入学の日が近づくと、父は、校長、教頭、それに担任の荒木先生を自宅に呼び、


どこから仕入れたか酒を振舞って、感謝の意を表した。


当時は酒も入手が困難になっていた。



母親は遠い親戚の五味ミシン店に私を連れて行き、

米国産ウォルサムの腕時計を、祝としてせしめてきた。



相当高価なものだったろう。



私はこの腕時計をはめ、友人達に胴上げされて、父と一緒に上諏訪駅を出た。


入学式には父親も呼ばれていた。


浅川駅近くの旅館に泊まった。

一緒に泊まったもう一組、あとで同寝室になる静岡の鈴木君親子だった。

父親達は碁が好きで、朝方まで打っていた。


翌日は入学式。





私達の生徒監(担当教官、親代わり)になった柴田少佐が、

終戦後に、当時の日記を披露してくださったので、

この日記を直接読んで頂いた方が、

私が書くよりよっぽどうまく理解していただけると思う。



【柴田日記】 昭和二十年四月一日


(※カタカナ記載だったので、読みやすいように編集致します)


諸準備を点検し、本部前に木の香りも新しい建武台碑を右に控え、受付開始。


遅参加者あり 中々揃い終わらず、やっと班別を示し舎内に入し服装の着替え。


父兄は、映画見学、校内案内、二年生鈴木、校内生活の一日、行事、三年生年中行事の説明を行う。


校長以下の挨拶、柴田の説明、後各寝室に到り父兄は生徒と最期の面接。


各所に、喜びの声、驚きの声、御礼。


「頼みます」との声が入り混じる。


基の後食堂に案内、父兄共は会食、森口の小さき体にダブダブの服には、


衆人等しく吹き出す。


終わって剣道場に引卆、長谷川校長より


「西谷清以下360名、四月一日東京陸軍幼年学校に入校を命ず」

と示達せらる。


勅諭奉読後、道場前にて上級生との対面、挨拶交換あり。


次で一先ず休憩、服の合わぬ者の取替え後、雄健(おたけび)神社参拝。


入浴:始めての顔合わせに拘らず大騒ぎなれば、矢張り子供だなと驚かされる。


就寝:夜半空襲警報発令、寒き夜半に、西も東も分からぬ者が


服装のつけ方も分からぬままに退避する憐れさよ


これ亦戦時下の幼年学校生徒なる哉。


東の方に火の手揚るを見る。




大いなる国の苦難(うれひ)を晴らさむと


桜は咲きぬ建武の台に


新たなる希望に燃えて若人は


数多咲きけり桜の如く


(柴田日記より)



以上にて入学式は終わった。


後で聞けば、父は帰ってから母に


「軍隊とはあんなに暖かいものか、

俺はもう、死んでも良いと思った」


と感想を漏らしたそうだ。






さて、ここで幼年学校全体について俯瞮(ふかん)してみよう。



ロシアにカジェットという学校があり、このあたりが原点らしい。

幼い頃から教育して、将来の陸軍の幹部を養成しようとしたに違いない。


幼年学校を卒業して、士官学校にて、中学四、五年から来た同級生といっしょになるのだが、


後に陸軍の要所々々で頭角を顕すのは、幼年学校の卆業生だそうだ。



東条英機総理大臣もその一人である。


全国に六校(仙台、東京、名古屋、大阪、広島、熊本)あり、

合わせて1765名が入学した(後で発行された名簿による)



後に入学する陸軍士官学校生徒と共に「将校生徒」と呼ばれ、

その時の自分は兵の上位に付けられる。




    

   大将\

 / 中将 →歩兵連隊の基

   少将/

   大佐\

       =連隊長→3ヶ大隊と3中隊

   中佐/    (2500~3000名)

   少佐\

       =大隊長→4ヶ中隊と2小隊

校  大尉/\    (800~1000名)

      / =中隊長→4ヶ小隊と1弾薬小隊

   中尉/    (200~250名)

 \ 少尉\

       =小隊長→4ヶ分隊

   准尉/    (40~48名)


 

下― 曹長\

士     分隊長(10~12名)

官  軍曹/

 ― 伍長

 

      ←将校生徒の位置

 / 兵長

兵  上等兵

 \ 一等兵

   二等兵



陸軍軍人の階級の図が見づらくなってしまいましたね。


この当時祖父は、神童とも呼ばれていたと、後に自慢げに語っておりました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ