第一話
―無断盗用・改変・コピー等について国内外問わず固く禁じます。他の小説についても同様ですので御承知おき下さい。―
揺れるカーテンの傍には家族の笑い声がある。団らんと幸福。
当たり前の毎日と穏やかな日々。ちょっとした家族同士の衝突も日常の風景。
こんな日がこれからも続いていく…。
「雄太! 颯太! 早くしなさい!」
絵里はこども達を急かせた。幼稚園に送るのが日課だ。
「ママ! お兄ちゃんがぶつ〜」
「もうっ…雄太は…お兄ちゃんなんだから我慢しなさいよっ」
朝から言う事を聞かないこども達を叱りつけながら車に誘導する。男の子って本当に元気…絵里は毎日の事とはいえ、毎日のように感心してしまう。
「ちゃんとベルトしてね。雄太、颯ちゃん見てあげて」
バックミラーでこども達の様子を見ながら言った。
「おはようございまーす。よろしくお願いします」
こども達を幼稚園に送り届け、先生に預けるとホッとした。
今夜の夕飯は何にしようか…朝から献立を考えるのも絵里の日課だった。たまには少し遠回りして一人でのんびりしたいけど、そうも言ってられない…絵里はいつものように家に直行した。
「絵里さん、後で肥料買ってきてもらえないかしら?」
絵里は家に着くなり義母から買い物を頼まれた。
「肥料…?」
午前中から庭いじりをしている義母は
「ベゴニアに液体肥料を与えないと…」
「はい…じゃ、商品名、メモしておいてください。後で買ってきますから」
掃除機を片手に絵里が答えた。
間違えて買ってくると後が面倒だ…絵里は以前、義母から買い物を頼まれた時の事を思い出した。間違えると文句が聞けない…自分で買いに行ってくれればいいのだが、そうも言えなかった。
こども達を迎えに行った帰りに買い物を済ませるのが習慣になっていた絵里は、お昼までに家事を済ませようと、急いでリビングから掃除機をかけ始めた。
このカーテン、洗おうかしら…ふと見ると、白地の部分が黄ばんでいる。
リビングのカーテンをしげしげと見つめていた絵里はおもむろにカーテンを外し、フックを取り除くと洗濯機へ放り込んだ。
「これでよしっ、と…」
最近洗濯をしていなかったせいか埃臭く、鼻がむずむずした。
「よいしょっ…」
階段の上り下がりはかなりの重労働だ。重い掃除機を手にかけ声をかけながら二階まで掃除を終えると、洗い上がったリビングのカーテンを洗濯機から取り出した。再びフックを付けると、元のようにリビングの掃き出し窓に掛ける。こうすれば、自然に乾くからだ。洗い立てのカーテンは洗剤の香りがして気持ちがいい。
このカーテンも替えたいのに……絵里はカーテンを取り付けながら思った。
白とグリーンのグラデーションは爽やかで明るい感じがするし、華やかだ。が、大分年季が入っているのが気になった。絵里は、水分を含んだ揺れるカーテンを眺めていると、夫の顔が浮かんだ。
私は替えたいけど、彼がイヤがる…絵里はそう思いながら時計を見ると、既に昼になろうとしていた。一時過ぎにはこども達を迎えに行かねばならない。
絵里は慌てて義母と自分と二人分の昼食の準備に取りかかった。




